13 藤井和哉の野望 2
和哉は帰宅すると、いつものように荷物を片付けてから、家の製薬室の自分のスペースに果実や薬草を置いた。ポーションを自作する為だ。
田中DP㈱の前社長がレシピを公開しているので、誰でもポーションを作ることは出来る。販売となると、まだ特許が生きてるので簡単には出来ないけど。
製薬室に入る前に各種消毒をして、白衣を着ているのでそのまま製薬にかかった。薬草を洗って、揉む。水魔法を使って水分を抜いて、また揉む。これを繰り返して荒茶と呼ばれるお茶っ葉を作る。
出来上がった荒茶をガラスの急須に入れて、低い温度のお湯を注ぐ。ゆっくりと葉っぱが開いて成分がお湯に出るのを待つのを眺めた。
田中DP㈱が販売する前のポーションは、苦くて薬草臭くて命がかかってない限りは飲むのを敬遠するような味だったらしい。それを田中の前社長が今の形にして、それを特許使用料1%で販売できるようにしたのだそうだ。
全国のお茶職人や、漢方薬に携わる人間はきっと悔しかっただろう。実際にうちの両親も「煎じて飲むっていう形を取ってた漢方が温度にさえ気がつけてたら!」と言ってたのを見たのは一度や二度ではない。
薬草の苦みが出るのは、どうやらお湯の温度のせいらしい。良い煎茶を淹れるように沸騰しすぎない温度で煎じると、苦みや薬草臭さが出ないようなのだ。
田中DP㈱の前社長は、ポーションを持ち歩きしやすいお茶っ葉という形に落とし込んだことが画期的だった。和哉はまた違ったアプローチで、薬草を活かせないか日夜考えている。その前にポーションの特性や使い方を知るために、ポーションを作ってる、というわけだった。
作ったポーションはパーティでダンジョンに行く際に使っているし、今のところ味にこだわってるので、メンバーにも好評だったりする。
中級薬草で作ったポーションは、和哉のランクではあまり効果の高いものにはならなかった。簡易鑑定を持つ母に鑑定してもらい確かめた。自分で確認するためにも、自分でも簡易鑑定が欲しいな、と和哉は思った。
簡易鑑定は、鑑定のランク1から2くらいを指して言うもので、ダンジョン蜂、中でも女王蜂がドロップする。和哉の実家のように、ポーションを作ってギルドに卸すような仕事には必須スキルだ。
今後も製薬に関わるつもりなら、やはり取っておくべきだろう。和哉は明日学校で、メンバーに相談することにした。パーティ単位で動いているのだから、自分の都合だけを主張するわけにはいかないからだ。
製薬室を片付け掃除して、明日の予習をした。将来は薬学部を目指したいので、学習進度に遅れるわけにいかないのだ。日常の雑事をこなし、明日学校でメンバーに話すことを色々考えている内に、和哉は眠りに落ちていた。