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マリアが
一度目の生を受けた世界は
戦争が多く
日夜、砲弾が飛び交い
生命の価値が軽い場所だった。
物心がつく頃には
父親や母親は既におらず
“同じ様な”境遇の子供たちと
徒党を組み、盗みや殺人。
数え切れない程の犯罪に
手を染めていた。
何ら珍しい事ではない。
明日を生きる為に必要な
至極当然の事であった。
……とはいえ、心は荒んでいくものだ。
何度、自身の環境を嘆いたか分からない。
何度、罵詈雑言を投げかけられたか分からない。
何度、仲間に裏切られたのか分からない。
そこで彼女が出会ったのは一冊の聖書だった。
文字が読めない彼女からすれば
価値の全くない物であったが
幸いなことか、彼女の仲間には
読み書きが出来る者がいた。
もちろん、書かれていた内容に
彼女は共感することは出来なかった。
絵空事で理想論でしかなかった。
ただ 一度の人生なのだから
聖書の様に生きてみたいな、とも思った。
仲間たちが
私なしで生きれる様になったら
新しい人生を始めてもいいかも知れない
とも思った。
そして、時がたったある日……
マリアは決心を固めて
自身が仕切っていたチームから抜けようと
仲間に話した夜。
……仲間たちにマリアは殺された。