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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
第三部、アルゲナム解放編

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第四七一話、オルセン村撤退戦


「敵が現れた!」


 慧太(けいた)は、オルセン村にいる仲間たちに告げた。上空を周回していたシェイプシフター鷹が、村の街道を押さえて、近づきつつあるのを発見した。

 すでに道は塞がれており、半分包囲される形だ。もっとも、村の囲いを越えれば、そちらから脱出することも可能ではある。だがそれをしたところで、街道から迫っていた敵が塀に沿って移動し追撃してくるだけであるが。


「ケイタさん!」


 キアハが、適当に休んでいた家から飛び出してきた。


「敵ですか!? どれくらい?」

「村の出入り口にそれぞれ百人前後!」

「多い!」

「あたしの出番か!」


 アウロラが、魔鎧機グラス・ラファルを呼び出す。慧太は中央広場の真ん中で、声を張り上げた。


「町の北側に部隊を集めろ。一点突破で、村から脱出する!」

「立てこもらないの?」


 サターナが民家の屋根づたいに跳んできて、慧太の近くに着地した。


「アルゲナムゲリラと一般人が逃げられる時間をもう少し稼ぐ必要がなくて?」


 ゲリラはともかく、オルセン村からの避難民の足は遅い。アルゲナムゲリラのアジトへ避難するため、すでに村から離れているが、魔人たちが本気で追跡にかかれば、まだ危険域だと思われる。

 慧太たちが、セラと分かれて、オルセン村にいたのも、敵の追っ手が現れた場合に対処するためだった。


「さすがに、二個歩兵中隊規模に挟撃されるのはまずい」


 いくら村の壁や建物を防御に使えるとはいえ、所詮は偵察小隊程度である慧太たちである。約200の敵に挟み撃ちでは、手が足りない。


「イーグルの報告だと、敵はカラドクラン系だという。オルセン村の外周の壁なんて、あっという間に突破してくる」

「つまり、四方八方から入られるってわけね。そりゃ手が足りないわ」


 サターナも理解した。街道に繋がっている、村の出入り口を固めればいいという問題ではないというわけだ。


「でも、一点突破で抜けても、後ろの敵が追い上げてくるわよ? 足止めが必要じゃない?」

「アウロラの魔鎧機で、北側の敵中隊を正面から破砕。キアハら主力で敵を掃討させて、そのまま脱出。南からくる敵中隊は、村の中でゲリラ戦を仕掛けて、その足を止めさせる」


 慧太が策を説明すれば、サターナは相好を崩した。


「いいわ。ゲリラ分隊に志願してあげる」

「いいや、君は、主力の方でオレの代わりにあいつらの面倒を見てやってくれ」

「アナタが残るの?」


 サターナは顔をしかめる。慧太は涼しい顔だ。


「部隊を指揮できるのは、オレと君だけだ。あいつらを上手くセラたちと合流させてやってくれ」

「それなら、別にワタシじゃなくても、アナタが主力と行けばいいじゃない」

「君を殿軍(しんがり)にすると、全滅させるまで残って帰ってこないでしょうが」


 慧太はサターナの背中を押して、主力へ追いやる。


「その代わり、北側の連中は全滅させてほしい。追っ手がつくと面倒だからな」

「もう……。アナタもほどほどにしておきなさいよ、まったく!」


 文句を言いながらサターナは、アウロラたち主力の方に回った。慧太のもとには、リアナとウェントゥス偵察兵が四人、集まった。


「それじゃあ、オレたちは南からくる中隊に嫌がらせをする」



  ・  ・  ・



 カラドクラン・リーダーが率いる戦闘中隊は、オルセン村が見える位置につくと、一度停止し、その場に伏せた。

 村の入り口にアルゲナムゲリラが罠を張っている可能性に備え、まず様子見――斥候を送る。


 前傾するように走るトカゲ系魔人歩兵が五人。彼らは小走りに、しかし攻撃に備えて注意しながら村へ近づく。

 それを注視するカラドクラン・リーダー。村を占領したアルゲナムゲリラの規模、そしてどう村を守るつもりなのか。それを慎重に探ろうとしている。

 そして、斥候の一人が脳天に矢を喰らい、倒れた。見守っていたカラドクラン兵らがその場で動いたか、草をこする音があちこちでしたが、立ち上がる者はいなかった。


『狙撃だ……!』

『敵は――?』

『屋根の上!』


 またも放たれた矢が、さらに一人の斥候を射殺した。最初の者はともかく、攻撃があって気をつけていたはず者まで当てるとは、恐るべき腕前だ。

 カラドクラン・リーダーは、村の民家の屋根の上に人影があるのを捉えた。三射目。斥候の三人目が足を撃ち抜かれ、その場に倒れる。


『敵は一人!』


 カラドクラン・リーダーは立ち上がった。


『全員、突撃に移れぇ!』


 指揮官の号令を受けて、伏せていたカラドクラン兵たちが一斉に立ち上がり、村へと駆けた。およそ百人が、一斉に動くさまは、浜辺に打ち寄せる波のようだった。

 その間にも倒れた斥候を助けようと駆けつけた四人目が背中を撃たれた。


 だが、遠距離から狙撃できる腕前のゲリラは一人だけなのだろう。カラドクラン・リーダーは考える。そして本隊が村に辿り着くまで、数名は殺されるだろうが、残りは外壁に取りつくことができる。

 数の差で突撃し、あの弓使いを殺してやる。カラドクラン人は、短時間なら壁に張り付き、民家の二階だろうが屋根の上だろうが、あっという間によじ登ることができるのだ。


 風を切る音がした。そして突然、爆発が起きた。突撃中のカラドクラン兵が三、四人まとめて吹き飛んだ。


 ――矢のように見えたが……?


 カラドクラン・リーダーは、敵が飛ばしてきた矢に爆発物がついていたのでは、と推測した。

 数秒と経たず、次の矢が地面に刺さり爆発。またもカラドクラン兵が吹っ飛んだ。

 正確に狙わずに済むことで、射撃ペースが上がったようだった。犠牲は数名とふんでいたが、十数名の間違いだったかもしれない。


 カラドクラン・リーダーは思ったが、もはや後の祭りだ。ここで下手に止まったり後退しようとすれば、それこそ犠牲は増える。

 突き進むしかないのだ。

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