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俺と死神と人助け  作者: ドラフル
決意
3/3

雲一つない空

いつもの朝を向かえ、いつもの朝食を食べ、いつもの制服を着て、いつもの身支度を済まして、いつもの学校に向かう。

こうして俺の"いつもの"生活が始まる。



玄関を勢いよく飛び出た俺は、家のすぐ目の前にある下り坂を自転車で颯爽と走り抜ける。

昨日までは風が冷たくて手や頬が痛かったけど今日は暖かい。吐く息も白くない。



坂を下って右に曲がると両サイドに桜の木が並んだ並木道。この並木道は俺に季節を知らせてくれる。



高校の入学式と同じ胸の高鳴り。今日から俺は二年生。五感から受け取れる情報から色々な思いをはせて俺は通学路を自転車で走り抜ける。



今日から"いつもの"とは違う生活が始まる。それだけで胸がいっぱいだった。


天気は晴れ、雲一つない。





キーンコーンカーンコーン…

キーンコーンカーンコーン…


街全体に学校のチャイムが鳴り響く。学校に近づいてきた。自宅から自転車で約15分かけて校門に到着した。

「私立松生第二高等学校(ワタクシリツマツバエダイニコウトウガッコウ)」

略して「松二高」。



古びた校門に学校の名が刻まれた古びた表札。松二高は地元で有名なエリート校である。今思うとこんな俺がよく受かったもんだ。



ちなみに、この高校を選んだ理由は将来のためではない。中学の頃からずっと好きだった女の子の追っかけでこの高校を選んだ。それだけの理由で有名なエリート校に向けて勉強を始めた。



男とはもっとも単純な生き物だ。



ちなみにその子の名前は「白石美奈子(シライシミナコ)

ショートで身長高くてスタイル抜群。男っぽい性格だけど、優しい。

中学の頃からライバルはたくさんいた。



今日は俺の人生で大事な大事な運命の日。

そう、クラス替えである。



「っお、今日クラス替えじゃん!」

「いいなぁー、お前のクラス面白い奴ばっか」

「げ、俺またあいつと同じクラスかぁ…」

「ドンマーイ」



全校生徒が生徒用玄関前の掲示板に密集している。みんな、クラス替え表に釘付けだ。

歓喜や悲哀の混ざりあう中で俺は自分のクラスに美奈子さんがいるかどうか探す。



い、いない…俺のクラスに…美奈子さんが…



再び学籍番号と美奈子さんの名前を探す。しかし、どこをどう探しても見つからない。

美奈子さんは隣のクラスだった…。



クラス替え表通りにそれぞれ生徒が自分の教室に向かっていく。蟻が獲物に集るかのようにうずめく中で俺はしばらく佇んだ。



キーンコーンカーンコーン…



気がついたらもう本鈴の鳴るような時間になっていた。素早く自分の靴箱に向かい、革靴を上履きに履き替えた。



ゆっくりとした足取りで俺は始業式の行われている体育館に向かう。

階段を一段一段登っていくと、ようやく体育館のあるフロアにたどり着いた。まっすぐに伸びる長い廊下。

俺のいる場所から体育館までは40メートル近くある。



「高校二年生になってそうそう何をしているんだ!貴様は!!」



よーく目を凝らすと体育館の入り口で一人の大男が立ちはだかっていた。

多分、怒鳴り声の持ち主はあいつだろう。

校内一の面倒くさい教師として学校中で知れ渡っていて、俺の新しい担任の「瀬山十蔵(セヤマジュウゾウ)

去年、俺はあいつに好かれなかったせいで単位を落とされた。



「去年のだらけ具合といい…貴様は学校に何しに来ているのだ!!」



俺は恐る恐る体育館前まで重い足取りで向かった。



何十分経っただろうか。瀬山の話は中身が空っぽのくせにやけに長い。

俺は「はい」と「すみません 」を話の区切り区切りにタイミングを見計らって連呼する。

まるで、リズムゲームをやっているみたいだ。曲の終わりは見えないけれど。



そろそろ限界がくる頃だった。

体育館の中から一人出てきて、瀬山に話かけた。



「お話し中にすみません。次は生活指導のお話しです。瀬山先生、壇上にお上がりください。」



「あぁ、そうか。すまんな、わざわざ呼びに来てもらって…。とにかく!貴様は始業式が終わるまでそこに立っておれ!」



瀬山は俺にそう怒鳴り付けるとその場を後にした。

さっきまでダルくて重かった体が一気に軽くなった。というのも、体育館から出てきて瀬山先生を呼びに来たのは美奈子さんだった。



「あなた、霧島光星(キリシマコウセイ)くん?」

美奈子さんは俺の方を向き、唐突に尋ねてきた。



「あぁ…そうだけど?」

自分の名前を覚えててくれてたんだ。嬉しいなぁ。



「少しお話しがあるの。今日の放課後空いてないかしら?」



「っえぇぇ?!?!」



驚きを隠せなかった。なぜなら、美奈子さんから呼び出されるなんて思いもしなかったのだから。



「そうよね、嫌よね…。」



「いやいや、今日の放課後めちゃくちゃ暇!大丈夫だよ!唐突で驚いただけ!」



「なら、良かった!それじゃあ、15時に体育館下の中央広場に落ち合いましょう。待ってるからね。」



そう言い残すと美奈子さんは小走りで体育館の中に入っていた。



「キレイだなぁ……」



俺は余韻に浸りながら、始業式が終わるまで立ち尽くしていた。

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