勇の成長
深呼吸をした後、剣を抜き、水の構えを取る。そして相手の目を見て弱点を確認した。
弱点: 汚いこと。高威力、広範囲ののPS所持。勝率4% (86 60 90 )
・・結果を見てニヤリとする。ベロニカの言った通りだった。彼女はあの修行で観察眼を養ったから、元々観察をするこのPSはかなり磨かれているんじゃないかと予測していた。あの特訓は俺のPSに一番合ったものだったのだ。
ちなみにこの勝率は、お互い道具無しで戦った時のものを出すよう願った。4%、PSが弱い分、こうなるのは当然だな。ひとまず1%あってよかったと言っておこう。
「私はリデル、いざ尋常に!」
「丁寧かよ。勇だ、よろしくな。」
「いきますわ!」
瞬く間に踏み込み、から竹割りに振り下ろされるリデルの剣。思ってた数倍早い。この距離を一瞬で詰めるのは、筋力だけではどうにもならないだろう。優れた体捌きを感じる。が、タイミングをついてない分、ベロニカに比べるとめちゃくちゃ遅い。何なら観察をするまでもなく、行くってわざわざ教えてくれたしな。
リデルの動きを見極め、心の中でカウントする。3・・2・・1・・。
剣が迫ってきたその瞬間、俺はほんの少し体を引き、剣を横に避ける同時に相手の喉元に剣を突き立て、静止させた。
「これでどうだ。」
「な、舐めないでください!」
しかし、それを振り下ろした剣で薙ぎ払い、後ろにぴょんと飛んで態勢を立て直そうとする。あれ、諦めると思ったが、今ので終わりじゃなかったらしい。まぁこっちもあんなあっさり終わらせれるとは思ってなかったので、相手が着地するタイミングを狙い、前膝の力を抜いて一気に距離を詰めた。
「な!」
そのまま、再度喉元に剣を突きつける。リデルが驚き少し仰け反ったので、剣の握りが甘くなったと確信し、重心めがけて剣を薙ぎ払った。そのまま地面に転がる彼女の剣。技術は認めるが、やはり実戦を知らない動きそのものだった。なんて、おれが言うのもおこがましいけど。
「もう十分だろう。別にこっちはいがみ合う気は無かったんだ。仲良くしようぜ。」
相手から剣線を逸らし、そう言う。正直、このままなら負けはないだろうし。
「まだ私は負けてませんわ!」
衝撃で痺れ、握力を失った手を抑えてこちらを睨みつけるリデル。その双眸には、まだ闘志が宿っていた。
「別にいいじゃねーか、仲間が強いことはいいことだろ。」
「私が一番よ!ブロウアップ!」
「なに?!」
手のひらをこちらに向けて、PSを使うお嬢様。嫌な予感しかしなかったので、一瞬で横に飛び、ゴロンと一回転する。すると俺がいた地点でボン!と小さな爆発が起こった。
「ここからは実戦よ!本来の戦いなら負けないんだから!」
この野郎、今当てる気だったろ。こっちはギリギリで当てないでやってたのに。
「・・つまり、何でもありでいいんだな。」
「ゲスな目をしてますね・・。」
「ええ、卑怯なことをして勝つんでしょうね。」
後ろからの視線が痛い。確かに、あんまり人前で使うもんじゃあないんだけども。そう思い、辺りを見渡す。すると、いつの間にか野次馬が集まっていた。その光景を見て、冷静さを取り戻す。そりゃあそうか、冒険者ギルドの前で転移者が決闘だなんて、誰でも気になるよな。となると、あれを使うのはあまりにも可哀想か。
「それで大丈夫ですわ!行きますわよ!」
こちらに手のひらを向けるリデル。ちっ、やむを得ないのか。最悪、煙玉でカバーしながらやるか。
「お嬢様、なりません!」
なんて、ポケットに手を入れ準備をしてると、後ろにいた執事がリデルの前に立ち塞がった。爺さんなのに動き早いな。この世界の老人は普通とは思わない方が良さそうだ。
「ヴァル、止めないで!これは私の誇りをかけた戦いなの!」
「お嬢様、勇様は本気ではありません。それを理解しないと、ますます無駄な戦いを繰り返すだけです。」
こちらをチラッと見てそう言う執事。
「そんな事はわかってます!でも・・でも、私は負けたくない!だから全力戦わないと行けませんわ!」
涙目で震えながら叫ぶリデル。
「そうではありません。何でもありとなると、勇様にはお嬢様を倒せる秘策があるように見えます。しかも、彼はそれを使うか躊躇われているのです。」
「な、情けをかけられてると言うのですか?!」
拳を握り、プルプルと震えているリデル。
「負けたくないのは、私も理解しています。しかし、無駄な戦いで無理をすれば、最後に傷つくのはお嬢様です。」
冷静にそう続ける執事。そこまでお見通しとは。
「あんな顔してたら誰だって気づくわよ。さぁ、側近があそこまで言ってくれたら十分でしょ。転移者クエストに行きましょう。」
それすらを凌ぐレベルで心を読んでくるトキ。にわかな喧騒にも、彼女はしらけた顔で踵を返した。待てよと、俺達もトキに合流し、歩調を合わせる。リデルを尻目に、そのまま広場から離れた。この早さ、ここまで全部彼女のシナリオ通りだったんだろうな。
「さすがだな、トキ。こんな面倒を片付けるのもお手の物だ。」
「面倒は最初から見越していたから。リデルには、少し現実を見てもらわないとね。」
彼女が敵じゃなくて良かった。
「勇さん、すごい動きでした!修行の成果が出てますね!」
「ふ、さすが僕らのリーダーだね。そうでなくては。」
シエンとシラスも、満足そうな顔をしてついてくる。まぁ今まで転移者のくせに殆ど戦ってこなかったしな。
「待ってください!」
すると、ヴァルと呼ばれていた執事がすぐ横に現れる。この人やっぱり動き早いな。リデルを置いてきて大丈夫なのか。
「勇様、仲間としてとても心強いです。今日は宜しくお願いします。」
そして、丁寧にお辞儀をしてくる。相手のパーティーに話が通じる相手がいて良かった。
「こちらこそ、しっかり訓練された動きだと感じました。PS有りだと更に心強いです。宜しくお願いします。」
ペコリとお辞儀をする。前を見ずとも、後ろからリデルの視線が突き刺さってるのを感じた。




