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きっと、たぶん、だれにも『映像化不可能』な、パラレルし過ぎているマッチ売りの少女(ルビ編)


 この『ルビ編』は『検索除外作品』となっております。


 それは……ある日の昼下がり……


 雪がしんしんとふる街中で、赤い外套をかぶったひとりの少女がマッチを売っておりました。



「マッチ……マッチはいりませんか……?」



 しかし、街の人たちは、少女を一瞥するだけ……マッチは一個も売れません。


 中には、わざわざそばによって、少女の持っているマッチをはたき落とす意地の悪い人もいました。



 それでも、少女はくじけずにマッチを売り続けます。



「マッチ……マッチはいりませんか……?」



 ですが、マッチは一個も売れません。

 しだいに陽は暮れ、辺りは真っ暗になってしまいました。



「どうしよう……? このままだと、お家に帰れない……」



 身体が冷え始めた少女は、身を縮こまらせてしまいます。



 そして、寒さに耐えられなくなった少女は、建物の陰に移動すると、その身を暖めるため、とうとう商品であるマッチに手をつけます。



「ちょっとだけなら……いいよね……」



 そう言いながら、マッチを擦り、火をつけた少女……すると、なんということでしょう? 目の前に、とても美味しそうなごちそうが現れたではありませんか。


 ですが……それらは、マッチの火が消えるとともに、少女の目の前から消えてしまいます。



「ああ……ちょっと待って……」



 少女は、再びマッチを擦ります。……すると、今度はとても綺麗な衣服があらわれました。



「ああ……なんて綺麗なの……?」



 再びマッチの火が消えると、少女は何かに取り憑かれたかのように何本も何本もマッチを擦り続けます。


 ……マッチは……最後の一本になりました……しかし……少女はそのマッチを躊躇わずに擦ってしまいます。



「ああ……あたたかい……あたたかい……」



 すでに虚ろになっている少女の目……最後のマッチの火に浮かびあがったのは……とても自身に満ち溢れた、ひとりの若い女性でした。



「ああ……きっと、これも幻……でも、この人は誰なんだろう……?」



 そして、最後の火が消え、マッチが地面に落ちると……若い女性は少女の目の前にから消えることなく、話しかけて来たのです。



「おい、お前。そこで何をしている?」

「え……?」



 かすれた声を出すマッチ売りの少女。その時、ようやく目の前の女性が幻ではないことに気づきます。



「え? じゃない。そこで何をしていると聞いている」

「ああ! ごめんなさい! あまりにも寒かったら、マッチに火をつけて暖まっていたんです……」



 若い女性は、足の裏で踏みつけているマッチの燃えカスを見つめると、そのまま自分の足元を見渡し、同じマッチの燃えカスをたくさん目にします。そして、最後にうなだれるように座っている少女の周辺に目をやると、やはり、たくさんのマッチの燃えカスが落ちていました。



「し……商品に手をつけるのはいけないことだってわかってたんだけど……ごめんなさい!!」

「ふん……なるほどな……」



 商品に手をつけてしまった恐怖からか、マッチ売りの少女は、見ず知らずの女性に平謝りします。しかし若い女性は、特に気にすることもなく、とんでもないことを口にしました。



「ならば、お前が使ってしまったというマッチは全て私が買ってやろう」



 その言葉にマッチ売りの少女は、とても驚いてしまいます。



「え!? そ、それは……とても嬉しいですが……」



 ですが、若い女性の言葉には、続きがありました。



「だが、それには条件がある」

「じょ……条件……?」



 若い女性は、胸の内ポケットから札束を出すと、それを少女の目の前に差し出しました。

 マッチ売りの少女は身震いしてしまいます。



「お前も、私に買われろ。それが条件だ」



 それは、マッチ売りの少女にとって、奴隷になれ、と言われているようなものでした。

 しかし、身寄りもなく、商品に手をつけてしまった少女には、他の選択肢はありませんでした。



「……わかりました」

「そうか。じゃあ、私について来てくれ」



 マッチ売りの少女は、若い女性に肩を抱かれると、建物の陰から出て行くように、静かに歩いて行きます。


 そして、広い場所に出ると、そこには一台の車が止まっていました。

 マッチ売りの少女は、若い女性と素直にその車に乗ると、車は、どこかに向かって走り去って行きます……



 車の中で、マッチ売りの少女はこう思いました。



 ああ……私はこれからどうなるのだろう……

 どうなってしまうのだろう……

 あのまま死んでしまった方がマシだったのではないか……



 しかし、疲れていたのか、マッチ売りの少女はいつの間にか、若い女性の膝の上に頭を預けるように、眠ってしまいました。



「BOSS……これで良かったのですか……」



 運転手の男性が、静かに語りかけます。



「……ああ、今の私では、正体をあかすわけにはいかないからな……」



 膝枕で気持ちよく寝ているマッチ売りの少女の頭を、優しくなでながら、穏やか口調で答える若い女性……



 実は、若い女性の正体は、この街を牛耳るBOSSであり、マッチ売りの少女の血のつながった姉でもあったのです。



「おばあさま……約束は守ったよ……」



 若い女性に引き取られたマッチ売りの少女はこの後、とても幸せに暮らしたそうです。



 ……おしまい……



 最後までお読み頂きありがとうございます。



 この後書きをスクロールしますと、星評価、広告のさらにその下に、ルビ世界とは別のもうひとつのお話『本文編』と、そのふたつのお話がパラレルし過ぎている世界『きっと、たぶん、だれにも『映像化不可能』な、パラレルし過ぎているマッチ売りの少女』のリンクを貼っておりますので、そちら方もお楽しみ頂けたら幸いです。

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同一でありながら、決して交わることはない、マッチ売りの少女の二つの物語……

マッチ売りの少女(本文世界)

「きっと、たぶん、だれにも『映像化不可能』な、パラレルし過ぎているマッチ売りの少女(本文編)」

ふたつの世界が交わるお話?

「きっと、たぶん、だれにも『映像化不可能』な、パラレルし過ぎているマッチ売りの少女」

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