悪役令嬢と皇子のよくある婚約破棄
初めての作品投稿です…!
色々不手際あるかと思いますがよろしくお願いします!
「エルバーツ公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!!!!」
そう言ってわたくし、マリアンヌ・スフレ・ルーチェ・フォン・エルバーツを指差しで高らかに宣言する隣の大陸のファイコス皇国の第2皇子のクリストファー様。その後ろには別の令嬢、スザンナ・サラン子爵令嬢を連れている。
場所が悪過ぎますわね、普通の神経してましたらこんな国の関与していない中立の学園の卒業式のパーティーでこんな騒ぎ起こしませんわ、自分の醜聞になるのをわかってないんですのね。
バサッと扇子を拡げて口元を覆い隠す、淑女たるもの表情を読まれるのは宜しくないんですの。
「あら、そうですの、理由をお聞かせ願えます?」
「しらばっくれるな!!貴様、スザンナを虐めていたそうじゃないか!!!」
クリストファー様の後ろで小さく震えるスザンナ様の口元は微かにですがいやらしい笑みが見えました、そうですの、わたくしを嵌めようって事ですのね、良いでしょう、お相手致しますわ、誰を敵に回したのか、分からせて差し上げなくては、ね?
「わたくし、スザンナ様に構うほど暇じゃありませんの、人違いじゃなくて?」
「嘘をつくな!!貴様の姿を見ていると度々聞いているぞ!」
はぁっと深い溜息を吐いて睨み付ける、ここで魔力調節をして二人に対して威圧を掛けると二人ともビクッと身体を強ばらせた。
「人違いだと、言っていますの、わたくしの周りにはいつも人が居ますもの、何ならお聞きします?バレリア王国の王女サンドラ様とシュタイン皇国のシュテルツ公爵家令嬢のユリア様、そしてエルトパッツア王国メリダ侯爵家令嬢のシーラ様、この面々にわたくしと同じように嘘をつくなと申しますの?」
ここで遠回しにこの面々に凶弾したら国際問題になると伝えておく、が、このお馬鹿…こほん、頭の弱い方に伝わるかは別に問題ですが。
「貴様と口裏を合わせているだけだろう!そんな話信じるわけないだろ」
この発言でスザンナ様は顔色を悪くしました、彼女は頭の回転は早いのでわたくしの言葉の意味を察したのでしょう。
パチンと扇を閉じると今まで浮かべていた笑みを消してクリストファー様を睨み付ける。
「そうですの、分かりやすいように国際問題になると伝えてましたのに、ね?
クリストファー様、今、貴方が敵に回す国が何処だか御存知?この世界で1番大きい大陸、エーデル大陸の諸国を敵に回すんですのよ?そうしたら貴方の王太子の座も無くなりますわね、なにせ…わたくしとの婚姻が第一条件で王太子になれたんですもの、わたくしと婚約破棄なさるのであれば貴方が、王太子になれるはずありませんわ、ご自身が無知を今この場で証明致しましたもの。」
また扇を開いて冷たい視線をクリストファー様に向ける、周りはクリストファー様から視線を逸らしていた。スザンナ様でさえクリストファー様から視線を外していました。
さて、誰の味方が無くなったクリストファー様は顔を真っ青にしていますがわたくしの知ったことじゃございません。
ここで次はどうしましょうかと考える余裕すらあります。
その時でした、後ろの入場の扉から我が国の王太子であるクーラント様が入られました。
目を輝かせたクリストファー様はどうにかして我が国の王太子殿下に取り入ろうと必死です。
その必死さが滑稽で見ていて楽しいものですが。
そのクリストファー様を無視してわたくしの所へ来るクーラント様はそのままわたくしを笑みを浮かべたまま抱き抱えました。
「私の愛おしいマリアンヌ、今婚約破棄がどうとか聞こえたけど気の所為かな?」
「いいえ、お父様、気の所為ではなくてよ?」
皆が一同に騒ぎ出す、エルトパッツア王国の王太子であられるクーラント様…もといお父様に抱き抱えられている事実もだがわたくし自身が王族と公言したのだ。
それに対してクリストファーさまが狼狽え始めました。
「なっ…お前!公爵令嬢じゃないのか!?」
そもそも論点の違う発言に周りは失笑。ファイコス皇国にはわたくしが王族と言う事は事前に言ってるのですが…
お父様に目で下ろすように訴えると、そのままストンとわたくしを下ろしてドレスを摘んで優雅に礼をする。
「改めまして、わたくし、マリアンヌ・スフレ・ルーチェ・フォン・アクアと申します、王太子クーラント殿下の娘にございます」
「他国の皇族に嫁がせるのに王族ではあるが、王女とはっきり言えない私の娘、という肩書きでは弱いと思った…なので、親戚関係であるエルバーツ家に養女に入って貰ってたのだよ、まぁ、元々私が王になったらこんな婚約、無かったことにさせて貰うつもりだったけどね。
さて、娘にこの仕打ちをしてくれた君はどう償ってくれるのかな?」
にっこりと笑うお父様に顔面蒼白なクリストファー様、スザンナ様も顔色が優れませんね、
漸くどれだけご自身が罪深い事をしたのか分かったのかしら。
ファイコス皇国もお終いですわね、この婚約破棄でこの国にどれだけ慰謝料を支払うことになるのでしょう?
まぁ、わたくしの知った事ではありませんわね、それはお父様にお任せ致しましょう。
スザンナ様はきっとご実家から修道院に入れられますわね、無実なわたくしを陥れようとしたんですもの、きっと孤島の修道院と呼ばれるヴェルナー修道院に連れて行かれるのは決定事項でしょうね。
憐れなお二方、わたくしを陥れず、普通に婚約破棄を申請していれば穏便に済みました所を…わたくしだって鬼ではないのです、正規の手続きを踏まえましたら快く応じました。
まぁ、ファイコス皇国の王妃様にはどっちにしてもこってり絞られるとは思いますが。
「まぁ、よくある婚約破棄ですわね」
そう独り言を呟いてドレスを翻してその場を後にした。
これはわたくしにとって始まりでしかないのだから。