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一一一朝。
チュン…チュンチュン……
小鳥の囀りと、うららかな陽気につつまれて
私は目を覚ます。
前世では、正直考えられなかった幸せだ。
んーーっと、私は軽く伸びをして
朝食の準備へと赴いた。
「あら、カルア。もう起きてたのね」
「おはようございます、聖女さま」
台所へ行くと
既にカルアが昨日の残りのシチューを温めており
私が作った【窯】に火をくべていた。
「聖女さまが毎朝、焼いてくださる【パン】が
待ち遠しくて早起きしてしまいました。
【小麦】っていう作物は凄いですね!!」
そうなのだ。
元々、ここの食生活は酷いもので
硬いパンと味気のないスープが当たり前だった。
ここで前世の記憶が、かなり役に立った。
【牛乳から作ったシチュー】もそうだが
私たちの食生活を大きく変えたのは
【【イースト菌】】の作成だ。
これがないとパン作りは始まらない。
「【小麦】を作る為に動物の糞や私たちの糞を
集めだした時は、流石にドン引きしましたけど」
カルアは懐かしそうに話を続ける。
“うんこ聖女”だったり、
酷い呼ばれ方をしたものだった。
当然、この世界では【肥料】なんて考えや
【休耕】なんて考え方が
そもそも無かった。
その頃には
私は癒しの力は皆んなに認められていたし
いつも【治療費を貰わない】私が
“家畜の糞をください”なんて言い出した日には
村人からは、かなり心配されたものだった。
その“うんこ聖女”のおかげで
この村は少しずつ発展してきているのだし
もっと私を敬ってくれてもいいと思う。
そんなくだらない事を考えながら
カルアと共に朝食の準備をしていった。