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シェイプシフター転生記 ~変幻自在のオレがお姫様を助ける話~  作者: 柊遊馬
王都エアリア攻略戦 編

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第四〇七話、正面衝突


 第一軍から上がってきた飛翔兵の部隊は、強襲飛翔兵連隊の生き残りや、他部隊の偵察員から回ってきた補充兵で編成されていた。


 先のゲドゥート街道で失った連隊に比べると戦闘面では劣る。だが、空を飛ぶ部隊がいるのといないとでは大きく違う、とシフェルは少数ながら編成させていたのだ。

 その飛翔兵部隊は、王都外壁で砲を操作する敵兵の姿を見た。そしてそれらが、飛んでくる自分達にクロスボウを向けてきたのも。


 ――やはり敵だった……!


 誤射のレベルを遙かに超えた砲撃を味方歩兵連隊に叩き込んだ連中である。まさか第一軍の陣をすっ飛ばして王都に入り込むなど考え難かったが……実際にいるのだから仕方がない。

 飛翔兵の数は二三人。外壁上へ上がるまでに、四人が矢で撃ち落とされた。上から見下ろしたところ、外壁上の歩廊ほろうは、すでに敵に抑えられているようだ。


 ――では、王都はどうだ……?


 制圧されたのが外壁だけなのか、王都全体なのか……。第四軍の駐屯兵力を考えれば、いくら敵が入り込んだとはいえ、外にいる第一軍にまったく気づかれずに王都を占領することは難しいだろう。


『そうであるなら――』


 後方にいた兵――偵察兵上がりの三名に、ジェスチャーで王都中央の宮殿へ飛べ、と指し示す。


 外壁上が敵に抑えられたことに気づいているかもしれないが、もし気づいていなかった場合、第一軍は砲弾の雨を浴びせられ続けることになる。


 本当なら、こちらで敵を一掃できればいいのだが……、わずか十数名だけでは厳しい。そうこうしているうちに、さらに三、四名ほどがやられた。距離が比較的近い上に、敵のクロスボウだ。狙いが付けやすい。

 こちらもクロスボウで反撃する。空から敵兵に撃ちこむが、恐るべきは敵の装填速度が早すぎることだ。次から次に矢が飛んでくる。――くそ、空から撃つこちらが有利のはずなのにっ……!



  ・  ・  ・



 くそっ! ――ゼーエンは悪態を飲み込んだ。

 敵の飛翔兵がこちらを攻撃してきた。それはまだいい。少数ゆえに撃退はできた。だが敵兵が二人ほど、こちらを無視して王都内へと飛んで行った。

 通報するつもりだ。


『ゼーエン隊長!』


 分身体兵の呼びかけに、「わかってる」と答える。


「どうせ、遅かれ早かれ敵に気づかれるんだ。……それより」


 6ポルタ砲は、いまだ表の第一軍を叩き続けている。だが敵も砲撃に対応した動きを見せつつある。先ほどのように撃てばまとめて倒せる、といった状況になり難くなってきていた。


「第四軍が来るぞ。迎え撃てるよう配置転換」

『はっ!』


 ウェントゥス兵は歩廊ほろうを駆け、味方兵に敵来襲に備えるよう告げてまわる。

 ゼーエンは腕から分身体――伝令鷹を作り出すと、それを王都外へと放った。



  ・  ・  ・



 第一騎兵連隊連隊長サージ・ヴェランスは、第二大隊を率い突撃の先鋒を務めていた。

 中央の歩兵連隊がウェントゥス軍の空からの攻撃にさらされた。王都外壁からの砲撃が始まっているが、あろうことか味方を撃っているように見える。

 どうにも面白くない展開だ。


 だがヴェランスの騎兵連隊に、敵主力への突撃命令が下った。中央が滅茶苦茶にされているが、攻撃されていない騎兵部隊を使って前進中の敵を攻撃しようというのだろう。


 しかし、ウェントゥス軍も、ヴェランスの騎兵部隊の動きに騎兵をぶつけてきた。

 二足歩行型の小型竜――翼の退化した大型鳥のような、足が長くほっそりした竜を馬代わりとする騎兵である。たしか、コンプトゥスといったか。アルゲナムやリッケンシルト内で生息している生物だ。

 人間の騎兵といえば、馬と相場が決まっている。だから小型騎乗竜の騎馬隊との戦闘は初めてである。


 ――とはいうものの、やることは変わらんのだがな。


 騎兵同士の戦いといえば、正面からのぶつかり合いだ。

 魔人騎兵の駆る魔馬は、馬と名のつくものの中で一番勇敢であり、かつ獰猛どうもうだ。肉は食わないが肉食の獣ではないかと思うほどの荒々しさを持ち、実際に噛むのだ。そんな魔馬だから、トカゲ顔の小型竜相手にも決して怖気づいたりはしないだろう。


『突撃!』


 騎兵槍ランスを手に、双方の騎兵同士が正面から突っ込む。互いに加速しているので、その距離はあっという間に縮まる。


 ウェントゥス軍……。二本の角を持った鬼の顔を模した面貌の白い兜。お揃いの白い甲冑――装備は充分、そしてその練度もおそらくこれまで相対したどの軍よりも高いはずだ。

 押し寄せる姿は、まるで津波のようだ。激しい地鳴り、そして震動。ヴェランスや魔人騎兵が敵に感じている畏怖は、おそらく敵も同様に感じている。迫り来る魔人騎兵、その怒濤どとうの迫力に。


 ゾワゾワっとしたものが背筋を這い回る。本能的な恐怖。死の感覚。ぶつかればほぼ一瞬で死ぬ。刹那、逃げたくなる感情がよぎるが、それは叶わない。隊列を組んですでに突撃の真っ最中。右も左も、その隣も味方がひしめき、共に死に向かって突撃しているのだ。逃げ場などない。ただ真っ直ぐ、突っ切るしかない。仲間たちと共に――


 敵を、槍で貫け!


 そのウェントゥス騎兵の槍先がはっきりと見える至近距離。間もなく接触といった、まさにその時、コンプトゥス騎兵が跳んだ!


『!?』


 小型竜でありながら、高速で地上を駆けるその二本の足は筋肉が発達し力強い跳躍力を生む。その凄まじいまでのバネは、コンプトゥス自身と、フル装備のウェントゥス兵を乗せてもなお恐るべきジャンプを見せた。

 前列の魔人騎兵らは、その異様な光景に驚き、そしてすれ違った。いや、飛び越えられたのだ。騎兵同士の衝突の寸前、まさた跳んでかわすなど前代未聞の珍事だ。


 だが――


『前を向けっ! 第二陣、来るぞ!』


 ヴェランスは叫ぶ。先頭の敵騎兵中隊は、ヴェランスら先鋒中隊を回避した。だがすぐに後続の中隊が迫る。

 スルーされたショックに、先鋒中隊の騎兵たちは動揺を隠せなかった。ヴェランスは次の脅威に備えていたが、他の騎兵の多くが目の前に迫る第二陣に構えるのにわずかに遅れた。そしてそのわずかなズレが、致命傷となった。


 魔人騎兵の先鋒中隊が、ウェントゥス騎兵第二陣と正面から衝突した。槍に貫かれて落馬する兵士たち。魔人騎兵も、ウェントゥス騎兵も区別なく。だが、飛ばされた兵の数では、魔人兵のほうが多かった。


 最精鋭を自負する第一騎兵連隊の騎兵でさえ、動揺から立ち直れなければこんなものだった。


 一方、ヴィランスの部隊を跳んでかわした、ウェントゥス騎兵の第一陣は、魔人騎兵第二陣(第五中隊)と激突していた。ここでも敵前跳躍という異常な技を見せられた魔人騎兵らのショックが大きく、脱落する者が相次いだ。


 だが、第三陣(第六中隊)、第四陣(第八中隊=第七中隊は欠番)は、前の中隊と違い動揺を引きずることなく敵騎兵とぶつかり互角以上に戦って見せた。


 トータルで見れば、最初の衝突は第一騎兵連隊の損害が多く、ウェントゥス軍騎兵優勢に終わった

 だがヴェランスの第一騎兵連隊、第二大隊はまだまだ充分な戦闘能力を有しており、次の突撃に備えて戦場を機動していた。

 ウェントゥス軍騎兵もまた、第一騎兵連隊と叩くべく突撃の機会を窺う。

 その光景が、戦場の両端で、それぞれ行われていた。


 ヴェランス直卒の騎兵中隊と第二大隊は、ウェントゥス軍騎兵第一大隊。歩兵部隊を挟んだ反対側では、第一大隊がウェントゥス軍騎兵第二大隊と交戦を続けている。

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