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冴えない子爵令嬢の私にドレスですか⁉︎〜義妹との格差で卑屈になっていた子爵令嬢は男爵様がつくってくれる服を着せられて隠されていた魅力が引きだされる  作者: 悠木真帆


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第3話「メイク」

『君は魅力的だ』


そう言ってテオル様は私の顔をグッと引き寄せます。


ち、近い⋯⋯


「ふむ⋯⋯」


はずかしい⋯⋯


殿方のお顔をこんな間近で拝見するなんてはじめて⋯⋯


「あ、あのあまりジロジロと⋯⋯」


「三つ編みか⋯⋯」


「⁉︎ 」


妹にも地味だと馬鹿にされた髪型。


「私なりにおしゃれだと気に入っていた髪型でしたがやはりテオル様もがっかりなされて⋯⋯」


「そのままでもいいがちょっとアレンジしょう」


「?」


テオル様は私を座らせて手鏡を持たせると『少し触れるぞ』と、

(くし)を手に私の髪をとかしはじめました。


「耳周りの髪を残しつつ、編みなおした三つ編みの位置を少し高くハーフアップに。どうだ?」


「⁉︎」


それは見違えるようでした。


おなじ三つ編みのはずなのに高さを変えただけでこれほど印象が変わるなんて。


まるでテオル様に魔法をかけられた気分。


鏡に写る私がこんなに垢抜けて見えるなんて。


「これって⁉︎ テオル様、いったい私にどんな魔法を?」


「おもしろいことを言うなラーナ。次はメイクだ。こっちを向いてくれ」


テオル様にうながされるがまま、座っている椅子をくるりと回転させて、顔をテオル様に向けると

テオル様は水をつけた手で私の頬を円を描くように撫で回しはじめました。


「い、痛い」


「はは、化粧水を馴染ませているんだ。もう少しガマンしててくれ」


「はいぃ」


「よし、今日のところはナチュラルに仕上げる。ファンデーションを塗って整えたら唇に紅を塗ってーー」


なんて滑らかな手つき。


筆がまるで私の唇の上で踊るよう。


メイドにもこんな心地よいメイクを施されたことは⋯⋯


「うん。できた」


手鏡に写る私を見て驚きました。


「これが私⋯⋯」


それはまるで別人のようでした。

しかも妹のような華やかさまで⋯⋯


「さすがはテオル。ラーナ様の美しいお顔がさらにひき立ちましたね」


「⁉︎⋯⋯」


「たいしたことはしていない。それだけラーナが魅力的なんだ」


「いかがですか? ラーナ様」


「⁉︎⋯⋯は、はずかしい⋯⋯です⋯⋯」


「おやおや、お顔がまた赤いですよ」


「ラーナ、仕上げだ。眉を整える。顔をあげてくれ」


「は、はい⋯⋯」


「ちょっとチクッとするぞ」


“ピッ”


「イタッ!」


***


フレディさんは屋敷の中を私に案内して周ってくれました。


「ここがテオルとわれわれ側近が政務を執り行なう部屋です」


ここにも端正なお顔の殿方たちが⋯⋯


「あそこで書類に目を通しているのが財務卿のオルサ・ユーク、向かいの席に座るのが軍務卿のタルク・ビルク、

その隣が外務卿のデュール・バーハムです」


「みなさん本当にテオル様がつくった制服を着ていらっしゃるのですね」


「ええ。テオルの服は独創的ですが皆、喜んで着ております」


「それにみなさんは職務に就かれている方々なのにお若いのですね」


「お気づきになられましたか。その通りでございます。ワタシ含め、ここにる者たちは全員、テオルとは王都学院時代の同級生で

いずれも実家でくすぶっていた公爵家や伯爵家の次男、三男。皆、グランドール家で実力をみせたいと集まった者たちです」


「テオル様のために⋯⋯」


「左様。人の才能を見いだすテオルの目は本物です。どうやらそれが服づくりにも生かされているようでして。

ラーナ様、聞いていたうわさと違っていたので驚いているご様子」


「え⁉︎ は、あ!はい⋯⋯」


「でしたらこれから領内を巡ったときにもっと驚かれますよ」


「もっと?」


***


『なんとすごい活気なんでしょう⋯⋯』


露店が集まる市場。


これほど大勢の方が買い物に来られている姿は実家のプレスコットの市場でも見たことがありません。


「みなさん、何を買い求めに来ていらっしゃるのですか?」


「シルクの反物です」


「シルク?」


「はい。テオルの服づくりへの興味もあって、以前から質の良かったグランドールのシルクに目をつけ、他国へ輸出したのです。

そうしたら大評判になりまして今ではこうして王都からもお買い求めに来られる貴族の方がたくさんいらっしゃるので」


「それでこんなに⋯⋯なんだか実家のプレスコット領よりも豊かそう」


「貧乏男爵家なんてのは今は昔の話。テオルが家督を継いでからは大きく飛躍しました。

そうだ。さきほどラーナ様がおつけになられた化粧水。あれも貴婦人方にご好評いただいているのですよ」


「テオル様が私の頬に塗ったお水のことですか?」


「はい。グランドールは水も豊かですから。質の良い化粧水だと評判で実は王妃様にもご愛用いただいているのですよ」


「王妃様⁉︎ そのような高貴なものを私の頬なんかに塗ってよかったのでしょうか」


「もちろん。“美を求める女性に身分などない”それがテオルの持論です。ですからテオルがデザインしたこちらの首飾りも、

私の発案で王都の市場に置いてもらったところ非常によく売れていると聞いています」


それは小さな銀の鎖。

中央にはハートのような形をしたリングが取り付けられ、そのリングに施された

さりげないほど小さい宝石はときおりキラリと光りを放つのです。


貴族の方は宝石の大きさや派手さを好みますけど、この首飾りの装飾はとても小さくてシンプル。それなのに不思議と惹かれます。


「テオルの独創的なアイディアでつくり出したものを魅力的に人に売る。それがワタシの役目です」


「テオル様もフレディ様もグランドール領には素晴らしい方たちがたくさんいらして領民の方々もさぞ、お幸せなことでしょう。

こんなに活気に満ちた民の笑顔見たことがありません。それにーー」


「いかがされましたかラーナ様。さきほどからソワソワされて」


「さきほどからみなさん。なんだか私をジロジロと見てきて落ち着きません」


「それはラーナ様がひときわお美しいからでしょう。みなさんラーナ様のお姿に惹かれているのです」


「妹ではない私にですか?」


「それはもちろん。いかがですかラーナ様。うつけ男爵テオル・グランドールの印象は?」


「はい。とても素敵な殿方です」


つづく




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