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強制脱出湯船へGO

「これは、NDに入る前に戻ったのか?」



そう言い、目をパチパチさせる。周りには、俺と同じように混乱しているもので溢れていた。



「成る程、NDそのものを壊したのですね。」



ヴァルさんが納得するように頷く。箱から出られないのであれば、世界ごと壊せばいいってか。流石としか言いようがない。



「ええ。他の皆には何かあった時の為に、シエンの能力で惹きつけていた黒い獣の所に行ってもらっていたの。後は合図をしたら、そいつらをリデルの能力で殺してもらって、いつでも脱出できるようにしていたと言うことよ。」



「・・素晴らしい判断です。」



ヴォルさんと同じよう、トキに感心する。よくそんな事を想定していたものだ。確かに、今回転移者を相手にせずとも、黒い獣さえ倒せば、NDを壊すことができる。それを逃げの手段に使うとはな。



「さて。シエン、バスをお願い。彼女に見つかる前に、太郎を連れて早くここから脱出しましょう。」



「大丈夫です。もう直ぐ来ます!」



「ひっ!そうは行くか!T-.....。」



「スリープ!」



能力を使われる前に、一瞬でトキに眠らされる太郎。その眠りの魔法、確か虫程度の雑魚にしか聞かないんだよな。俺に対して効くのか不安になる。



「あら、本当に直ぐ来たわね。じゃあ、戻りましょうか。」



バスのエンジン音が響き渡る。到着に合わせ、木に縛られてる太郎の縄をほどき、彼をひこずってバスに乗り込むトキ。皆、それに続いた。



「そう言えば、あのキザな男はどこに行ったのかしら?」



ふとリデルが口を開く。シラスのことか?おや、確かに居ないな。



「・・後二分だけ待ちましょうか。」



懐中時計を手に持ち、確認するトキ。まさか、獣を殺す合図の為に彼が殺されたなんて、誰も思いもしないであろう。これも邪推しすぎだと思いたい。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「本日はこちらにお泊まりください。」



バスに揺られて数時間、着いたのは森の中の大きな旅館だった。もう夜も遅いし、一旦ここで泊まって、明日朝に帰宅するらしい。



「凄い!立派な旅館ですね。」



「ええ、ここでのんびり太郎の尋問でも行いましょう。」



尋問ってそんな軽い気持ちで行うものだったっけ。



「転移者パーティーの皆様、いらっしゃいませ。ご案内致します。」



玄関前まで行くと、中から従業員の方が出てき、中へと案内をしてくれる。男女別れて、それぞれ大きな部屋に寝泊まりするようだ。襖を開けたそこは、十人は寝っ転がれそうな畳の部屋。男たちはどうやらここで寝るそうだ。



「部屋に戻る前に、太郎から話を聞きましょうか。」



ぽーんと畳に放り投げられる太郎。口にはガムテープ、両手両足は縄で縛られていた。



「そうですね。敵の情報、さらに能力まで分かれば、今後対策できますからね。」



こんな奴でも、他に何人か転移者を目撃しているだろう。後、向こう側の転移者が何を条件に復活させられてるのかも気になるところだ。



「じゃあ、起きなさい!」



トキがパチンと指を鳴らすと、覚醒したかのように一瞬で起きる太郎。周りの状況を見て、混乱しているようだ。



「ふご!ふごご!!」



「落ち着きなさい。そしたらガムテープを取ってあげる。ただ、逃げようとしたらまた眠ってもらうから。今度は永遠に。」



それを聞くと、太郎の血の気が一気に引く。そして直ぐにコクコクと頷いた。少し様子を見て、シラスにガムテープを剥がさせる。



「に、逃げるなんて無理だよ。こんな閉鎖されたところなら。俺の能力は、視界に映ってる範囲の何処かに瞬間移動できるだけなんだ。」



諦めたように能力を明かす太郎。嘘をついたとしても、こっちには心を読む女がいるからな。無駄だと理解してくれてるのだろう。



「それで、俺をどうする気なんだ?」



「色々聞きたいだけよ。手荒な真似はしないわ。」



両手両足を縛りつけることは、どうやら手荒なことには入らないらしい。やはり道徳を習ってないように見える。義務教育しっかりしろや。俺の世界ならメダカでも学校行ってるぞ。



「悪党に話すことなんてない!」



「あら、どうして私達が悪党なのかしら?」



「どうしてって、世界を滅ぼそうとしてるんだろ?」



世界を滅ぼす?トキめ、そんなこと考えてたのか。確かにやりかねないけど。



「太郎、貴方は何って言われて戦ってるの?そもそも復活した理由は何?」



「何って、お前らが正義だって言いたいのか?でもな、俺たちのボスが言ってたんだ。ボスが死んだら世界が壊れる。その為に転移者を呼んだって。だから俺たちは世界を守るために戦ってるんだ!」



その言葉に、思わずトキが冷たい視線を向ける。彼の言葉は、もはや理屈ではないのだろう。彼は自分を正当化するために必死に戦っているだけだ。にしても、向こう目線だとこっちが悪になってんのか。確かに、俺も向こうの魔王を知らないし、こっちの魔王も知らない。どっちが悪だなんて判断つかないよな。



「・・実際どうなんだ?」



シエンに確認をとる。まぁ彼女が悪には絶対見えないが。たまにサイコパスだけど。あれ、じゃあ悪に見えてたわ。



「住民の大半は私達と共に暮らしています。それがこっちが悪でないことの証明になりますね。太郎さん、貴方は住民がいる街を見ましたか?」



「・・いや、まだ見てないけど。」



普通に考えたらそうだよな。あの平和な街で共生してる以上、こっちが悪には思えない。向こうが悪なのは、NDで殺されたであろう人達を見れば明白だ。



「太郎さん、あの黒髪の人もリデルさんを嬲って楽しんでたでしょう?私達はあのような事を止める為に戦っているんです。」



「そんなの信じれない!」



シエンが説得を続ける。が、太郎は頑なに信じようとしてないみたいだ。心境としては信じたくないんだろうな。悪に加担してたなんて思いたくないだろう。



「シエン、後は私が説得するわ。」



「トキさん、お願いします。」



彼女が言うと、説得より洗脳としか思えないが。



「俺は騙されてたんだな!魔王め!許せん!」



まて、何をした。洗脳するにも早すぎないか?



「彼はもう大丈夫よ。これからは私達に協力してもらいましょう。シエン、リデル、疲れたし温泉に行きましょう。」



「温泉!いいですね、行きましょう!」



「わかりましたわ。」



スタスタと部屋から出ていく三人。もう少し疑問を持ってもいいと思うんだが。



「って、じゃあこいつと一緒に寝泊りすんのか。」



「もう仲間だろう?宜しく頼むぜ!」



「・・中々急には割り切れないね。」



シラスですら未だ警戒している。それもそう、さっきまで普通に敵だったしな。



「まぁいい、俺らも温泉に行くとするか。」



「お、覗くのかい?」



「いいね!行こうか!」



馬鹿が騒ぎ出す。ヴァルさんは、温泉の話題に無関心そうに、しっかりとした仕事をしている様子だ。バレたら何って言うんだろうか。



「お前ら子供か。修学旅行じゃねーんだぞ。」



「ふ、男と言うのはいくつになっても女を求め続ける生き物なのさ。」



「その通りだ!さすが分かってるな!」



「君も分かってるじゃないか。もう同志も同然だね。」



全く呆れる。どこの世界にもいるもんだな。

・・待てよ。この世界ってそもそも法律ないんじゃね?と言うことは、怒られるだけで済む・・いや、むしろ怒られることすらないのか??



「勇、どうするんだい?僕らは行くけど。」



「馬鹿が、覗きなんてしねーよ。やっぱりそんなのガキのする事だ。」



「じゃあ勇はお留守番かい?」



「覗くんじゃねぇ、一緒に入るんだよ。」



「同志よ!」



ガッツリ肩を組む馬鹿三人。そう、ここは元いた世界とは違うんだ。もっと自由に、自分のやりたい事をやって生きていこう。

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