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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
第三部、アルゲナム解放編

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第四八〇話、森の道の交戦


『中隊長殿、後方の見張りから伝令です! ウェントゥス軍の竜騎兵がこちらを追尾中とのこと!』


 その報告に、レリエンディール近衛軍第二偵察大隊第三中隊の中隊長であるコメータ・アラテッラ中尉はハッと息を呑んだ。


『追っ手がついたか?』


 思ったより早い。騒動が起きて索敵されるまでまだ時間がかかると思いきや、すでに追撃してくるという。


『早過ぎるな』

『敵は騎兵らしいですからな』


 下士官のグリン曹長が言った。


『その足であれば……いや、それでも早過ぎますな』


 たまたまこちら方面に出撃した部隊があって、途中にエアリアからの通報があって向かってきたというのであれば、この迅速な動きも不可能ではないのか。


『――いや、エアリアでの騒動関係なく、こちらが怪しい集団と見て向かってきたのかもしれない』

『つまり……どういうことです?』

『こちらの偵察員がバレたことと関係がないかもしれんということだ』


 アラテッラは振り返った。


『迎え撃つ! 待ち伏せだ』


 移動を取りやめ、周囲の森に潜んで追ってくる敵を倒す。グリン曹長は口を開いた。


『飛んで逃げるという手もありますが?』

『敵にこちらの正体を知らせるつもりか?』


 アラテッラはピシャリと言い放った。

 エアリアに潜入させた諜報員が、シェイプシフターであることが敵に発覚したかは不明だ。その段階で、こちらがそれを敵に教えてやるようなことをするのは早計と言える。


『ですが、我々は偵察が任務であります』


 グリンはさらに言った。


『偵察は、生還し情報を持ち帰ることが最重要ではないのですか?』

『言われずとも承知している』


 コルドマリン人の指揮官は返した。


『だがウェントゥス兵の正体について確認するのも偵察に含まれている。追っ手でそれを確かめてやろうというのだ』


 発見された時点で、偵察部隊としてはよろしくはない。だが転んでもただでは起きない。ピンチをチャンスに変えるのだ。


『だが曹長の進言ももっともだ。最悪の場合を想定して、少人数の伝令を出そう』


 中隊は散開しつつ木や地面の高低差を利用して隠れる。新装備である魔石長銃を構え、森の中の道を見張る。


 ――敵は騎兵。


 アラテッラは頭の中で、迎撃手順を確認する。


 ――道の真ん中に障害物を置いて、敵の足を止めさせるか……? いや、今から準備して間に合うのか?


 敵は迫っているという。その足も速い。作業をしているところにウェントゥス軍が現れては待ち伏せを教えてやるようなものだ。


 ――いや、竜騎兵と言っていたな。なら多少の障害物では飛び越えられるか……。


 つまり足止めのための障害物も意味をなさない可能性が高い。竜騎兵が高速で抜けると、正面からではない限り、せっかくの魔石銃も当てるのが難しい。


 ――くそ……。


 待っているとあれやこれやと考えと共に後悔が浮かぶ。果たして自分の判断は正しかったのか。経験豊富な下士官の言うとおり、正体を露見させることになっても味方勢力圏に逃げるのがよかったのではないか。

 いやしかし、もしこちらの手のうちがバレていなければ、敢えて教えてやることのリスクもまた大きい。


 モヤモヤとするアラテッラ。その時、後ろでガサガサと枝が揺れた。

 見れば中隊に所属する兵だった。全力で駆けてきたような雰囲気で、もしかしたら前方偵察している分隊の伝令ではないか。


『中尉殿! 前衛偵察隊が、敵と遭遇しました! 現在、交戦中です!』

『……!』


 ウェントゥス軍がこちらの退避進路上に進出していた。それはもしこちらが後方の敵に気づいていなかった場合、挟撃されていたということだ。

 いや――


『今も包囲されているようなものか……』

『中尉殿』


 グリンが近くにやってきた。


『もうじき、後ろの敵が追いついてきます!』

『……まずは、こいつらから片付けよう』


 アラテッラは潜伏する部隊に合図した。耳に、疾走する竜騎兵の足音が聞こえてきた。確かに十数頭以上の騎兵が森の道を駆けてくる。


『狙え――!』


 アラテッラは地面に貼り付くようにうつ伏せになると、魔石長銃を構えた。敵の騎兵突撃は森の木々が妨害してくれる。視認しづらいように小さく伏せて、必殺の一撃を撃ち込む。

 奇襲の一撃で、どれだけ倒せるかが鍵だ。並みの兵隊ならば、上手くすれば潰乱する。


 緊張が体を伝う。無意識の反応では仕方がない。二足小型竜に騎乗したウェントゥス騎兵が現れる。

 鬼を連想させる兜の奥の素顔はわからない。わかっているのはこいつらが百戦錬磨の強者で、並みの兵隊ではないということだ。

 まるで機械の兵隊のような――とはアラテッラの感想。これで通じるのはこの世界では何人もいないだろう。


 高速で森の道を爆走するコンプトゥス騎兵。それらがアラテッラの中隊の近くに迫り――引き金を引いた。

 魔石長銃が火を噴く。赤い魔法弾がウェントゥス騎兵とコンプトゥスに飛び、パッと撃ち抜いた。


 先頭の五騎が倒れた。奇襲は成功――したかに見えたが、ウェントゥス騎兵は驚いて足を止めるどころか、そのまま直進した。

 まるで不意打ちなどなかったかのように。


 実際は、先頭が倒されたのは後続の騎兵にもわかった。コンプトゥスはそれら倒れた味方をジャンプで飛び越えて、なお後続がつっかえないようにさらに前へと駆けるのだった。

 魔人兵らはさらに長銃で追い打ちをかける。


『騎兵は急に止まらない』


 アラテッラもまた魔石長銃の狙いをつけて撃つ。


『本当だったんだな』


 まったく怯んだ様子もないウェントゥス軍騎兵。それらは待ち伏せ地点を通過すると、ゆっくりと旋回を始め、森に向かって突撃を敢行した。

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