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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
第三部、アルゲナム解放編

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第四七〇話、隠れ家への道


「こちらです、姫様」


 アルゲナムゲリラであるメイアは、そう言って先導した。セラはその後に続くが、かつての近衛隊長の背中は、心なしか疲れが見えた。

 無理もない。ゲリラとして潜伏し、魔人軍に襲撃を繰り返してきた彼女たちは、戦力も限られていれば、充分な物資があるとも思えない。

 装備も汚れ、くたびれているのが、その証拠だ。


「苦労をかけましたね」


 自然とそう声に出してしまうセラである。メイアはわずかに振り返ると、小さく笑みを返した。


「大変でした」


 彼女はあっさり認めた。


「ですが、それは姫様も同じこと。打倒、レリエンディールと故国奪回のため、ライガンエンまでの旅路は、想像を絶するものでありましたでしょう。……むしろ、お供できず、申し訳なかった」

「そう、でも、いえ、皆大変だった。わたしだけ苦労したなんて言えない」

「またこうしてお会いすることが叶い、私はとても嬉しく思います」


 メイアはきっぱりと告げた。


「そして姫様がご帰還したということは……。来るのですね、この国を魔人どもから取り戻す日が」

「ええ、わたしは力強い仲間を得た」


 それは最初に期待したライガネンの軍ではなかったけれど、とても頼りになるケイタと

ウェントゥス傭兵軍が一緒だ。


「今は偵察だけれど、春には軍が国境を超えて攻勢に出る」

「おおっ!」


 聞き耳を立てていたゲリラたちが声を上げた。皆、その日を待ちわびていたのだ。


「その知らせを、ぜひアジトにいる仲間たちにも聞かせてやってください」


 メイアは目を輝かせた。


「助けは来ないのではないか、不安がっていた者たちの心にも勇気が戻るでしょう」

「……」


 それを聞き、セラは表情をわずかに曇らせた。

 やはり、国を離れている間、戦いの中で心が挫けてしまった人たちがいた。無理もないことだ。ゲリラとして戦うというだけでも大変だ。命を落とした者も少なくないだろう。一生残る傷を負った人もいただろう。

 実際に見たわけではない。セラの想像だ。ただそれを思うと、何もできなかったことの悔しさと、わかっていても残念な気持ちが入り混じり、複雑な心境になった。


「……メイア」

「はい」

「後で、アルゲナムのために尽くしてくれた人たちのことを、教えてほしい」

「……承知しました」


 セラという人間を知るメイアは、それで察した。この姫様は、いつも自分で抱えようとする。自分の苦労はもちろん、人の苦労も共有して自分も支えようとする。そういう人なのだ。


「嬉しかったんですよ、セラフィナ様。帰ってきてくださって」


 メイアは言った。


「私たちの足取りは、いつもより軽い。いつも見ている私にはわかります。あなたはこの国の希望なんですから」



  ・  ・  ・



『オルセン村に、アルゲナムゲリラが現れた』


 その男は、カラドクラン人だった。緑色の肌を持つリザードマン。レリエンディール第六軍に所属する戦闘部隊長である。


『ポルアー男爵は戦死した。そうだナ?』


 村での戦いから逃げ延びたセプラン歩兵は頷いた。

 村でアルゲナム人の処刑をやれば、ゲリラがのこのこ現れる。そこを待ち受け、殲滅するのが、ポルアー男爵の大隊に課せられた任務だった。


『ワレワレ、予備に出番があるとは思えなかったが……』


 カラドクラン・リーダーは、チロチロと舌を覗かせた。


『まさか村がゲリラの手に落ちるとは』


 これは想定外だった。


『サバッタ!』


 カラドクラン・リーダーは、副隊長を呼んだ。


『ワレワレの任務は、村の攻撃に失敗し、敗走するゲリラの残党を追跡することだった』

『はい、ボス』


 サバッタは頷いた。


『しかしゲリラは村を制圧した。ワレワレはゲリラの巣を見つけ、それを掃討するためにここにいる。では、この場合、どうするべきか?』

『任務を厳守するならば、村から離れた一団を追尾し、アジトを見つけるべきです』

『だが村にいる敵を放置するわけにもいかん』


 カラドクラン・リーダーは鼻をヒクつかせた。


『優先順位の問題だ。村を制圧したゲリラは手強い』


 そうでなければ、ポルアー男爵の部隊がやられるわけがない。これとまともに戦えば、負けるとは言わないが相応の被害を覚悟しなくてはならない。

 だがそうなると、アルゲナムゲリラのアジトを制圧できる戦力が残っているかどうかの心配が出てくる。


『残党狩りは、楽な仕事と思われがちだが、これが中々に油断ならない。アジトを先に潰したとして、今度はオルセン村にいる連中を叩けるだけ残っているか、という問題が出てくる』


 カラドクラン・リーダーは用心をして、慎重になっていた。副隊長のサバッタは言った。


『村から離脱した一団も追跡していますから、アジトの場所を探らせるたけ探らせましょう。我々はまずオルセン村を奪回し、余力があればアジトへ。なければ、増援を仰ぐか、一度撤退し出直しを図るべきと考えます』

『村を優先するわけだな。よし、そうしよう』


 そうとなれば、カラドクラン・リーダーの動きは早かった。


『部隊に移動指示を出せ。オルセン村を奪回する!』


 ゲリラ掃討部隊は、ポルアー男爵の部隊と同等の一個大隊の歩兵からなる。敵のアジトが、地形の険しい場所の可能性を想定し、高低差に強いカラドクラン人を中心とする部隊である。

 攻城兵器や大砲などを装備していないが、屋内での戦闘もこなせる分、市街地戦もどんとこいである。


『村を挟撃する。街道を中隊で塞ぎ、包囲殲滅だ!』


 カラドクラン部隊は、種族特有の前傾姿勢で駆け出すと、それぞれの配置へと移動した。

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