01 「それ」が始まるまで
2月24日 月曜日
ヤフーやMSNのポータルサイトが提供するようなニュースではなく、ゴシップ記事や噂だらけのB級ニュースサイトがトップページの片隅で配信したニュースが、ちょっとだけSNS界隈で話題になる。
[海外]ヨルダン川西域で死者が蘇った? 葬儀参列者を襲い始めて警察出動か
このタイトルの途中にあるクエッションマークと、タイトル最後が「か」と言う問い掛けで終わっているのがいかにも胡散臭く、記事のタイトルを目にした人々は「ああ、またあの新聞社の仕掛けだな」と苦笑していた。
おおよそUFOや宇宙人などの目撃談や、雪山で遭遇した巨大猿人や事故物件に現れた幽霊などと同等に扱われた記事。
実はこの記事こそが人類の終わりの始まりを知らせる記事であり、認めたくもない真実を世に知らしめた原点であった。
それから一週間ほどの間に類似したニュースがどんどん溢れるようになる。
場所がイラクの首都バグダッドであったりレバノンのベイルートであったりとまちまちだが、共通しているのは“死者が起き上がり生者を襲う"と言った内容。
まだまだ大手ポータルサイトでは採用されない、胡散臭くて怪しい部類に入るニュースであったのだが、突如転機が現れた。
3月3日 火曜日
その日は朝からSNS界隈が騒然となり、話題性の高いキーワード……トレンドワードが“それ”一色になったのである。
とあるまとめサイトが海外から流れて来た個人撮影の動画を入手。
これをニュース記事として巨大なネット掲示板にスレッド投稿、その書き込み反応を持って帰り、まとめサイトにニュース記事として配信したのである。
【閲覧注意】中東でゾンビ無限増殖中 病院内で死体が蘇り、襲われた看護師が死亡……動画あり
絶大なアクセスを誇る、社会的影響力のあったまとめサイトなので、恐怖はあっという間に日本国内に伝播した。
そして、それに追随してテレビの情報番組が恐怖の動画を紹介し始めた事で、日本国民は外で何が起きているかを知ったのだ。
国民は何を知ったのか? ……つまり常識が通用しないと言う事を知ったのだ