ナイト1「時が止まりやがった」
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騎士、それは日本でいう武士。
主に忠誠を誓い、守りたいものを護る戦士。
己の力と技術と精神をかけて敵を倒す者達。
中世のヨーロッパに多く存在していた。
「・・・このキャラ使えねぇな」
そう言ったのは、自称ネトゲーの神、水戸春時、高校2年。
幼少の頃よりネットゲームに熱中、プレステやwiiには一切興味を示さないでネットゲームに熱中したためキャラ育成型RPGでは既に213レベル、クリアミッション数はネット内でブッちぎりの一位、新記録も今だなお更新中というネトゲーオタクである。
彼は今新しいネットオンラインRPGゲームの『神の新世界』をプレイしていた。
「パワーとスキルが偏っておらず、尚且つ速い攻撃とコントロールのよさで選んだつもりだが・・・この騎士は失敗だな」
そう言って春時はメニュー画面を出してキャラを削除した。
「やっぱ近距離キャラは俺には合わんな・・・やはり俺の最も得意なキャラで行くしかないかな、頼んだぜ!魔女っ娘!!」
春時はそう言ってキャラクター作成で魔法使いを選んだ。
「遠距離からの攻撃は最も安全であり!弓矢や銃なんかとは比べ物にならない攻撃力!更に特殊スキルとして瞬間移動!透明化!防御力や速さなどを上げるステータスアップ!!そして回復魔法があれば無敵同然!!しかも剣を振り回す野蛮な女の子キャラより断然!かわいくて!可憐で!清楚なのだぁああ!!」
「うっせんだよバカ兄貴がぁぁああああ!!!!」
隣で勉強をしていた小学生5年生の弟にPCを蹴られた。
「だぁああ!!!パソコンがフリーズだと!?蘇れマイマジシャンガール!!」
「いっそのこと貴様が二度と目覚めれないように葬ってやろうか?兄貴?」
かわいい顔して殺意剥き出しの弟に、春時は笑顔で謝罪した。
「あぁ〜あ、今回のゲームはかなりかわいいキャラクターだったからぜひともクリアしたかったのに」
「兄貴はネトゲ以外にする事は無いのか?」
「俺にネトゲ以外何ができると?」
「心臓を止めて倒れている事」
「死んでいるよね?確実に死んでいるよね?」
弟の毒舌で気分が下がった春時は外出をする事にした。
「母さんは6時に帰って来るんだよな?それまでには帰るよ」
「いってらっしゃい、お菓子買ってきてね〜」
弟の頼みに返事をして、春時は玄関のドアを開けて外へ出た。
外は寒い、そりゃ冬なのだから寒い。
北風が体にぶつかるのを感じながら、春時は道を歩いていた。
≪ネットゲーム以外にする事かぁ、ないな≫
勉強だって落ちこぼれ寸前であり、
スポーツでは力でできるものは得意だがスピードもセンスもないのでプロレスごっこでしか目立たない。
他に得意な事があるわけでもない、超能力があるわけでもない、魔法が使えるわけでもない。
「・・・やっぱ俺にはネトゲしかないな、うん」
彼は自分にそう思いこませて納得する事にした。
コンビニに入る。
適当なお菓子と飲み物を手に取り、レジへ行く。
店員はアルバイトの若い女性、笑顔で会計をする。
「560円になります」
「あ、はい」
彼は財布を取り出し、千円札と五十円玉を出した、後は十円玉だけ。
他の客はまだ後ろに並んでいない、彼は別段慌てることなく十円を出そうとしたが、たった一枚の十円玉が見つからない。
「ちっ、ないか・・・百円玉に変えよう」
彼はそう思い、百円玉を手に取った。
しかし、誤って手から滑り落ちる。
「だぁ!・・・ちょっとすいません」
彼はそう言って下に落ちた百円玉を拾うためかがんだ。
すると今度は手に持っていた財布を逆さにしてしまい、小銭がどんどん落ちる。
「あわわ・・・ツイてないなぁ」
春時がようやく小銭を全部拾って立ち上がる。
「すみません、だいぶ時間かかっちゃいましたね」
照れ隠しにそう言うが、店員からの返事はない。
「・・・あれ?」
目の前に店員を見る、笑顔でじっと立っている。
「・・・あの〜?」
≪早くしないとお客さんが並んじゃうだろ?≫
そう思った春時、つい気になって後ろを振り返る。
「・・・・え?」
お菓子の棚で突っ立ったままの女子高生。
おにぎりを手に持って振り返ろうとしている所で止まっているサラリーマン。
極めつけは中学生ほどの少女がこのコンビ二へ入店しようと自動ドアをくぐろうとしていた、だが、体の半分しか入っていない、なのに止まっているのだ。
自動ドアすら動かない始末、その光景に春時は焦り始めた。
「お、おい、どうなっているんだよ?」
春時は震えた声で外に出ようとした。
中学生の女の子は目を開けたまま、真っ直ぐ前を見ていた。
瞬きすらしない、春時はその横を慎重に通って外へ出た。
「・・・風が、吹いてない」
それだけではなかった。
道路で止まることなく動いているはずの車は全て止まっており、
人ごみが常に移動し続けている光景は、人がピクリとも動いていない異様な光景になっていた。
「・・・な、なぁ、おい!誰かいねぇのか!?」
春時は涙目になりながら走った。
家の前に着く。
「な、夏生は、大丈夫だよな?」
弟の名前を言いながら、彼はドアを開けて中に入る。
「夏生!夏生!返事してくれ!」
靴を慌てて脱いで家に上がるなり、彼は階段を駆け上がって二階の自分達の部屋に走った。
「夏生!」
部屋では、弟が相変わらず机に向かって勉強している姿があった。
だが、そのシャーペンは、動いてなかった。
「夏生!どうしたんだよ!」
弟の肩に手を置く春時、だが夏生は一切動かない。
「・・・・嘘だろ?」
春時は恐怖のあまり叫びながらまた外へ出た。
どれくらい走っただろう。
彼は息を切らしながらとぼとぼ歩いていた。
「・・・くそ!どうすりゃいいんだ!?」
自分以外の人間、それどころか機械すら、動いてなかった。
つまり、彼以外の時間の流れが止まったのである。
「どうなるんだよ俺・・・このまま、一生一人なのか?」
孤独という名の不安に駆られた彼は、止まることなく歩いていた。
≪人も、動物も、機械すら動いていない所を見ると、これは俺以外の時間が止まった、と考えるべきだな・・・問題はなぜそんな事が起きたのか、そもそもどうやってこの状態になっているのか、そして・・・どうすればこの状態が解けるのか・・・≫
春時は歩いていたお陰で少し冷静になったので頭の中を整理していた。
だが起きた出来事があまりにも現実離れしすぎている。
いくら考えてもヒントらしきものすら思い浮かばなかった。
「だぁあ!!!無理!考えても解決しねぇよ!くそ!誰かいないのかぁああ!!!」
彼の叫び声は虚しく響いただけだった。
「・・・・寂しいぜ・・」
春時は一人でそう呟いた。
ふと、何かを感じた。
何を感じたといわれると、悪い予感がしたとしか言えない、そんな何かを感じた春時。
彼は何気なく後ろを振り返る。
すると、特に眩しくない光の球体を見つけた。
「・・・な、なんだ?」
彼がそう言うと、光の球体はどんどん大きくなっていった。
「なんだ?どんどん大きく・・・違う!近づいてきているんだ!?」
春時は危険を感じて後ずさりをする、だが、光の球体は止まることなく近づいてきた。
「やべ!飲み込まれる!?」
球体が足に触れた、痛みなどはしない、だが足の光に入っている部分の感覚が無くなっていた、どんどん光は春時を飲み込んでいく、そして、とうとう全てを飲み込んだ。
次の瞬間、春時が消えて光も消えた。
動いてなかった時間が、動き出した。
人々が動き出した、機械も動き出した。
全員が、まさか止まっていたなどという事に気付いていない。
そして、誰も春時の事を、覚えていなかった。
彼の存在は消えた。
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