29 処罰
「調子はどうだ?」
「……」
田中はベッドの上で気まずげな顔をして、うつむいた。
ベッドサイドの住吉のと正木は、これ見舞いな、と言ってダンジョンで採取したりんごを数個、ベッドのオーバーテーブルに置いた。
「……ありがとう」か細い声で田中が言った。
「あんまり長居するのも悪いから、もう帰るけど、退院して落ち着いたらまた会おう」
「うん」
住吉と正木は、田中の見舞いに病室を訪れていた。尾形が田中の怪我を知らせてくれて三日程経っていた。筋肉や骨に深刻な異常は無かったそうで、もう明日明後日には退院の予定だそうだ。
住吉も正木も今回怪我をした田中と、入院する程ではなかったらしい佐野の二人と中学で仲良くしていた。クラスでさほど目立たず、嫌われるほどの特性があるわけでもない、「普通」の生徒だった。
普通なりに悩んたり笑ったりして過ごした中学時代の、良き友人だった田中と佐野に、ダイバーになって何があってあんな風に好戦的な性格になったのか分からなかったが、住吉たちは元々の二人とまた笑い合う関係になりたかった。
「佐野くん、田中くん、山本くん、池島くん、今日は君たちの処遇について話をします」
ギルドの県支部長、松島が四人の高校生を前に話しだした。
君たちはダイバーとしてとても優秀なはずだった。皆一様に身体強化や魔法の使い方などを身に着けていたので、私たちも期待してました。しかしながら、ダンジョンでのマナーなどが悪く、かなり評判が悪かったようですね。私たちギルドからも何度か忠告をしましたが、聞き入れられなかった。そして今回の事故です。
実力はあっても、まだダンジョンでの戦い方を知らない君たちは無理を押して、怪我をしました。思ったよりもひどい怪我にならなかったのは幸いでした。これを機会に君たちには反省をしてもらいたい、というのが私たちの意見です。
半年間のダイバー免許停止と、懲罰としてギルドでの労働を課します。ギルドでの労働に関しては、時間給を出します。
ダイバーの働き方をギルド側から見てみるのも、勉強になりますから頑張ってください。
ダイバー免許は半年後に再度講習の受講と、ギルドでの勤務態度を鑑みて考慮します。では、ギルドの出勤場所と時間の確認をして帰宅して下さい。保護者の方にはまた後日、説明の機会を設けます。
四人は一礼して部屋を出た。
「ギルドで働くのかぁ」「これって処分として重いのかなあ?どう思う?」彼らは口々に思ったことを話していた。
田中が真面目な顔をして言った。
「なんだかなぁ、病院で寝てる時に思ったんだけど、俺たちって変じゃなかった?あんなにイキってたのって、今考えるとすっげー恥ずかしいんだけど」
「うん、そうだよね、俺もそう思う」
「とりあえず、真面目に働こうぜ。今はそれしか出来ないんだからさ」「そうだな」
彼らも彼らなりに、自分が常の自分とは違っていた、と自覚したのだった。




