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ナイト2「異世界に来ちまった」

 春時が目を覚ます。

体に痛みはない、だるくもない、そう、まるで何事もなく朝いつも通り起きるあの時のように、春時は起きた。

「あ、あれ?俺確か光にのまれて・・・」

彼が上体を起こして周りを見渡すと、目の前には大木が並んでいた。

一応光は差し込んでくるが、少し薄暗い。

「・・・不気味な所だなオイ、誰かいないのか?」

春時が立ち上がってそう呟いたが、答えてくれるものはなかった。

代わりに鳥の鳴き声が聞こえた。

「へっ、答えてくれるのは優しい鳥君だけかよ・・・って!鳥の声!?」

春時はどう見ても別世界に飛んでしまった事より、時間が動いている事に感動したようだ。

「動いてる!動いてるよ!!これなら人もいるはずだろ!!うん!絶対にいる!!」

春時はまた元気よく走り出した。

走っていると、所々に動物がいる。

派手な色のした鳥、イノシシ、そして見た事のない丸い毛玉のような生物。

「すごい!みんな動いている!!みんな動いているぞぉおお!!!」

めちゃくちゃ着眼点がずれていた。

そんな事も御構い無しに春時は走り続けていた。



ふと、春時は前方に何かを見つける。

それは、見まごう事なき人だった。横たわってはいるが動いている。

「や、やったぁあーーーー!!!人がいるぞぉオーーー!!!」

もう有頂天になり春時は何も考えず倒れている人のそばに駆け寄った。


「人だ!人ですよね!?あなた動いている人ですよね!!」

「え?」

女の子だ、歳は恐らく同い年、黒い長髪がきれいでかわいい顔立ちをしている。

「喋ってる!やっぱ動いている人なんだ!」

「え?あの?」

「君に会えてよかった!君が天使に見えるよ!!」

「ちょ、あの?え?」

既に何を言っているのかわからないが、とにかく春時は喜んだ。

「いや〜、よかったよかった!」

「・・・あ、あの、えっと・・・その」

しどろもどろしている女の子、春時もようやく正常な感覚になる。


「・・・・ここ、どこ?」


気付くのが遅すぎる。

「えっと・・・なんかすみません、俺だけで盛り上がっちゃいました」

「い、いえ!大丈夫です!」

変なフォローをする少女、だが、春時は少女を見て驚く。

白い生地の服に血がにじんでいる箇所がある。

右手には鋭い剣が握られていたが、その右腕の肩からも出血していた。

「き、君大丈夫!?ケガしているよ!?」

「あ、その事なんですが・・・あの人たちにやられて」

少女が目で相手をさす、丁度春時の後ろにいるようなので春時は振り返る。

すると棍棒を持った大の男三人がこっちを見ていた。

「・・・えっと、あちらの方達はどなたですか?」

「盗賊さんです、奇襲かけられちゃいまして見事やられました」

照れ笑いをする少女、だがそんな事をしている場合ではない。

「・・・・逃げよう、うん、そうしよう」

春時は早速少女を担いで逃げようとする。

「あ!すみません!じつは仲間が囚われてまして!」

「なに!?・・・かわいそうだが、あきらめろ」

春時は非常にも切り捨てた。

「だ!ダメです!私の大切な同級生だから!助けなきゃ!」

「・・・といってもなぁ」

そんな事をのんきに言っていたら、いつの間にか厳つい男三人が二人を囲んでいた。

「・・・あ、あああああのですね、オレは通りすがりの乞食でして・・・何も取れるものは」

「え!?まさか逃げる気ですか!?」

「あ、この女の子が欲しいなら上げます!というか僕のじゃないですしハイ!」

「ひどい!私の事会えて良かったとか!天使だとか言ってたじゃないですか!!」


「うるさい、大人しくついて来い」


大男がそう言うと、春時はものすごい勢いで首を縦に振った。

「・・・かっこ悪いですねあなた」

「う、うるさい、オレは一般人だぞ?戦えるわけないだろ!」

二人は拘束されながら盗賊に連れて行かれた。



 森の奥へ進んでいく。

すると、いかにも盗賊のアジトのような洞窟が見えてきた。

案の定、その大きな穴の中へ連れて行かれる二人。

「どうやら盗賊のアジトみたいだな」

「そうですね、ミーファもいるといいんだけど」

「ミーファ?」

「同級生の名前です」

二人がそんな会話をしている間にも、どんどん奥へ進んでいく盗賊。

そして、小さな明かりの漏れる穴を越えると、そこはかなり広い空洞になっていた。

「おい、また二人ほど奴隷になりそうなガキを捕まえたぜ」

「本当か?よくやったな、そこの牢屋に入れておけ」

むさくるしい男ばかりのアジトは嫌悪感で見るのも嫌になった。

だが牢屋とやらはその男ばかりの場所から十分よく見える場所にあった。

「オラ!入ってろ!」

鉄格子が開いた瞬間、中へ強引に突き飛ばされた。

お陰で春時は顔面を地面にぶつけ、少女はお尻を地面にぶつけた。

「いでぇええ!!!」

「いた〜い!」

二人で仲良く痛みにもだえている所に、割ってはいる者がいた。

「シェナ!何で戻ってきたの!?」

また女の子の声がする。

「え、えっと・・・またドジしちゃって・・・エへへ」

情けない返答をする少女、そして溜め息をするもう一人の少女。

「全く・・・まさかシェナ、そこの人を巻き込んだんじゃないでしょうね?」

そう言って少女は春時を指差した。

「え、えっと・・・なんかいきなり出てきて、一緒に捕まっちゃった」

「バカ!一般人を逃がさないでどうするのよ!それでも見習い騎士!?」

「ご、ごめん」

「本当に!私がわざわざ逃がしたのに!あっさり捕まった上に無関係な人巻き込むなんて!」

「ほ、本当、ごめん」

しゅんとする少女、それを見て春時は助け舟を出す。

「いや、悪いのは俺だよ、状況もよく見ないで軽はずみな行動をしたから、まぁまさか盗賊がいるとは思わなかったが・・・それに、あんたの事をすっごく心配していたし、そこまで悪い事はしてないよこの子は」

春時がそう言うと少女は涙目になる。

「あ、ありがとうございます」

「い、いや、いいって、お礼を言われるほどじゃあ」

「で?あんた誰?」

そう言って、もう一人の少女が春時と目を合わせる。

その少女は銀髪のショートカットで瞳の色が金色できれいな目だった。

「俺の名前は水戸みと春時はるとき、17歳だ」

「ミト?ハルトキ?変わった名前ね?」

銀髪の少女が浮かない顔でそう言った。

「私はミーファ・クロア、見習い騎士でセイント・スター学園の生徒」

「わ、私はシェアナイロアット・アルファンダ、シェナと呼んでください。ミーファと同じ見習い騎士でセイントスター学園の生徒です」

一応自己紹介がすんだ所で、ミーファが聞いてきた。

「あなたは何の職業をしているの?」

「え?・・・高校生です」

「なにそれ?・・・何しているところなの?」

「べ、勉強を」

「だから何を?」

「が、学問というべきかな?」

「あぁ、あなた見習い賢者なの?」

「いや・・・賢者ほど勉強はしてないっすよ」

「じゃあなに?」

「・・・・一般人です」

「町民?」

「うん、そうそう」

「農民?商人?地主?役人?どれよ?」

「・・・・どれでしょう?」

そう言うと、ミーファはものすごい怪しい目で春時を見た。

「なに?あんた頭おかしいの?」

「失礼にも程があるだろ?・・・まぁ、話を聞いてくれ」

春時は簡単に異世界から来た事を話した。


「どうだ?信じてくれるか?」

「いや、全然」

見事春時は撃沈した。

「な、なんだよ、少しは信じてくれよ」

「異世界から来ましたって言って誰がすぐに信じるのよ」

「そ、そりゃそうだが」

「・・・で、でも、魔法使いがそういうことをしたのかもしれないよ?」

シェナがそう言うと、春時は驚いた声を上げる。

「魔法使いがいるのか?・・・ハァ〜、騎士に魔法使いに賢者とか・・・もはやゲームの世界だな」

「はぁ?ゲーム?冗談じゃない、これは現実よ!・・・全く、シェナは本当厄介ごとを持ってくるのだけは抜かりないわねぇ」

「オレは厄介ごとかよ」

「・・・それより、脱出の方法を考えようよぉ」

シェナの最もな意見に二人は従った。


「問題は敵の多さね、私は大体10人くらいなら倒せるけど、二人を護りながらだと上手く戦えないわ」

「なんだよ〜、見習いでも騎士なんだろ?こんな盗賊達パパッとやっつけちゃってくれよ」

「一人も倒せないシェナはどうなのよ?」

春時は黙ってシェナを見ない様にした。

「え?何で見てくれないの?春時君?」

「とにかく・・・あんたはどうなの?春時、意外と強かったりして」

既に二人が馴れ馴れしく名前で呼んでいたが、春時はかわいい女の子という理由であっさり許した。

「オレの力か?・・・残念だが期待に応えられるほど強くはない、たぶんこの鉄格子を殴ったらオレの手が砕け散ると思う」

そう言いながらおもしろ半分に春時は鉄格子に拳をぶつけた。


「バッコン!!」


鉄格子が思いっきり外れる。

しかも春時が殴った箇所の鉄が曲がっていた。

そのうえ、春時には全く痛みがない。

「・・・あ、あれ?」

慌てる春時であった。




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