表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/81

別の転移者

春の優しい日差しに心地よさを感じながら、街中を歩く。あれから数日、色んなところを回って情報を集めていた。魔法やら、アイテムやら、転移者についてやら、諸々だ。

今の俺に必要なことは、常識を捨てること。死んでも復活する奴もいれば、そういった薬もある。となると、簡単に元の世界に戻れる方法があってもおかしくない。固定観念を捨て、物事を俯瞰する柔軟な発想がなければ、この先は生き残れないだろう。さて、今日は魔法の使える道具というのを探してみるか。といった感じで街を歩いていると、路地裏に蹲うずくまっている人影を見つけた。何やらボソボソつぶやいているようなので、少し近づき聞き耳をたてる。



「こんなのじゃ、彼女を守れない・・。どうすれば・・。」



ぐすんと鼻をすする小柄な男。どうやらただごとじゃなさそうだ。年齢は、高校生ぐらいだろうか。む、暗くてよく見えてなかったが制服じゃねーか。と言うことは・・、



「よ、どうしたんだ?」



片手を挙げ、声をかける。間違いない、こいつは転移者だ。



「え、あ・・いや。」



驚きつつ立ち上がり、急いで服の袖で涙を拭く男。



「君、転移者だよな。俺は勇、こんな所で何してるんだ?」



「・・その服装、貴方もなんですね。僕は飛鳥と言います。」



丁寧にぺこりとお辞儀をする飛鳥。両目は腫れていた。



「こんな所で一人とは、他のパーティーメンバーはどうしたんだ?」



「・・他のパーティーメンバーは居ません。皆逃げてしまいました。」



そう言い、俯いてしまう飛鳥。逃げた?となると、さっき聞こえた守れない彼女ってのは、パートナーの神のことだろうか。流石に神は逃げないだろうし。



「飛鳥のはあんまり良いPSじゃないってことか?それで、クエストができずに嘆いていたと。」



容赦ない確認をする。ほぼそれで確信してるし、答え合わせに近いな。



「・・聞かれてたんですね。でもそこまで筒抜けとは、驚いてます。勇さんの言う通り、僕のPSじゃあ彼女を守れません。」



また下を向こうとする飛鳥。わかるぞその気持ち。苦労するよな。



「また仲間を集め直すってのは無理なのか?」



「はい、一度パーティー申請をしてしまいましたから。あのパーティーメンバーはもう2度と戻っては来ないでしょうし・・。」



あぁ、そんなルールあったな。確かにそれが出来たら俺もやりたいし。うーん、となると、自力で何とかして貰うしかないか。



「でもパートナーの神もPSがあるだろ。腐っても転移者と神だ。何とかなるんじゃないか?」



と言ったところで、自分の置かれてる現状を振り返る。うん、俺とシエンだけだったら間違いなく絶望的だな。もしかして、仲間がいない分俺の状況より厳しいんじゃないか?



「 僕のPSは、周囲の人にダメージを与えてしまうんです。最初は気づかなかったんですが、それが原因でパーティーがバラバラになってしまいました。それに、モンスターだろうと相手も生き物です。食べるわけでもないのに、とても倒せません。」



そう言う理由か!参ったな・・。確かに、彼はまだ未成年に見えるし、割り切るのは中々厳しいところだ。それに加え、飛鳥は特別優しい性格なんだろう。ただ、聞く限りPS自体は弱いわけではなさそうだ。となると少し安心だ。



「飛鳥、モンスターだろうが人だろうが、意見が違えば戦いは起こる。これはもう仕方ないことなんだ。どんだけ賢くとも、どんだけ強くとも、自分が大切なものを変えることはできない。だから皆、互いに全力を出して戦うんだ。今お前が一番大切なものはなんなんだ?」



「・・彼女です。でも、命を奪うのには抵抗が・・。」



想定通りの言葉を絞り出す飛鳥。生き物を殺したくないという、理想を持つのは良いことだ。ただ、そんなことを言ってるほど余裕はないはずだ。



「命を奪いたくなくても、奪われる時が来る。それでも守りたいものがあれば、戦わなきゃならない。そしてそう決めたのなら、もう後悔はしてはいけない。終わった後に意見を変えるなんて、相手への侮辱になる。」



「・・はい。」



完璧に納得はしてなさそうだが、最初よりはいい顔になったな。



「ま、理想を貫けるほどの実力を手に入れちまえば良いんだ。じゃあ、冒険者ギルドまでついていくよ。それと、いつでも大切な方を選べるようにしとけよ。選べるようになるってのは、簡単なことじゃない。でも、それを決めたとき、きっとお前も強くなる。でも、選べなくて後悔なんて、最悪だぞ。」



彼の腕を取り、立ち上がらせる。そしてそのまま肩を押し、彼が今後迷わないよう、そう付け加えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ