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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
王都エアリア攻略戦 編

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第四三三話、ティグレ無双


 ルガン9号機は、その操者を失い、ガクリと倒れる。ティグレ改はそれを掴むと、側面のルガン二機に対する盾とする。


『だが、それでは動けまい!』


 ルガン12号機が、敵機の後方へと回り込む。ルガン9号機を掴んでいる敵は、その無防備な背中を向けている。

 光弾砲……いや、9号機の操者がまだ生きていたら巻き添えにしてしまうか――ルガン12号機を操るアソー12は、とっさにそう判断し、機体を前進させた。


 後ろから掴んで引き離し、光弾砲でトドメだ。 


 敵機を葬るシミュレートを頭に描いたルガン12は、突進する。

 だがその動きは、慧太けいたも気づいていた。


 ――マルチランチャーは背中にもあるんだよなぁ……!


 ティグレ改の背中、バックパックにも見えるそれが稼動し二基のマルチランチャーが、後方から接近するルガン――その脚を狙う。


 射出される鉄杭。右、そして左と鉄杭がルガンの、やや貧弱な印象を与える膝を砕き、その場に転倒させた。


 アソー12は被弾するまで狙われていることに気づかなかった。背中の部位(パーツ)が動いているのは見えた。だがそれが胴体に当たる位置まで動かなかったので、攻撃だと思わなかったのだ。

 もし胴体や頭の位置まで上がっていれば、砲らしきものを向けていると気づき、魔法障壁を展開したのだが。


 ――これで二つ……!


 残るルガンは二機。その二機は、盾になっているルガン9を避けて、左右に展開した。あくまで挟撃にこだわるつもりらしい。


 ――まあ、いいけど。


 すっと、ティグレ改は影に沈む。ルガンからは味方機の陰に隠れているように見えた漆黒の機体は、次の瞬間その場から消えた。

 ……ティグレ改は、魔鎧機でも鎧機でもない。巨大なシェイプシフターである。当然、地面に影のようにくっついて、消えたように見せることができる。

 ルガン二機は、それぞれ攻撃位置に回りこんだが、すでにそこにティグレ改の姿はない。


『また消えた……!』


 どこだ――焦りと共に周囲を探すルガン操者。不意に、眼前に漆黒の機体が現れた!


『うわああぁっ!?』


 あまりに当然で大声を上げてしまった。


『アソー11!?』


 僚機が気づいて、ルガン11号機を見る。そこにはルガンに取り付き、こちらに銃らしきものを向けている敵機の姿。

 とっさにルガン10号機は両腕を前に出して、魔法障壁を展開。放たれた杭を弾くことに成功する。

 一方、機体の膝に乗られたルガン11は、目の前にくっついているティグレ改を両腕で引き離そうとする。


『くそがっ! 脅かしやがって――』


 ゴツン、とコクピットの透過装甲を固いものが叩いた音がした。魔人操者の目の前に、ティグレ改の腰部があり、その左右から小さな腕のようなものが伸びていて――


『!?』


 腰部のマルチランチャーが鉄杭を至近距離で発射した。左右二本の杭はコクピットを貫き、ルガン11操者を無残な死体へと変えた。


『三つ……』


 ティグレ改は、ルガン11から離れる。ルガン10は前進しながら、光弾砲を放つ。


『ルガン11! ……くそっ』


 胴体を二本の鉄杭が貫通しているのが見え、操者がやられたことを察するルガン10。

腕を前に出し、魔法障壁を展開した格好で、敵機めがけて突進する。

 手榴弾を投げるティグレ改。だが魔法障壁は爆発を防ぐ。しかし一瞬の爆炎は、魔人操者からその姿を隠した。


『……上か!?』


 光弾砲を向ける。予想通り、ティグレ改は跳んでいた。だが飛び掛るではなく、そのまま飛び越していったために、狙いをつける余裕がなかった。

 慌ててルガンを振り返らせる魔人操者。だが、機体の旋回が終わる前に、強烈な力でルガンが引っ張られた。


『なっ、何だ……!?』


 物凄い力で引かれ、ルガンは転倒。そのまま石畳の道の上を引きずられる。何が起こっているかまったくわからないままパニックに陥る魔人操者。

 それは中にいたのではわからなかった。

 外から見れば、ルガンの機体に六本のワイヤーが刺さり、ティグレ改のバックパックたるマルチランチャーから伸びるそれに引きずられているのがわかる。

 やがて止まった時、横倒しのルガンに、ティグレ改が腕のマルチランチャーのバンカーで胴体を一突きした。


『四つ!』


 慧太は、撃破したルガンを尻目に、再び機体を走らせた。

 セラたちが、ベルフェの魔鎧機ウルスドロウと戦っている。こっちでルガン相手している間にケリがついていれば、と思ったが。

 まだ戦闘中だった。



 ・  ・  ・



 ウルスドロウが加速する。背中の円柱型ユニットがせり上がり、魔導動力が紅蓮の炎を吐き出す。それはロケット。ウルスドロウの重厚なボディを砲弾のごとく、加速する推進補助装置だ。

 狙われたのは、アスモディアのアレーニェ。ティシアのネメジアルマが近いので、そちらに向いたと思っていたアスモディアは完全に虚を突かれた。


『くっ――!』


 六脚による大跳躍で後退。しかしウルスドロウは、その落下点が、自らの直線上にあることを瞬時に見て取る。


『とっさに飛び退いた反射神経は褒めてやる……』


 ベルフェの声が、ウルスドロウの拡声器から漏れる。


『だが、その回避は迂闊うかつだった!』


 再びウルスドロウの加速。落下してくるアレーニェが地面に着くタイミングを見定めた突進。セラのスアールカのように飛行ユニットがあれば避けようもあったが、アレーニェには空中機動装備はない。……彼女に出来ることは、せいぜい腕でも出して胴体を守ることだけ。

 ウルスドロウは体当たり寸前、腕の爪を展開する。魔法障壁を展開する可動爪が三本ずつ。それがアレーニェのガードの如く出された腕を貫き、さらに体当たりの威力と相まってアレーニェを押し潰す。


『ぐうっ……!!』


 聞こえてくるのは苦悶の声。操者はたぶん死ぬだろう。だが聞き覚えのある声だ、とベルフェは思った。


『アスモディア!』


 白銀の魔鎧機スアールカから、その名を呼ぶ声。

 そう、アスモディア。第五軍指揮官にして、行方不明だった魔人女。カペル家の娘――ついでに言うと、ベルフェが死ぬほど嫌いだった同僚。


『お前はここで何をしているのだ、アスモディア?』


 ウルスドロウの体当たりと爪をモロに受けた漆黒の魔鎧機――異様な六脚型魔鎧機とは珍しいと、ベルフェは思う。どこから出てきたか知らないが、しかしその魔鎧機も潰れ、裏切りの理由を問うこともできないだろう。


 残りは二機。空飛ぶ白銀の魔鎧機と、大型の盾を持った騎士型の白い魔鎧機。――騎士型は遠距離武器を持っていないので放置しても問題ない。問題は、飛行型のほうだ。


『こちらにも射撃武器はあるが、如何せん、空を飛ぶ敵には対応していないんだがね』


 火球弾投射機能はあるが、正直、弾速でいえばルガンに搭載した光弾砲のほうが上だ。そもそも、魔鎧機は空を飛ばないから、対空用装備というのは本来搭載されていない。……このウルスドロウはレリエンディール建国時からの古い機体であるし、そもそも魔人と敵対していた人間種に空を飛ぶ者などいないわけで。


『とはいえ……』


 魔法障壁を展開する。スアールカから光弾が放たれたが、ウルスドロウの障壁がすべて弾いた。


『遠距離武器が効かないと見れば、近接戦を挑むしかないのだが』


 それはつまり。


『ウルスドロウの間合いというわけだ』

『……よそ見が過ぎるのではないかしら、ベルフェちゃん?』

『――!?』


 アスモディアの声。ウルスドロウがゆっくりと視線をめぐらせた時、半壊状態のアレーニェ、その尻尾にあたる部位、棍棒のように太いそれがぶち当たった。


『――っ……?』


 よろめくウルスドロウ。強打を放ったのはアレーニェの尻尾、フラム・クー。炎を吐き出す射撃武器であると同時に、ハンマーの如き打撃を放つ近接武器だった。


『この死にぞこないが!』

『さて、誰が死にぞこないなのかしら……?』


 次の瞬間、押し潰れていたアレーニェの機体がまたたく間に再生した。爪で抉られた腕も、元通りになり、無傷の姿をさらしている。


『はっ、再生だと……?』


 拡声器の向こうで、ベルフェの声がかすかに弾んだ。


『ますます、興味深い機体だ、な……!』

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