序章
もし、私にいつの日か異世界転生の
選択肢が与えられたのならば
私は迷う事なく、その道を選び進むだろう。
たとえその先に、どの様な困難があろうとも
素晴らしき仲間たちと、美しい世界の中で
超えていくことが出来るだろう。
そう思っていた。
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【序章 始まりの日】
また、電車に揺られる日
いつの日もここまではオートマチックに流れていく
目覚ましの音
2度目のアラームで起きる
朝食を食べる訳でもなく、少し座椅子に座る
何かを考えたり、思い出したりしているのではなく
ただ、時が経つのを待っている。
しばらくして、そろそろ行かなければ不味い時間になり
ようやっと、思い腰が上がる
綺麗とはお世辞にもいえない、ヨレヨレのシャツに腕を通し、
ズボンを履くときには少しよろける。
髪は整髪料などをつけることはなく、
ボサボサになっているものに、申し訳程度、櫛を通す。
何も入っていないも同然のカバンを手に取り
実際のそれよりも重く感じる鉄のドアを開く。
いつもの朝だ。
プルルプルルプルル・・・・
「・・・・・・おい」
「・・・・・おい!羽田中!!」
怒号がする、勿論相手は私だ
「電話はツーコール以内に出ろって言ってんだろっ!!」
しまった、また何時ものやつだ
時折、電源が切れたみたいに集中力が途切れてしまう。
「す・・すみません」
通算何回目だ?
人に謝る事に関しては、二位を大きく離し独走状態の自信がある。
ある春でもなく、夏でもなく、かといって梅雨も明けた1日の事
私の人生は通常運転で運行し、かれこれ45年にもなる。
いじめられる様なことも無いが、誰かに認められる様な事も無かった学生時代
居なかった事もないが、恋愛小説の様な愛を感じる事もなかった恋愛観
就職はできたが、それが良い事だったのかは分からない社会人生活
今も上司に怒られているが、こんな事はなんとも無い
5分後には、何時ものように、居ようが居まいが何も変わらない。
そんな一社員、歯車として、ただひたすらに画面に文字を入力していく。
時には電話に出たり、出なかったりするだろう、
ただし変化はそれくらいの物
それが、私の人生であり、これまでも、これからも変わらないものでもある。
ある、偉い人はこんな事を言ったらしい
【現状維持は衰退である】
そうなんだろう
私は少しずつ、ほんの少しずつ、衰退しているのだろう。
終わりの始まりまで