ワクサクウサウサデスランド
暖かい日差しが、雲の隙間から差し込んでいる。話は飛んで翌日。温泉での覗き疑惑のお詫びのため、俺はトキに呼び出されていた。どうやら、今日一日買い物に付き合えば許してくれるらしい。生爪剥がすとかではなくて本当によかった。俺もなんか便利な道具がないか探しに行く予定だったので、普通に二つ返事でオッケーを出した。
しかし、集合場所に着き、正面の門を見て首を傾げる。集合場所に着くと、そこにはワクワクウサウサランドと描かれた薄いピンクの看板。中にはそびえ立つ沢山のアトラクション。そしてマスコットキャラが描かれたお店。そう、どう見てもテーマパークだった。ここで買い物ということは、少なくとも戦闘用の道具を買いに来たわけではなさそうだ。
「遅いわよ。」
先に着いていたトキが、腕を組み文句を言う。彼女目線だと遅いが、集合時間からだと三十分も早い。いつから居たんだろうか。ウキウキやんけ。
「待たせて悪かった。で、何でこんな所に?誰か人質に取られてるのか?」
「知らないの?ここはワクワクウサウサランドよ。」
「その説明、異世界から来た俺には優しくないんだが。」
「別世界のこと、何も知らないのね。」
それに関してはトキが知りすぎてるだけだ。現にアベニールもセントラルアメリカ号は知らなかった。講義してみよう。
「トキが俺の世界のことを知ってるのがおかしいんだよ。」
「知らないなら心を読めば良いじゃない。」
「それも知ってて言ってんのか。」
「流石にそっちの世界の偉人までは知らないわ。」
知ってるやつのセリフだと思うんだがな。
「まぁいい。で、なんでこんなとこに来たんだ?」
「ここはそっちで言う、ネズミのテーマパークのウサウサバージョンよ。」
だからなんで知ってんだよ。ん?まて。と言うことは・・。
「え、まさか今日ってデート?」
「そのまさかよ。」
「そんなバカな。」
冗談で言ったのに、まさかその通りとは。くそ、トキの心が読めん。俺のことが好きなら、もう少し表情が崩れてもいいんだが。となると、
「・・貴様、何を企んでいる。」
「何も企んでないわよ、ただ必要なだけ。」
「必要?荷物持ち要員ってことか?」
「そっちはついでよ。」
持たされるのは持たされるようだ。
「ここ、カップルじゃないと入れないの。」
「あー、なるほどね。てっきり俺のことを好きになったのかと。」
「そんな訳ないでしょう。むしろ逆よ。」
それは言い過ぎだろ。
「ただ、くれぐれもバレないようにね。バレたら追い出されるから。」
「追い出すとか、結構厳しいんだな。なら手とか繋いどくか?」
「そこまでする必要はないわ。貴方だったら、従業員のチェックがあった時でも上手く誤魔化せれるでしょう?」
まぁシラスや太郎よりはなんとかできそうだけど。にしても、利益重視じゃないとは、経営者のこだわり凄いな。
「りょーかい。じゃ、行こうか。」
「あれ、勇さん?」
中に入ろうとすると、背後から声をかけられる。この声は・・。
「飛鳥か?!久しぶりだな、元気にしてたか?」
「はい、お陰様で!隣の女性の方は、パーティーメンバーの人ですか?」
「あぁ、こいつは・・。」
「私は勇さんの彼女です!」
そう言い、急に腕に抱きついてキャラを変えるトキ。
「おい、そこまでする必要なかったんじゃないか?」
小声で確認する。
「他の人にもバレたらダメなの。告発することで、客も報酬がもらえるのだから。」
いやほんとこだわり凄いな。どんなテーマパークだ。
「飛鳥は大丈夫だ。バラす様な奴じゃねーよ。」
「そんなのわからないでしょ。何、私に抱きつかれて不服なの?」
そう言い、腕を抱く力を強めるトキ。女の子の柔らかい感触が右腕に伝わった。
そう言えばスリーサイズは・・って駄目だ。知ってることをバレたら怒られる。余計なこと考えないでおこう。
「まぁ、そっちが良いなら大丈夫だぞ。好きの逆とか言った相手に対してこんな事しても。」
照れ隠しで嫌味っぽくそう言ってしまう。
「勇、好きの逆って何だと思う?」
すると、真剣な眼差しでこちらを見つめてくるトキ。
「ん?嫌い・・じゃなくて無関心って奴か?」
「キスよ。」
「うまそうで上手くないな。」
こじつけやんけ。
「こんな綺麗な人が彼女なんて、流石勇さんです。」
コントをしていると、飛鳥が感心したようにそう呟く。まぁ彼女に合わせてやるか。
「ま、まぁな。飛鳥は何でワクワクウサウサなんとかランドに居るんだ?」
「ちゃんと言えてますよ。僕はアベニールの付き添いです。」
「え、アベニール・・まさかここに居るのか?」
「居るわよ。」
後ろからひょっこり現れる白髪ロングのロリ。おいおいマジか。
「こいつは、だいぶ雲行きが怪しいな・・。」
「気にしなくて良いわよ。死ぬのは私なんだし。」
すぎ去り際にそう言い、飛鳥の方へスタスタと向かうアベニール。気にならんわけないだろ・・。
「今の、どう言う意味?」
横でものすごい力を込め、俺の腕にダメージを与えながら質問してくるトキ。どうやらスリーサイズを知ってることがバレてた様で、先程からずっとこの調子だ。
「あの子、俺と会ったその日に死ぬんだよ。」
「理解したわ。」
「事の経緯を話すと・・って早いんだが。適当に分かったって言ってないんだよな?」
「予知を見たんでしょう?」
トキが本当の彼女だったら、どれだけ苦労するのだろう。そう思うと、とうとう右手の感覚が無くなってきた。




