二章一話:パワーローダープラン
――――さて、時はしばらくと経ち、しばらくの時間が訪れた。
世を駆け巡った”Gカイザー”の逃亡劇は芸能人のスキャンダルが挟まった途端に鳴りを潜め、なおかつ失態を隠したい警察と世の不正をささやかに正したい民衆との間でその芸能人が燃え上がり、すぐに新聞の隅に追いやられ語られなくなった。
不動 恒正が完全に雲隠れし、以後姿を見せなくなり追跡ができなくなったことも理由のひとつにあっただろうか。
とかく、晴れ渡る空はかつての雷雨を忘れさせるほどの快晴、夏がもう目の前を通り過ぎたこの季節。ヒノデの区ははずれ、有限会社ヒノデ倉庫跡地は今日も、バケツ頭の聖騎士の活動拠点として存在した。
……そこにいる影ふたつ。
逆屋 健作と有屋 総司。
まだまだ生傷が癒えきっていない。
「……それで、これが”センチネルⅡ”」
「改めて見るとスッゲーっすよね!技術の鎧って感じで…
すっごい高かったんじゃないッスか!?
何百万とかそういうくらいには最低でも!!」
「だいたいの部品やセットをモータースがバックアップしてくれたから、
僕がやったことは設計と組み上げ、それからOSのセットアップくらいだよ。
リチャード社長の支援なしにはここまで組み上がらなかったからさ。
だから僕の出したお金はそんなってほどじゃなかったっていうか」
「モータースのリチャードって、あのヒノデモータースの!?
スッゲー!うちの高校の就職したいランキングでも上位ッスよ!
この島でも有数のトップレベルのデカさの企業ですよね!?
親会社からそろそろ独立するって噂もある話題の企業だったかって…」
「いやいや、親が友達でさ、僕はその跡継いだだけっていうか、
お世話になってる人っていうかさ……頭上がらないよ。
スポンサーになってくれてるのも半分親のおかげだしさ」
「親御さんはどちらに?」
「……あー」
興奮気味の有屋が聞けば、なんと返していいかわからなさそうに。
「……けっこう前に死んじゃった、飛行機事故でさ」
「あッ……」
答えればそうなるとはわかっていたが、沈黙。
どこかどうしようかとなる二人は、健作が先に口を開いた。
「でもさ、なにも無くなっちゃったわけじゃないんだ。
このセンチネルに搭載されてるセンチネルOSは親の…父親の設計で、
それを搭載した本体を僕が設計したんだ、だから共同作品。
親の遺したスーツで、僕はヒーローになったんだよ」
「……お父さんが、遺したスーツ」
「そ、だから僕は……これでヒーローを目指すんだ、
職業ヒーローとは違う、本当のヒーロー。
”誰もが背中を見てくれる”……そんなヒーローに」
「……スッゲ、素敵って想いますよその理想」
健作の言葉にそう応え、有屋はセンチネルを見る。
鎮座するその鎧は、この間の擦り傷がまだ生々しく残っていた。
「オレもそうなりたいッス、そこについていきたいッス。
ヒーロー、スナッチアイは誰もが認めて誰もを守れるヤツ。
そんなヒーローになってやりたいって、オレも思うッス」
「ああ、一緒に強くなろう。僕もこの先強くなるから…
忙しくなるよ、特に夏だし、こういうとき人は活動的になる」
それはヴィランや異能犯罪者もなのだ、と。
「ウッス!出る時は言ってください!
コスチュームとか持ってきましたから!」
「ツクナミ支給じゃないの?大丈夫?」
「快く送り出してくれましたッ!」
「まじか…」
体の良い厄介払いというか、この前の失敗の評価というべきか。
あのときヒーロー先輩、ブラックスワットの醜態を見ていたのも彼だけだ。
去ってくれるならちょうど良かったとも邪推はできるが、振り払い。
「それでッ!どっから何から始めましょうッ!」
「そうだねえ、とりあえず僕は……」
「はいッ!!」
さあ、弟子として受け入れられた少年の初仕事だ、何をするかと思えば…。
ばさっと、大きく紙が広げられるだろう。それは――― 設計に使われる大きなシート。
中央にはセンチネルが描かれていて、そこにはこう、書かれていた。
――――――“センチネルⅡ強化プラン試作設計図”。
「……さっ、アイデア出しの手伝い、お願い!」
「……はい?」
―――――――――◇
心技体という言葉があり、それは健全な心は健全な身体に宿るからとも言いかえられることがある。強靭なボディに、強靭なハートは宿るということだ。卵が先か、ニワトリが先かはともかくとして、であるが。
さて、この街で戦うヒーロー達には異能があり、言ってみれば彼らの戦いは能力者バトルと言い換えていい。異能の強力さは抜きん出てその個人の武器となるし、それが強い方がたいていは勝つからだ。そしてそれを強くするには主に、精神性の強さを鍛えることが良いとされている。
その個人に宿ったもの、その個人を表すもの、その個人の心から発露するものであるから、より研ぎ澄ました精神状態で取り扱うことで精密に、振り回されずに強力に異能を発揮できるということであるらしい。
と、健作は以前他のヒーローから聞いたことがある。
……だが、この話は戦闘に異能を用いる人間の話だ。
「さて、と、まずは――――」
逆屋 健作は戦闘系異能を持たないタイプの異能者である。機械にまつわる異能を持っている彼は、それを戦闘で用いることはめったにない。場合によっては使えるが基本的に彼の強さを彼たらしめるのは、彼が着用するパワー・アーマースーツである”センチネルⅡ”の強さにほかならない。
なれば彼をひとまず、手っ取り早く強くするのはそれを強化するのが最善手であり、最速である。心を研ぎ澄まし滝に打たれるのも悪くない選択だったが、心が追い越したら今度は身体がついていかないのでは元も子もないのだ。
だから彼は設計図を描き始めた、自分の纏う鎧を強くするその設計図を。
「どうやって強くするか、だなあ」
「えッ、自前でこれ書いてるんスか…?」
「フレームはモータースからのもらいものだけど、
外装の基礎設計は僕がやってるからね。
だからいじくり自由自在ってことになるんだ」
「スッゲ……」
有屋 総司はいかんせん高校生であり、かつ学業の成績は良いものとは言えない。
サボっているというわけではなく、単純にああいった暗記が苦手だったりするだけだ。先の戦いやバリー・スティールの時を見ても、考えるより先に身体が動くタイプと言って差し支えないだろう。警察なら刑事のキャリアを積み上げても機動隊あたりに行かされそうである。
そんな彼の目から見てみると、健作がすらすらと図面に何かを書き込んでいる姿だけでそれはすごいものに見えるのだ。実際のところ、健作も自負しないだけで天才肌と言えばそのとおりの人材であった。ヒーローでなければきっと、エンジニアをしていた。
「“Gカイザー”と戦ったとき、防御が足りないって感じた…
から防御重視のほうがいいのかな?でもそうすると更に鈍重化するなあ。
有屋君のほうからしたら何が足りないかなって思う?」
「そうッスねえ」
スピード、と言ってしまえば限りなくすべてが足りないが、しかしそれは言うだけ無駄である。コンセプトを否定することにつながってしまう発言は、今はよくないなと。
「卿、あの”必殺技”以外はかなり防いでたッス。
要所で足りなかったって言えばそうッスけど、
でもそこより負けてたトコあったかなって」
「負けてたトコ…」
「殴り合いで一発の威力は重くて勝ってたッスけど、
でもだいたい流されてた感じがして……えーっと…
ハンマーの振りが重い?遅い?っつーか」
「武器、獲物の機動力か…」
センチネルⅡ、単体重量240kg。
ハンマー重量80kg。
現時点での重量比である。”見た目より軽い”とはよく言われるもので、それはセンチネルⅡの装甲を構成する材質が特殊樹脂であるからというものではあるが、それに比べるとハンマーは武器として非常に重い。
たしかに振り回しの遅さが大きいと思うと、”武器に振り回されている”印象も拭えなかった。健作は図面を描きながら、言う。
「ハンマー自体の振りを速くするためにできること…
軽量化?それじゃ特性を殺しちゃう、空気抵抗削減?
いや、それもスカスカになるしなあ……」
「単純にハンマーの方が動くようにすればいいとか?」
「え?」
「あれッスよあれ!えーっと……こう、マンガで見たンすけど」
がーっときて、わーっときて。
後ろからばーっときて。
身振り手振りで説明する有屋を見ながら、健作は手をぽんと叩いた。
「……ハンマー自体に推進機を取り付ける…
つまりジェットハンマーにするってことか!
重量も増すけど振りは速くなる!いいアイデア!」
「そッスか!?俺いい感じッスか?」
「いいね、若い柔軟な発想だね……!
となると重量比は確実に拡大するから本体重量も増加の必要あり…
なにより振り回すためにもっとパワーがいる……」
「うわッ、もう形できてる」
若い頭脳、というと健作も大概なのではあるが、二十も超えて歳を経りつづけると、年下というものは皆若く見えてくるものである。学生さん、という立場の者達なんか、なおさら。
健作はすらすらとペンを走らせ、ざっくりと簡単に製図していくのだ。仮の姿でデザインでしかないとはいえ、簡単にこうも図面に絵を書き起こしていけるあたり、やはり天才の肌を持つ男ではあった。
「卿の本体はそのままに、一部とっかえ…で、
ンで外側にパーツを新しく増やす?って感じッスかね?
こういうの名前なんていうんだっけッスかなあ」
「パワーローダー機構が一番近いものかもしれないね、
エイリアンの映画とか見たことない?あとはロボットもの。
ああいうのに結構出てくるタイプのやつかなーって」
「あー……オレ、アクションものばっか見てるからなァ。
健作さんそういうのもイケるクチなんですか?」
「基本はヒーローものばっか見てるけど、なんでも雑食かなあ。
食わず嫌いしないっていうか流行りで興味持ったらちょっと見るっていうか、
そういう感じにフィクションには結構手を出してるよ、ゲームもするし」
「へぁー……ストイックなイメージだったんで意外ッス。
あ、別に悪く言ったワケじゃなくってこう、
自分に時間使って鍛えたりしてるイメージだったっていうか」
「ヒーロー活動してるだけで体力使うからねえ。
トレーニングはするけれどある程度にとどまるし、
自分の癒やしの時間は大事にしたいなって」
ヒーローというと世間体も大事である。
スキャンダルを握られ引退した者もそれなりにいる。
だから自室に籠もった時間など、彼らの安らぎである。
「はー」
「ストレス管理もできてこそヒーローだよ。
現代に生きる人間みんなの悩みでもあるけど」
「オレもなんか打ち込めるもん探したほうがいいのかなー…
そういやだいぶいろんなとこで活動してますけど、
健作さんは、なんでヒーローになって、なんで強くなろうと?」
「そうだねえ」
聞かれればちょっとだけ目線を上げて、空を見るそぶり。
ちょっとの間を開けて、図面に目を通しながら答えた。
「もともとヒーローには憧れてたんだ、色んなのに手を出して、
フィクションのヒーローは結構見たし…現実の追っかけも。
でも一番の契機になったのはやっぱりアレかな」
「アレですか?」
「ああ、”Gカイザー”さ。僕がまだ少年期って言える頃にやってたんだけど、
作品に感銘打たれただけじゃなく、アクター兼俳優さんの不動さんにも会ってさ。
そこで言われた言葉が胸に響いて目指すことになったんだ」
「ほぁー…なんて言われたんです?」
「……当時、ヒーローって言えば戦闘異能があることが前提。
そんな風潮があってさ、だから思ってたんだ、自分は絶対になれないって。
それで擦り切れてた時期もあって……今思えば恥ずかしいけど。
でもそこで不動さんが僕に言ってくれたんだ、ヒーローは何かって、
”強力なパワーや異能がなくたって、何かを変えようと動ける人間”それが皆ヒーローだって。
僕も頑張ればなれるって……だから目指すことにしたんだ、そのときから」
頬笑み、思い出し、そうして苦笑し。
そして、ちょっとだけ表情が曇った。
「……そうしてそれを支えにヒーローになれた、
でもその僕の前にその言葉を言った不動さんが立ちはだかった。
僕がヒーローになろうとした理由は単純で憧れたから…
でもそうしているうちに、どんなヒーローになりたいかができた」
「恩人が、敵に……ってコトッスか」
「“街の誰もが僕を見て、ヒーローが来たんだって安心できる”。
そんなヒーローになりたい、なるのが僕の夢、
そのために強くなる、そのために不動さんを止める。
……でもそれは現実的な理由もある」
「現実的……」
「ああ、どんなに理想が高くても、どんなに夢を追っていても…
現実ってのはいつだって僕の前に立ちはだかる。
特撮のヒーローみたいにいつだってヒーローが勝って終わりじゃない、
傷だらけになることを覚悟しなきゃいけないときだって毎回そうなる。
だから……強くなるんだ、強くなって、その力をもって夢を押し通せるようにする。
どうしようもない理不尽な現実にぶつかれる強さがあれば夢に近づける…そうでしょ?」
「力、力か……そうッスよね。
オレだってこの前強くなかったから負けかけて、んで卿に助けられて…
あの時そうならなかったら、オレは終わってた。ヒーローが終わってた。
……それなりの力がないと、やりたいことを通すこともできやしない、
オレも、すっげえわかります。異能も戦闘向きじゃなかったから……」
「うん、昔はもっと弱かったから、すごい思い知ったこともある。
力がすべてじゃないけど弱いと何もできなくなるってさ…
……そういえば気になったけど、有屋君の異能って、そういえば…」
「ああ、そういえば言ってなかったッスね。
オレの異能……えーっと……」
言うと有屋は、自分の目を指す。
それから健作の目を指して、目をちょっと塞ぐそぶりを見せてみた。
「異能名、“視界ジャック”でッス。
相手の視界を”5秒”だけ奪えて、一回奪うと次まで10秒かかるッス。
その間相手の視界はブラックアウトするから…”目潰し”って言えるかも…
なんかうまく役に立たせられる場面ないんッスよね」
「いや、結構強力な異能だと思うよ?
なんてったって人間って情報のほとんどを視覚に頼ってるって言うほどだし、
戦闘中に5秒間だけでもその情報を遮断できるならものすごいアドバンテージだよ。
射程にもよるけど君の異能はサポートに立つなら相当な能力だと僕は思うよ?」
「昼は50mくらいはいけるッスかね!あと視力に左右されます!
目がなんか悪くなったり暗くなる夜とかだと性能落ちます!
……そういや健作さんの異能の方って、どんなのなんッスか?」
「結構長いなぁ……君と連携するならうまく使えば相当に…
ああ、僕の異能?ああ……僕も君と同じだよ、
”非戦闘系異能”に分類されるもので、”機械系”の異能」
そうして健作は目の前にあったバケツヘルム卿――― センチネルⅡに触れる。
すると、センチネルⅡの各部が青白く輝き始めた。それは小さな炎のようにゆらめくのだ。一見にすると幻想的にも見えるそれは、よくみれば先の戦いのダメージ部位、そこを集中的に満たしていたことがわかったろうか。
「“壊れた機械を動かす異能”、そしてどこが壊れたかがわかる異能。
壊れた部位を正常なように動かしつつ、壊れた部位を照らし出す…
そうすることでどこをどう直せばいいかが簡単にわかる異能さ、
もっぱらエンジニア向きってはよく言われたもんだけど…
名付けて――――― ”リバース・エンジニアリング”」
「えっ名前かっけえ……オレもなんか付けようかな……
”ジャスティスアイ”!!とかどうッスか!?」
「た、たぶん前例がいるんじゃないかなそういうのだと…」
「マジかぁ……」
ヒーローの能力、名前、コスチューム。
すべてにおいて他人とかぶらない、は重要だ。
一個人の個性とも言えるしアピールポイントでもある。
そしてふと、有屋は疑問を口にした。
「……でも壊れたところがわかっても、直すのは自分なんスよね?」
「そうだねえ、そこの技術は自分で身につける必要があったよ。
壊れた部位を見てどういう壊れ方してるのかも分析が必要だし…
エンジニア向けの異能ではあったけど、エンジニアの勉強はしたね」
「スッゲ……オレそういうのからっきしで…
やっぱ工学部とか出てらっしゃったり?」
「いや高卒普通科自己勉強……とまあ」
あっさりと答え、設計図に目を移す。
会話のなかでメモした項目が、いくつも描かれていた。
「……現行の技術と照らし合わせるなら、まずはパワーと出力。
とりあえず決定的な攻め手を得るところから始めるべきだよね」
「それでいいと思うッス。やっぱ敵倒すのが一番ですし」
「となると……そうだな、外部モジュールでパワーを増強、
本体はそれに併せて調整……取り付け式外骨格を主軸に…
となるとこれの名前は…」
名前、名前はとても大事である。印象のほとんどを占めるとまで言われることもあるし、なによりぱっと、伝わりやすいものであればあるほど知られやすくなる。ヒーローとして生きる者ならなおさらだ。
いくつか名前を書いていったあと、射線を書いてボツ、ボツ、ボツ。
センスのいい名前はどうにも、思いつかなかった。
「……センチネルⅡ・パワーローダー?」
「まんまッスね~」
「でしょ~」
やんややんやとあれこれ言えば、場の空気は流れていく。あとは年若い二人がなんとかしてくれるだろうと、そんなことを思っているかのような昼空は、今日はどことなく早く流れていった。
――――――――――◇
「――――じゃあ、これ調達お願いね」
「あいヨ」
時が過ぎれば高校生の有屋は帰り、宵闇近づく時間帯。ヒーロー業と平行できるのだろうかとは思いつつ、朝から来るとは言っていたのである程度免除などあるのだろう。そう想いながら健作は、何枚かの紙切れを店主ちゃんに渡した。
倉庫内に、ガサガサと紙をめくる音だけが響く。
「……ひいふうみー……しめて4ってトコかな」
「よんじゅう?」
「ヨンヒャク」
「だよなぁ」
「このヘンの部品が今手に入りにくくてネェ」
「あぁ」
言われて思い返せば、と。
「例の”怪盗”の件だっけ、海路の方で色々盗まれてるとかで」
「そそ、ンだから護衛船が必要で、って物流がねェ。
商売あがったりって言うとだけれど、まぁねェ、
異能犯罪も最近あっちこっち増えてて困っちゃうよネ」
「僕の仕事も尽きないな」
「このままほっとくと毎日残業になっちゃうカモ」
「手当がつかないのが自営業の辛いところだね」
いかんせんある意味、自分が経営者である。
思っていると、店主ちゃんが紙をポケットにしまった。
「ンじゃ、承ったヨー。一週間以内にはなんとかしてみるヨ、
まあ言うだけだけんど、早い方がいいって言うしネ?」
「ありがと、助かるよ。それとペイント用の塗料も今度頼むと思う」
「まいどありィ~……ああ、そうだそうだ。
昨日いないときに?社長さんが来てたヨー、
なんか用事あるかもだから連絡しとくといいカモ?」
「リチャード社長が? ……わかった、話してみるよ」
「アイヨ~」
物々しい護衛もついてたヨ、と付け加え、店主ちゃんはひらり踵を返す。
物理的な部品をいくつも使うヒーローだから、仕入れルートは大事だ。お金も。
ひとまず今日はこれで終わりかな、と想いながら、彼は誰も居なくなった倉庫のなか、自分の側に鎮座していたセンチネルⅡを見ながらなおも想う。まだまだ街に悪は眠り、そして街の人々の平和を乱しているのだ、と。
「……もっと強くならないと」
ラチェットスパナを握りしめ、ネジを一本締めて言う。
バケツ頭の聖騎士の行く末には、まだまだ困難が多そうだ。




