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感謝の一撃

中に入ると、そこには想像通り何もなかった。六畳ぐらいの狭い木の部屋で、壊れた樽などが置かれている。一体ここで何が起きるのだろうか。なんて考えながら、一つ瞬きをする。すると、驚いた景色が広がっていた。



「え?」



思わず頓狂な声が漏れる。目の前に広がったのは、打って変わって無機質なコンクリートの部屋。形は長方形で、先程の小屋よりふた回り大きい。



「凄いです。こんな感じなんですね。」



いつのまにか周りに現れてるパーティーメンバー達。皆、狐につままれたような顔をしている。



「あれを開ければいいのだろうか。」



そう言ったシラスの目線の先には、宝箱が置いてあった。



「そうね、あれ以外には何もありそうにないし。」



確かに何もないな。カニはここに冒険者がいそうな事を言っていたが・・。それに、正面に気を取られてるが、宝箱と逆方向の壁の真ん中に赤いスイッチがついている。あれは無視していいんだろうか。



「あのスイッチはいいわよ。皆が来る前に押したけど、何も起こらなかったわ。」



俺の視線を見てそう言うトキ。行動が早すぎる。すげぇな、爆発とかしたらどうするつもりだったんだろうか。

とりあえず宝箱の方まで寄る四人。まぁスイッチが何もなかったんだから、これを開けるしかないよな。

シラスがしゃがみ、宝箱に手をかける。しかし、どうも開かないみたいだ。



「開かないね。鍵がかかってるみたいだ。」



「仕方ないわね、私がやるわ。って何この宝箱!」



宝箱に触れた瞬間、手をバッと引っ込めるトキ。確認するように、俺も宝箱に手を触れる。なんだこれ、妙にあったかいし・・。



「生きてるな、この宝箱。」



「え、どういう事ですか?!」



怪訝そうにこちらを見るシエン。俺が口を開く前に、トキが説明した。



「鼓動してるのよ、この宝箱。だから開けられないわ。」



「ミミックみたいな奴か。じゃあ触った時に襲いかかってこないのは何でだろうな。」



首を傾げながら、しゃがんでコンコンと宝箱を叩く。瞬間、パッと宝箱が光った。思わず驚いて仰け反り、尻餅をつく。



「・・なんじゃ?何者じゃお主ら。」



宝箱があったそこには、見知らぬ爺さんが立っていた。この世界にはほんと驚かされてばっかりだ。一応体勢を立て直し、冷静に話しかける。



「俺らは転移者クエストでここに来たものだが、じいさんは・・流石に敵じゃないよな。冒険者なのか?」



「おお、転移者が来てくれたのか!これでもう安心じゃ。散歩してたらこんなとこに飛ばされてしまってのぉ。」



散歩してたら?となると爺さんが来た時は鍵がかかってなかったのか。ん、つまり爺さんが入ってから鍵をかけたと言うことだよな。わざわざただの爺さんに対して、やりすぎだと思うんだが。誰が入ったか確認しなかったと言うことだろうか。



「まぁ無事でよかった。下手すりゃ餓死する所だったろう。」



「それが、丁度一週間ぐらいいるが、なぜか腹は減らんのじゃ。たまにお菓子の差し入れがあるから、それのおかげかのぉ。」



お菓子の差し入れ・・、思い当たる節があるな。まさかあのカニがわざわざ爺さんのために里と山を持ってきてんのか?それにしても、足りないのは足りないだろうに。



「勇、NDの中にいると時間が進まないの。だから腹が減ることはないわ。」



「え、そりゃあすげぇな。じゃあ修行とかにはもってこいじゃねーか。外の世界からしたら、一瞬で強くなって帰ってこれる・・みたいな感じか?」



「いえ。体の時間が進まないだけで、外ではちゃんと同じように時間が進んでますよ。」



なんだ、やっぱそうなのか。だったら上手いこと使うには難しそうだ。



「後、NDですが連続して一週間も居れば、元の世界と時間軸がバグって戻れなくなるって噂です。」



「おいおいやべーじゃねぇか!早く脱出しないと爺さんが戻れなくなるぞ。どうすればいいんだ?」



丁度ここにきて一週間と言っていた。もしかしたらまだ間に合うかもしれない。



「脱出方法は簡単じゃよ、あのボタンを十秒間長押しするんじゃ。」



すると、赤いボタンの方を指差す爺さん。そんだけでいいのか。



「いや待て、やり方まで知ってんのに、何で爺さんはボタンを長押ししなかったんだ?」



もしかしてここの生活を気に入ってるとかないよな。



「実はこっち側にくると壁ができるんじゃ。ほれ。」



手を前に出して、赤いスイッチがある壁の方にゆっくり歩く爺さん。しばらくして手のひらが透明なガラスのようなものに触れた。



「な、こんなのこっち側に来るときになかったろ!」



俺も駆け寄ってガラスの壁に触れてみる。軽くコンコンと叩いてみたが、全く響きやしない。つまり、結構な厚みがあるということだ。



「向こうからこっちに来るときは壁は現れんのじゃ。不思議なもんじゃのう。」



「不思議なもんじゃのう、じゃねぇよ!何で教えてくれなかったんだ!それに宝箱になってたのは何でだ!お陰で全員釣られたわ!」



「その話は後よ。とりあえず脱出しましょう。」



爺さんに文句を言ってるところをトキに止められる。と言っても、もうどうしようもないんだが。



「何焦ってるの。脱出方法なんて、とっても簡単よ。NDだったらどうなるのか楽しみだけど。と言うわけで結局頼ることになるのだけれど、シラス、お願いね。」



シラスの方を向くトキ。何をする気だ?って、まさか・・。



「ん、どうしたんだい?まさか脱出する方法がグボハァ!」



シラスの鳩尾に掌底を打ち込むトキ。そのまま彼は数メートル吹っ飛んで、壁に打ち付けられた。

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