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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
第三部、アルゲナム解放編

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第四七四話、アジトに合流。ゲリラたちの問題は――


 オルセン村に現れたカラドクラン人の部隊を片付けた慧太(けいた)。せいぜい撃退して、追撃を諦めさせられれば、と考えていたが、全滅させてしまい、これには苦笑するしかなかった。

 先行していたサターナたちとと合流すれば――


「やっぱりね」


 彼女に呆れ顔をされてしまった。アウロラからは。


「残りを全部やっちまったか。さすがだな、将軍閣下」

「無事に合流できてよかったです」


 キアハからは素直に喜ばれた。先行させていた彼女たちのグループも、怪我なく敵を蹴散らせたようだった。

 無事を確認し、念のため追っ手がいないか確認した上で、ゲリラたちとアジトへ向かったセラの後を追う。

 その途中、山林でアルゲナム・ゲリラが待機していた。


「無事でしたか! セラフィナ様のお仲間の方々ですね!」


 若いの戦士が二人。戦士というよりは、農民の子が武装しているという雰囲気だったが。傭兵として戦ってきた慧太からすると、この若いゲリラは生粋の戦士とは思えなかった。


「オルセン村では助けられました! 改めて礼を言わせてください!」


 何とも純朴なことだと、慧太は思った。キアハはニコニコしているが、サターナとアウロラは顔を見合わせ苦笑している。


「子供だな」

「子供ね」


 ゲリラといっても少年兵。志は理解できなくもないが、子供まで戦場に引っ張り出しているというのは、どうにも末期感が拭えない。

 慧太たちは、ゲリラの案内で、彼らのアジトへ移動した。到着すると、先に戻っていたゲリラたちから歓待された。


「よくぞ、来てくれた」

「オルセン村では世話になった」

「もう敵をやっつけたって――」


 中には酒を振る舞う者もいるほどだった。仲間たちと歓迎された慧太だが、そこへセラがやってきた。


「ケイタ、おかえりなさい」

「……ただいま、でいいのかな?」


 家や自軍の陣地ではないのに、ただいまは如何なものか。そもそも、ここには初めてきたのである。


 ――セラは、仲間たちと会って、家に帰った気分になっているのかもしれないな。


 懐かしき故郷、懐かしき我が家の雰囲気を感じ取っているのかもしれない。ここはアルゲナム。彼女のいた国だ。


「怪我はない?」

「見ての通りさ。元気だよ」


 元気すぎて、敵を足止めするつもりが、全滅させてしまった。


「来てくれた早々で悪いのだけれど、ちょっといいかな?」

「もちろん。ゲリラの話はオレも聞きたい」


 情報収集、アルゲナム・ゲリラとの接触。現状と、そしてこれからのこと。春の大攻勢に向けて、話し合う必要がある。



  ・  ・  ・



「まずは、我らの姫をお守りいただき、心より感謝致します」


アルゲナム・ゲリラを指揮するアルゲナム近衛隊長、メイア・マグノーリアは、そういうと、慧太に深々と頭を下げた。


「オルセン村では、きちんとお礼を言う間もなく失礼致しました」


 とても真面目そうな女性だった。凜としたその言動。元隊長というだけであって、騎士そのものといった雰囲気をまとっていた。……正直、慧太からすると、やや苦手な部類かもしれない。


「あー、まあ、お気になさらずに」


 言葉遣いに気をつけないと、と身構えてしまうタイプである。日本語であればどうとでもなるのだが、この世界での現地語となると、どうにも上手くいかない。

 なお、この堅苦しい問答は五分くらい続いた。いかに慧太がセラの困難な旅路を助けたか、その恩はとても大きい云々。

 確かに、レリエンディールの軍勢とぶつかったり、その旅路は楽なものでなかった。だからメイアやアルゲナム・ゲリラが、感謝を言葉にするのも無理らしからぬことだった。

 そろそろお礼の言葉が不毛な繰り返しになってきたところ、セラが話題を変えた。つまり、今後の話だ。


「メイアから聞いたのだけど、ここのゲリラ、物資が底を尽きそうなんだそうです」

「……」


 隠れ家的な洞窟アジトの内装は、お世辞にも贅沢さとはほど遠い。半分倉庫のように木箱や生活に必要となる物資が複数あったものの、リッケンシルトの野営陣地でも、ここの倍以上の物があった。

 家財道具も最小限。拠点なのに、野営のそれとそれほど変わらない程度となれば、不足しているものも多かろうことは想像できる。


「特に不足しているのは食料です」


 メイアは事務的に告げた。


「じきに春がくるとはいえ、まだしばらく冬です。このままでは春まで保ちません。何とか生き長らえたとして、姫様のお話にあった春の大攻勢……その頃に立ち上がれる者が残っているかどうか……」


「早急に、物資が必要です」


 セラは、慧太を見た。


「後方から補給を得るか、敵から奪うか。手としてはその二つだと思います」

「……ウェントゥス軍から食料や物資の手配をしよう」


 慧太は、先に発言した。セラの思考からすると、余所に迷惑をかけない手――つまりレリエンディール軍からの物資強奪を推してくると思った。


 同時にアルゲナムの民の救援をしようという感情もあるに違いない。オルセン村で派手にやってしまったから、ここで大きな襲撃を続けてしまうと、アルゲナムに展開する第六軍が、春を前に動き出す可能性が強くなる。


 配置が変わるのは仕方ないにしろ、聖都までの侵攻作戦を立てている現状、その侵攻ルート上に、想定以上の敵が陣取られても困るのだ。


 春の大攻勢は一気呵成に、聖都まで攻めあがる予定だから、障害物が増えるのは避けたい。アルゲナム・ゲリラには、少し自重してもらいたいところである。


「敵に気づかれないよう、補給ルートの開拓と作戦を立てないといけないな」


 慧太は思案するのだった。

今月は時間がとれませんでした。次話は7月3日を予定しております(他の仕事の都合で変更の可能性あり)。

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