ワクワクウサウサデスランド4
「お、おい。そんなに苦手だったのか?」
自分よりも怖がってる人を見て、少し冷静になる。よくよく考えてみれば、アトラクションだし、別に害を加えてくるわけではない。足元だけ見て歩けば何とか・・はならないけど、クリアするしかないよな。こんなに怯えてるし・・ん?
「く、あはは!本当にお化けが苦手なのね。」
なんて心配してると、急に顔を上げ笑い出すトキ。その瞬間、心の中で何かが引っかかる。・・こいつ、怯えて震えてたんじゃなくて、笑いを堪えてたのか?という事は、自分がお化けを苦手なふりして、本当にお化けを苦手な俺に先陣を切らせ、その反応を楽しんでいたということか。
「お前まさか・・。」
「ニ度も言わなくていいわ、その通りよ。」
その笑顔が、まるで獲物を見つけた猫のように感じられる。
「いや、言ってない。少なくとも口に出しては。」
このアマ・・、おかしいと思ったんだよ。法で捌けぬ悪の二つ名を持つこの女が、お化けを怖がるなんてよ。
「悪趣味な奴だな。」
「あら、そう? でも楽しいじゃない。」
「楽しいのはトキだけだろ。その為にポイントの高いクイズの館に行きたいとか、序盤からあんな小芝居してたのかよ。伏線回収がすごいな。」
「そうよ。折角のデートだから、楽しまないとね。」
「涙が出るほど楽しんでもらって何よりだが、普通デートって二人で楽しむものだぞ。」
「貴方も楽しいでしょう?こんなに女の子に囲まれて。」
クスッと笑い、そう言うトキ。周りには、未だに俺らを見下ろす女のお化けが沢山いる。ニタニタしながら、ただじっとこちらを見ているだけ。本当に怖い。
「どこがだよ。こんなのただの罰ゲームじゃねーか。」
「あら、やっとここに来た理由思い出した?」
「・・そう言えば罰でしたね。」
彼女が、覗きをデート如きで許すと思っていた俺が甘かった。普通に考えてそんな訳ないのに。非人道的の代名詞、セルゲイブリュコネンコ博士と呼ばれてるこのトキが。
「私の二つ名多いわね・・。人体実験よりはいいじゃない。彼のように新たな実験をする人がいたから、科学が発達し、便利な世の中となって言ってるのよ。」
「まさか異世界で科学って言葉を聞くとは思わなかったわ。ていうか、セルゲイブリュコネンコまで知ってんのかよ。」
「歴史は一通り学んでるの。歴史を学ぶ事は故人への敬意よ。私たちの豊かな生活は、沢山の血と努力の上に成り立っている事を皆知るべきだわ。そうじゃ無いと、今まで生きてきた人が無になるでしょう?」
「歴史を学ぶことは、故人への敬意だって? それなら、あの博士の話をした時、どう思ったんだ?」
トキの目が一瞬鋭く光った。まるでそれを聞くことを予期していたかのように。
「博士のこと? それはまた別の話よ。歴史には色んな視点があるもの。」
上手くはぐらかされる。
「というか、そもそもなんで異世界の歴史を知ってるんだ。」
「そんな事はどうでも良いの。それより、罰ゲームのデートを続行しましょう?」
「え、まさか未だ罰ゲームが残ってたりする?」
「勿論、次は一人でお化け屋敷タイムよ。」
俺の手を払い、暗闇の中出口の方に向かっていくトキ。ちょっと待ってくれと、すぐに手を掴む。
「頼む、こんなとこに一人にしないでくれ。」
「周りにいっぱい妖精がいるじゃない。」
「こっちの世界では妖怪のことを妖精って呼ぶんだな。じゃなくて、一人で行ったらカップルじゃないって疑われるかもしれないだろ?そんなリスク負ってる場合じゃないって。」
何とか説得を試みる。最悪、俺がカップルじゃないって叫ぶことも可能だ。未だ目的を達成してない以上、そうなるのはトキとしても困るだろう。
「・・ちっ。それも一理あるわね。あ、じゃあ代わりに折檻にしましょうか。」
舌打ちをしたあと、パッと笑顔に戻るトキ。
「わざわざ代わりを用意する必要は無いと思うんだが・・、分かった。だからついて行くぞ。」
トキの左手首をしっかりと掴んで歩く。ところで、折檻ってさっきまで右腕にずっとされたと思うんだが、あれは折檻に入らないのだろうか。
「あの程度が折檻に入る訳ないでしょう?」
どっちみち俺には地獄しか用意されてなかったみたいだ。結局、歴史のことははぐらかされてるし。
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「次のクイズの館で最後だな。」
時刻は17:30分。あれから、何とかお化け屋敷をクリアし、そのまま別のアトラクションも淡々とクリアしていった。既に日が傾きかけている。後はクイズの館さえクリアすれば、規定ポイントを超え、ウサウサグッズを購入することができる。
「やっとウサウサグッズが買えるわ・・。」
横で目をキラキラさせているトキ。そんなことより、飛鳥達がどうなってるのかが非常に気になる。
「彼らならそこにいるわよ。」
浮かない顔をしてたのを見られてたようで、心境を読まれる。良かった、まだ殺されないみたいだな。仲良く手を繋いでるが、身長のせいで歳の離れた兄弟にしか見えない。
「お、都合よくクイズの館に行くみたいだぞ。」
「ええ。彼らもここで丁度規定ポイントに到達するからね。」
「・・なんで知ってるんだ。」
「今日死ぬかもしれない人を放っておけないでしょう?」
答えになってないんだが。まさかずっと跡をつけていたのか?なんだかんだ言って、トキも心配してくれてたんだな。
「分かったよ、ありがとな。じゃあ、俺たちも参加するとしよう。」
トキと並んで、クイズの館へと歩き出す。そろそろ災が起きるはずだ。気を引き締めて向かうとしよう。




