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帰還

「おーい!こっちだ!」



砂煙が晴れると、そこに二つ人影が見える。この声は・・シラス?!と、横にいるのはシエンか。二人が爆発させてくれたんだろう。



「勇、しっかり捕まりなさい!」



そう言った後、車体を揺らし、一気にハンドルを右に回すトキ。そうする事により、トラックは横を向き入り口を見事に塞いだ。



「無免許とは思えんな。」



「こう見えて、十万キロは走ってるからね。」



「いや、こっそりやる犯罪のレベル超えてるんだよな。なんで免許取ってないんだよ。」



「節約よ。」



「家庭の知恵みたいな感じで言われても困るんだが。良く今まで捕まらなかったな。」



罪の意識がなければ、疑われることもないのか。



「テクニックで負けなければ、捕まる事はないわ。」



バレたことがあっても、うまく逃げてたってことか。じゃあ納得のいくドライブテクニックだったわ。



「そんな事はどうでもいいの。勇、早くそっちから降りて。送迎のバスが来てるから、乗り込んで逃げるわよ。」



ここまでちゃんと準備してたってことか。・・やはりキレものだな。そう感心しつつ、トラックを降り、言われた通りバスに乗り込む。そうすることで、見事追っ手を撒くことができた。小さくなっていくサンペドロの城壁を見つめ、陰と陽の事を少し心配する。まぁ、あいつらなら大丈夫だとは思うけど。シユウと呼ばれてた、あの水色髪の転移者。次会う時までに対策を練っとかないとな。



「無事、脱出できたわね。皆、お疲れ様。」



トキがそう切り出し、一番後ろの席で一息つくムードとなる。敵のことはまた今度考えよう。



「お疲れ様です!勇さんだけ残られてたみたいですけど、大丈夫でした?」



「ああ。本当、酷い目にあった。」



不満ありげに、トキの方を見てそう言う。まじで、普通なら死んでるぞ。

 


「ごめんなさい。私は命令されただけなの。」



「誰に。」



「リスナーに。」



「本当かわからんライン出してくんな。」



そんなの配信者しか言わねーが、流石にこっちの世界にはいないだろ。



「嘘に決まってるじゃない。」



「だよな。いや、堂々と悪事告白しろってことでもないんだけども。」



「ごめんなさい。後で謝罪動画あげとくわ。」



ここでさっきの話に信憑性持たせてくんな。



「まぁいい。それより、トキは陰達がいたのは知ってたのか?」



「も、勿論よ。」



「え、たまたまだったのか?!」



だとしたら、マジでやられててもおかしく無かったぞ。



「冗談よ。それは、多分そうだと思ってたわ。」



「多分なんだな。まぁ、結果大丈夫だったから良いけども。」



終わったことをぐちぐち言うのもダサいしな。



「でも、今回は流石に申し訳ないと思ってるわ。お詫びと言ってはなんだけど、水でも飲む?」



そう言いながら、液体の入った瓶を取り出すトキ。ラベル剥がした跡があるんだが、まさか塩酸じゃないよな。ここにくる時にそれっぽいこと言っていたし。



「気持ちだけでいいかな。」



「なら僕が貰うよ!ちょうど喉が渇いてたんだ・・ゴフ!」



まじまじとトキの持ってる瓶を見て断ると、横からそれを手に取り、中身を飲み干したシラス。よほど喉が渇いてたんだろう。そして、そのまま地面に突っ伏した。やはり塩酸だったようだ。



「これのどこがお詫びなんだ?」



「これは冗談よ。お詫びとして、例のことシエンに言ってないから。」



「例のことってなんですか?」



グッと顔を近づけてくるシエン。



「あぁ、景品のことだよ。星の涙っていう・・。」



「シエンの事を異性として見てないからと言って、服を脱がした事よ。」



「おいお詫び!」



誤魔化そうとしたが、一瞬で真実を突きつけてきたトキ。お詫びどこいった。



「へぇ・・私のシャツがない理由って、そういう事だったんだ。今度、お詫びしてくれますよね?」



「勿論でございます。」



結局する側になってしまった。



「分かりました。では保留にしておきましょう。」



そう言いつつも、目の奥が全く笑ってないシエン。覚悟しておこう・・。



「それより勇、星の涙取り出してみてよ。」



「あぁ、それもそうだな。」



透明なケースの上部があっさりと開いたので、中から虹色に輝く涙の形をした宝石を取り出す。吸い込まれるような輝きだ。こりゃぁ、運があがりそうだ。



「これ、どうする?」



「一旦これに入れておくわ。この箱、中に入れたアイテムの効力を増幅させるの。」



そう言い、小型の片手で収まるような茶色い箱を取り出すトキ。



「へぇ、そんなのあるんだな。これ持って、宝くじでも買ってみたいな。」



「そうね。さて、これを受け取るのは、私か勇かになるわね。手に入れたのは勇の功績で、脱出できたのは私のおかげだし。」



「意外だ。問答無用で取られるのかと。」



交渉の余地すらないと思っていた。



「そんな酷いなことしないわ。ちゃんと勝負で決めましょう。」



あれ、酷いことはすでに今日ニ回はされてんだけど。やはり罪の意識ない?



「てか、勝負はダメだ。トキには勝てねーよ。」



「大丈夫。戦いとは、頭のいい方が勝つんじゃない。相手を理解したものが勝つのよ」



「だからそう言ってるんだ!」



俺の心まる読みしてくるだろーが。



「じゃあ、早飲みとかにしましょ。」



「塩酸は無理だぞ。」



「大丈夫。度数低めのお酒とかでするわ。」



ほぅ、それなら勝ち目はある。前飲んだ時は、すぐに酔いつぶれていたし、酒にはそんなに強くないように見える。こうして、舞台はとあるバーへとなった。

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