日常は突然に
今日もまた朝が来た
なぜこんなにも朝は辛いものなのか
この世の中には朝早く起きて、コーヒーを淹れて
優雅な朝食を取る人間がいると聞く
そんなトチ狂った人間はおそらくほんの一握りの
人間で多くの人間は朝忙しなく動いているものだと思いたい。
私はといえば今日も変わらず、出勤の15分前に起きて
急いで顔を洗い、朝食など取らずに身支度を済ませ
足早に出ていく。
いつも通り2分ほどの余裕を残して
重い、あまりにも重い玄関のドアを開ける。
最近になって、玄関先から3歩ほど歩くと、不思議と吐き気がするようになった
自分でも末期だとは思いつつも、歩く足は止まらない
まるでそれが使命であるかのように
一歩一歩、歩んでいく。
いつもの駅のホームに着いたのは10分後ほどだろうか
というのもここまでの道程は
いつも通りの道なので、何も考えずとも
オートマティックに行動している。
人間とは慣れればこんなものだ。
本来なら、会社に着くまで
ほぼ自動で何も考える事なく
気づけば着いているくらいのものなのだが
今日は違った。
イレギュラーがあったのだ。
何やら騒がしい。
乗り場の方で何かあったようだ。
・・・何かあったのであれば
おそらくあれであろう。
珍しくもなんともない、
この地獄に耐えかねたどこかの誰かが
その物語に終わりを告げたのだ。
何も珍しいことはない。
だが、このまま会社に遅れるのはまずい
「・・・電話しとくか」
薄情だとは思うが、私にとっては何も関係ない人物の死と
会社での叱責を比べるまでもなかった。
喧騒から離れ、スマホを取り出そうとした時
小さく声が聞こえた
「・・・・・ですよ」
少女の声だ、母親でも探しているのだろうか
気にせずにスマホをタッチしようとすると
画面は真っ暗なままだ、
まさか、、、
昨日充電していなかったのか、、、
画面を傾けると、パッと画面が光る
「よかった・・・」
安堵する私のそばで先程の少女はまだ、喋っているようだった。
気にも止めず、スマホの顔承認を解き、会社へ連絡しようとする。
・・・・全然承認されない。
どころか、また画面は消え、タッチしても
何も動作しなくなってしまった。
「このタイミングで、、、」
今、故障したのであれば最悪のタイミングだ
会社には連絡が取れず、後で報告しよう物なら
言い訳だと叱責される。
どうしようかと思案を巡らせていると。
今度は後ろから何者かに引っ張られた。
それほど強くない力だが、条件反射で直ぐに振り向いた。
そこには先ほどの少女の姿があった。
まさか、迷子なのか、、
だが私にも時間がない、、、
焦燥していく中やけに時間がゆっくりに感じる。
嫌な汗が出る
そもそも少女は何故こんな冬場に
真っ白なワンピースを着ているんだ
場違いにも程がある。
それに何だこの違和感は、、、
何とも言えない違和感は言語化できないまま
少女はまた口を開く。
今度ははっきりと聞こえた
「ここがあなたの終点ですよ」