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スリープ?

「・・ん、シエン?」



「勇さん!目が覚めたんですね!」



上からシエンが心配そうに覗き込んでくる。この見覚えのある天井、俺の部屋か。



「ーーいって!」



上体を起こそうとすると、頭がズキリと痛み、一瞬軽い記憶障害の様に意識が混濁する。



「大丈夫ですか?」



「あぁ、なんとか。俺はどれだけの期間寝てたんだ?」



口の中のヒリヒリが完全に無くなってる。窓の外を見ても、激しく雨が降っているせいで、時間帯が識別できなかった。



「丸二日です。皆心配してましたよ。」



そんな長い間寝てたのか!そりゃあ、心配かけたな。



「勇さん、何があったんですか?」



「・・多分、敵に会っていた。」



那由多は言われるがままに戦っている。となると、彼女の後ろにいるのは、魔王サイドの奴の可能性が高い。つまり、彼女は敵ということになる。



「だとしたら、本当に生きてて良かったです。」



ホッと胸を撫で下ろすシエン。



「・・あいつは悪くない敵だったんだ。できれば太郎のように仲間にしたい。」



「それは甘い考えです。彼のようにチョロい人なんて、そうそういませんよ?」



シエンの言う通りだった。太郎の場合バカだから簡単に仲間にできたんだ。那由多は言いなりになってるだけだが、あの黒幕との関係を絶たないかぎり、仲間に引き込むのは難しい。完全に服従してる感じだしな。



「だよなぁ。ちなみにシエン、敵の転移者の情報って何か出回ってるか?」



「・・ちょうど昨晩、とある村が闇に呑まれて滅びました。近頃、その辺りで暴れている人がいるらしいです。格好は仮面をつけた黒髪の転移者と、黒い傘を持った白髪の転移者です。」



黒い傘の転移者、間違いなく那由多だろう。やはり転移者だったようだ。つまり、これで彼女が敵だと確信できた。じゃあ、俺が止めないとな。



「その村の場所はどのあたりか分かるか?」



「止めに行く気ですか?勇さん、その人によってもう何人も犠牲者が出てます。なので、ギルドは陰と陽っていう最強の転移者を向かわせる予定です。今更行ったところで、その人は二人によって、どのみち殺されます。」



「・・悪いが、それは阻止させてもらう。」



そう言い、ベッドから出る。立ち上がった瞬間、眩暈がして一瞬よろめいた。



「無理です!陰と陽は危険な人達って聞いてます!二人の邪魔をしたら、勇さんまで殺されてしまいます!」



必死に説得してくるシエン。心遣いはとてもありがたい。でも、那由多を見捨てたら一生自分を責めるだろう。そんなのでこの先、胸を張って生きていけないんだよ。



「なら、急いだ方が良いわね。陰と陽が動くの、今日みたいよ。」



声がする方を向くと、いつの間にか腕を組んで扉にもたれているトキを見つける。さっきまで居なかったはずだ。にしても意外だ、彼女は、止めに行くのを許してくれるのか。



「トキさん!トキさんも勇さんを止めてください!」



「シエン、勇なら大丈夫よ。それに、ここで行かなかったら、彼自身が死んでしまうの。いやよ、これからリーダーが辛気臭くなるなんて。」



トキが心を読んできて、有難いと思ったのは初めてだな。



「・・本当に大丈夫なんですか?」



「ええ。私が言うんだから間違い無いわ。それに、何かあった時の為に秘密兵器も渡しておくしね。勇、こっちへいらっしゃい。」



言われるがままに、トキの方へ歩く。すると、とある物を手渡しされた。



「これは・・えっと、何だ。」



真っ白の長方形をした消しゴムぐらいの大きさをした白いものを渡される。いや、どう見てもこれはただの消しゴムだ。主に文字を消すために使っていたものだが、この世界ではどんな役割があるアイテムなんだろう。



「これで文字を消すことができるわ。」



「ただの消しゴムじゃねーか。」



これでどうしろっていうんだ。



「失礼ね。それを見せて学校帰りだと言えば、誰でも見逃してくれるわよ。」



そう耳打ちしてくるトキ。本当に大丈夫なのか心配になってきた。



「なんて、冗談よ。それはシエンを心配させない為の演技。ちゃんと大丈夫な根拠は他にあるから、止められる前に早く行ってきなさい。身支度は一階の部屋ですると良いわ。」



「・・ありがとな、行ってくる。」



「早く帰ってきて、シエンを安心させてあげなさい。私は心配なんてしてないから。」



そう言い、背中を押される。廊下に出ると、今度はそこにシラスが待機していた。



「これが一階の部屋の鍵だよ。勇、気をつけてね。」



準備していたように、一階の鍵を渡される。



「俺が留守の間、二人を頼んだぞ。」



「ふ、任せてくれたまえ。それとレディからの伝言だが、陰と陽には絶対に会わないように、だそうだ。」



「おいおい、その伝言預かったのいつだよ。」



那由多を止めに行く話はさっきしたものだ。陰と陽の動向も知ってたし、俺の行動は前から想定できてたってことか。そもそも、敵の転移者と知り合ってることも知らんかっただろうに。



「ちなみに驚いて考え込んだ時は、何もかもお見通しよ。そんなすごい私が大丈夫って言ってるの。自信を持って、やりたい事をしなさい・・って伝言を預かってたよ。」



「じゃあ大丈夫だな。サンキュー!」



シラスの横を素通りし、急いで一階に降りる。帰ったらトキにはウサウサグッズ限定品を贈呈するとしよう。もしかしたらそれすら想定しているのかもな。

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