3 ダンジョンの中で
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受付の前で3人で集合し、入ダンした。田舎の小さいダンジョンにしては、ダンジョン省の人が管理しているという、どちらかと言うと珍しいダンジョンだった。
ダンジョン省は昔のファンタジー小説に因んで、ギルドと通称されている。もちろんここの責任者はギルマス(ギルドマスター)だ。本当に地方の管理されていないダンジョンは、入口を塞いで勝手に人が入れないようにされている。まぁそういうダンジョンを専門に回ってモンスターの間引きをしてるのが、家の親みたいなダイバーなんだけど。
ここにギルドがあるのは、近くにポーション屋さんがあるからだ。ポーション屋さんは大抵お茶屋さんが兼業してて、お茶農家さんの多い地方には、ポーション屋さんも看板を上げることが多い。そのポーション屋さんに卸す薬草や果実をギルドが買い取るので、小さいダンジョンにもギルドが併設されるわけなのよ。
ポーション屋さんも自分の魔法のランク上げのために、ダンジョンに潜ることがあるし、薬草やポーションの納品の為にもギルドがあるのは助かるらしい。これはお父さん情報ね。
真奈ちゃんと里ちゃんは、まだあんまり魔法が使えないらしいけど、スライム狩りと薬草採取が主な目的なので、ちょっと油断してたのは確かなのよね。浅い層だから、ダンジョン蜂が巣を作ってたのに気が付かなかったのよ。
果樹園の方に近づいていた二人が、走って私の横を通り過ぎて行った。「蜂、蜂がいるよー」と言って。
一瞬何を言われたのか分からなかった。耳から入った音を脳が理解するのに、時間がかかった。「…はぁ?」
気がつくと蜂に囲まれていた。ダンジョン蜂は普通の蜂に比べるとサイズが大きく、気性がスズメバチ寄りで獰猛だった。
「逃げないと!」と思ったが、既に囲まれているのでどうしようもなかった。羽音と共に近寄ってきた蜂をウォーターバレットで叩き落とした。
ウォーターバレットは水魔法で作る弾丸のようなもので、レベル1で出来る初歩の水魔法だ。なんとか使えはするものの、蜂の数が勝っている為に被害を受けるのは必至だった。
「助けは必要ですか?」と声がかかった。落ち着いた男性の声だった。
「お願いします!」私はウォーターバレットで蜂を落としながら、大声で答えた。
途端に辺りを飛んでいた蜂が全て、凍って砕けていった。羽音も消えて一面を静けさが制した。私は声も出ないくらいに驚いていた。
「大丈夫?お姉ちゃん?」子どもらしい幼い声が聞こえた。
「あ、ありがとうございます。助かりました。ありがとう、大丈夫よ」前半は助けてくれた男性に、後半は声をかけてくれた男の子に答えた。
「蜂に刺されてるなら、ポーションは持っているかい?」
「京香ちゃん、大丈夫だった?」真奈ちゃんと里ちゃんが、走って来た。
「こちらの人に助けてもらったので大丈夫、刺されてもないし」
「本当にありがとうございます」私は深々とお辞儀をしてお礼を言った。こんなに心を込めてお礼を言ったのは初めてかもしれない。