22 ギルドの対策
「私も自分の将来のことを、真剣に考えてみるよ」と京香は寺田に言って、立ち上がった。
「京香ちゃん、帰りにちょっとだけ付き合ってくれない?本屋さんに行きたいの」と里が、話しかけてきた。
「もう調べ物は終わったの?」
「うーん、ますます情報がごちゃごちゃしちゃって、面倒だから、なるには本仕入れようかと思って」
なるには本というのは、〇〇になるには、という将来の仕事に対してやっておいたほうが良いということの情報が書いてある本のことだ。
「古い版のやつなら図書室とか進路指導室にも置いてあるんじゃない?」
「ああ、そうかも!ちょっと行って見てくるわ」
「あ、わたしも一緒に行くわ、本も見てみたいから」
それじゃあね、と京香と里は、寺田や尾形たちに手を振って、情報室を出た。真奈は、部屋の前で既に里と京香を待っていた。
三人は話しながら図書室に移動して行った。
「騒がしいのが急に居なくなって、静かになったな」尾形が言ったが、さっきまで騒がしかったのは尾形と藤井の方だな、と寺田は思った。
情報室には今寺田たち三人しかいなかった。それでも出入り自由の部屋なので、声を抑えて寺田は言った。
「ダンジョンのことなんだけど、前田さんがマリサに帰る時に会ったじゃないか。あれからもダンジョンの下層階は立ち禁止ってなってないよな?なんでなんだろう」
「ああ、あの前田さんが帰ってきたダンジョンだけだよな、封鎖になってるのって。あれは多分フェイクが入ってるんだよ」
「フェイクって?どういうことだよ」寺田と和哉が聞いてきた。
「ダンジョンの奥のエリアボスの討伐戦しないと、扉があかないって前田さんが言ってただろう?制限なんてしなくても、元々トップランクのダイバーじゃないと入れない場所にあるんだ。だからあのダンジョンだけが繋がってる、みたいな風にしてるんじゃないか?」尾形が、自説を披露した。
俺たちには分からないけど、きっとトップランカーたちにはある程度説明されてるんじゃないか?誰だって、案内する人がいて連れて行ってもらうのは良くても、急に全く知らない場所に落とされたくはないだろう?
可能性があるのは、そんなトップランカーたちなんだから注意喚起で、後は自己責任って事になってるんじゃないか?
尾形の言うことには、説得力があった。どちらにしても尾形や寺田たちには、それが正解かどうか確かめられるような権力者に会えることは無いので、知りようもなかった。
「日本ではこんな騒ぎになってるけど、外国はどうなんだろう?やっぱり異世界に行きたい人が殺到してるんじゃなのかな?」 寺田が呟いた。
ダンジョンができて以来、日本以外の国はダンジョン対策に必死だった。アメリカやロシア、中国、オーストラリアといった国土の広い国は、それが難点となって人知れず出来てしまったダンジョンの「湧き」の対応に四苦八苦していた。
銃器はモンスターに有効ではあったが、資金の面で国を圧迫していた。ある意味、悪い循環に陥って、国力を落としていた。今回の異世界との繋がりについても、「それどころではない」というのが主な意見だった。
欧州はEUを主体とした連合で対応しようとしていたが、やはり個々の国の対応が優先となり、その対策までは他国に細かく流れては来なかった。




