14 進路の話
「簡易鑑定を取りたいんだ」和哉は昼休み、弁当を食べながら、尾形と寺田に言った。二人は同じように箸を使いつつ、和哉を見た。
「簡易鑑定?蜂の巣退治かぁ」
「ポーション作りで必要なのか?」尾形が質問してきた。和哉がポーション作りをしていることを知っている二人は、簡易鑑定とポーション作りの関連をすぐに分かってくれたようだった。
「そろそろ文理選択の時期だし、俺は薬学部に進みたいんだよね。だから鑑定は絶対に欲しいんだ」和哉は意気込んで語った。
「そうか」尾形は真剣な顔で箸を握りながら、自分も実は治癒魔法科に行きたいんだ、と言った。
「まぁ一応理系には進みたいし、簡易鑑定は有っても邪魔にはならないよね」と寺田もにこやかに言ったので、二人とも蜂の巣退治に付き合ってくれるようだ。
「尾形は治癒が欲しいんだ」と寺田が尾形に聞いた。
「中学までサッカーをやってたのは二人とも知ってるだろう?辞めたのは足の故障なんだよ。それで治癒の方に進もうかと思って」
「ポーションでは効果が無かったのか?」
怪我には、ポーションがよく効く。怪我の多いアスリート系の子どもはポーションのお陰で、肘やら膝やらの致命的な怪我をするパターンが減っている。
「膝の脱臼を二度やったんだ。二度目は特にひどくて、普通に手に入るポーションじゃもう治しきれなかったんだ」
尾形は淡々と自分の怪我について語った。中学の頃は、日本代表のユニフォームを着た事もある位のサッカー選手だったのだ。きっと思うところは見た目以上に有るのだろうが、彼は今、将来について話している。
「放課後に菊池たちにも、パーティの活動について話そう」寺田がそう言って話を終わらせた。
「蜂の巣退治をしたいの?」京香は男子たちに向かって確認した。
放課後、六人は高校のダイバー登録をした生徒が集まる部屋にいた。部活動と言うようなものではないが、ダイバーとして活動する生徒たちの情報交換をする場として、学校側が部屋を用意してくれているのだ。
どこのダンジョンのナニが高く売れるとか、高校生でもダイバー活動の税金対策情報だとか、先輩たちから得るものは色々とあった。
中でも進路に関しての相談なども、先輩の残した資料などで知ることができるので、この部屋の活用率はなかなか高かった。
資料というのは、匿名で◯◯科に進むなら、このスキルがあると良いよ、とか、そのスキルがどのダンジョンで取りやすいか、とかが書かれている。
進路毎にまとめられたカードは、後輩たちが参考するのに何度も見た跡があった。今どき手書きって、と思わなくもないが資料と言いつつも、実際のところは旅先にある思い出を書くノートのようなものである。
もちろんダンジョンやモンスターに関しての情報もあって、攻略法や倒し方なんかも書いてある。古い情報が更新されてない事もあるし、ダイバーによっては攻略法を、パーティ内の秘密にする事もあるので、進路のカードと違ってこちらの信用度は程々だった。