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初クエスト

「どうぞ、お気をつけて。」



俺らを目的地に降ろし、エンジン音を響かせながら遠ざかっていくバス。目的地であるゴビの砂漠には、一時間弱でついた。砂漠の風が肌を刺すように吹き荒れ、熱気が体にまとわりつく。周囲には一面の砂丘しか見当たらず、まるで命が尽きるのを待つような場所だ。



「・・暑いわ。」



身をじりじりと焦がす熱い日差しに、体力を奪われていく。黒のローブを着ているトキが一番辛そうだな。シエンは白いシャツに黒のスカート、シラスも白い長袖に白い長ズボンなので、トキほど汗だくにはなっていない。



「大丈夫か?」



「厳しいわ。さっさと倒しましょう。」



右腕で汗を拭い、適当な方向に歩こうとするトキ。



「でも、広大な砂漠からどうやって巨大人食いミミズを見つけるんだい?」



確かにそうだ。ミミズだし、潜ってたら見つけようがない。



「そうね、作戦はもう完璧なんだけど・・。」



「そういえば、作戦って何ですか?」



シエンが質問をする。確かに、俺も詳しいところはまだ本人の口から聞いてない。どうせ俺が考えた作戦サクリファイスとほとんど一緒だと思うが、その作戦だと、シラスが逃げたり渋ったりした時点で、他の人に危険が伴う恐れがある。



「言ってなかったわね。作戦サクリファイスは、私の魔法で目標を眠らせるの。」



まさか作戦名が被ってるとは?!



「すごいです!そんな魔法が使えるんですね!」



「やるじゃあないか。そうなったら勝ちも同然だね。」



「ええ。そしたら後は、シラスの爆弾を口に入れて、内部から爆発させるの。外部からは攻撃がほぼ通らないらしいからね。簡単でしょう?」



へぇ、眠らせる魔法ね。そういやシエンがトキの魔力は高いって言ってたな。でも、クエストを受けた際の周りの反応を見るに、今回の任務は難しいらしいから、魔法が効くと高を括ってしまうのは良くない気がする。



「大丈夫よ、百パーセント眠るわ。」



心配そうな俺の顔を見てそう言うトキ。一人だけ深刻そうな顔をしてたら、流石に気付かれるか。仕方ない、今回はトキを信じて見よう。ダメだったらその時はその時だ。



「そうだ。ちなみに、手榴弾は何個あるんだ?」



「爆弾のことかい?ほら。」



シラスが両手でシャツをめくると、体に無数のダイナマイトが巻き付けられていた。これだけ見ると、もう食われに行くと言っているようなものだ。トキに何って言われダイナマイトを腹に巻いたんだろうか。

それとは別に、腰には四個手榴弾がある。それで倒し切れればいいのだが。



「これだけあれば十分だろう?それより、爆弾係は僕だけでいいのかい?皆が持ってた方が効率がいいと思うんだが。」



「誤爆したら死んじゃうでしょう?便利なものほど使い方が難しく、危険が伴うの。これはあなたにしか使いこなせないわ。一応安全装置を解除しない限り爆発はしないけれど、念のためよ。」



「成る程、だとしたら僕しか適任がいないね。」



そう言い、シャツを戻すしらす。本当に、これほど乗せられてくれる逸材はいないよな。



「じゃあそろそろ探しに行きましょう。私も限界だし・・。」



パタパタと手で顔を仰ぐトキ。長引くと熱中症にやられそうだな。



「そうですね、早く倒してお風呂に入りましょう!」



そのままとある方向に歩き始める三人。この広い砂漠から巨大人食いミミズを探すつもりか?ん、人喰い・・?



「トキ、手榴弾を一個くれ。」



「・・いいけど、あなたは使わなくていいのよ?」



首を傾げながらも、一つ渡してくれるトキ。



「倒す為には使わねーよ。巨大人食いミミズなんだから、探しにいくんじゃなくて探して貰えばいいんだ・・よっと!」



安全ピンを抜いて、振りかぶって明後日の方向に手榴弾を放り投げる。二十メートルぐらい飛んだだろうか。数秒して、大きな爆発音と共に砂煙を巻き上げた。



「わー、すごい威力ですね!ここまで爆風が来ましたよ!これでこっちに来てくれるんですか?」



「あぁ。音に興味を持ってくれたらラッキーだな。そこで俺たちを見つけてもらう。人食いなら、俺らはいいエサだし。」



「成る程、いい案ね。」



なんて爆発した砂煙を眺めながら、待つこと三十秒。なんだか地面が揺れている気がする。



「・・来たわね。」



トキがそういった途端、爆発地点からまた砂煙が上がる。同時に、地面から巨大なミミズが勢いよく飛び出した。全長数十メートル、顔の大きさも一メートルは余裕で超えている。まるで砂漠の王者のようだ。



「なんだいあれは?!めちゃくちゃ大きいじゃないか!」



「だ、大丈夫ですかね?!あんなの倒せます?!」



戸惑いを見せる二人。彼らの反応を見る限り、相当やばい部類に入りそうだな。明日からはスライムだけ倒し続けよう。



「こっちに来るわよ!」



巨大なミミズが砂を巻き上げ、猛スピードでこちらに迫る。その迫力に、地面が震えるような感覚さえ覚える。万事休すか・・。



と思ったが、俺らの数メートル横を通り過ぎていった。



「・・あれ、僕らが見えなかったのかな?」



ポカンとするシラス。多分、そうじゃない。もしあいつが俺と同じ世界のミミズなら・・。



「ミミズは目見えずだから、多分見えてねーんだよ。音で感知しているって感じだな。」



こっそり発動していたW-サーチも反応してないし、目がないのは確定っぽい。まぁ距離がありすぎて発動してない可能性もあるけど。しかし、先程正確に俺らの位置に突っ込まれていたとしたら、今頃奴の胃の中だったな。危ない危ない。



「とりあえず帰りのバス呼んどきました!」



なんて思ってると、すぐに帰りの用意をしてくれていた。さすが神、仕事が早い。



「一応倒し方調べてみますね!巨大人食いミミズの倒し方っと・・、あれ?検索結果ゼロ件?こんなの初めて・・。」



どっか抜けてるけど。



「レディ、流石にそれは出ないと思うよ?」



「だな、どう見てもあれはモンゴリアンデスワームだしな。」



「成る程、正式名称じゃないとダメなんですね。」



「いや、そういう訳じゃあ・・。」



突っ込むのを諦めるシラス。俺もまさか真に受けられるとは思っていなかった。



「無駄話している暇はないわよ、次突っ込んでくる前に魔法をかけるわ!」



そんな中、一人冷静なトキ。彼女はまだあれを倒そうとしているそうだ。



「魔法をかけるって言ったって、どの距離まで近づけば眠らせれるんだ?あの速度、結構厳しいと思うんだが。」



「大丈夫よ、この距離で発動するから。」



数十メートル先でUターンして、こちらを向くモンゴリアンデスワーム。そのままピタリと止まっている。音を聞いて俺たちの位置を正確に測っているのだろう。こっちに来る前に眠らせておきたいが、この距離で本当に眠るのか?



「・・未だ疑ってるわね。見てなさい。」



そう言い、目を瞑るトキ。彼女の周りの空気が少し張り詰めた気がした。



「スリープ!」



技名を叫ぶトキ。どれどれと敵の方を見る。すると、隣でどさっと人が倒れる音がした。

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