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第零話、召喚


 修学旅行に行く途中のバスで、オレたちは光に包まれた。

 気づけばオレを含めたクラスメイト――高校生三十人は石造りの大部屋にいた。


 堅牢な石の壁。

 床には何かしら大きな紋様のようなものが刻まれている。それが魔法陣のたぐいと気づいたのは、目の前に現れたいかにも王様といった格好の初老の男と、甲冑をまとった兵士たちの姿を見た後だ。

 通訳する神官風の男によると、煌びやかな装飾の衣装と王冠の男は、この国の王様で、オレたちはこの世界に召喚された勇者様御一行ということらしい。


 異世界転生……いや、転移が正しいのか。そんな物語みたいな展開に放り込まれてしまったわけだ。オレたちは現実を受け入れる余裕もなく、武器を渡された。

 剣や斧、槍、盾――当然、ある者は絶句し、ある者は受け取りを拒んだ。……まあ、無理やり持たされてたけど。


 神官風の通訳は声を張り上げてこう言った。


『いま、この城に魔人の軍勢が攻めてきています! 皆様のお力で、奴らを退けてください!』


 冗談でしょ? それはクラスメイト全員の偽りない心境だっただろう。

 兵士たちに押し出されるまま、オレたちは部屋の外、城の中庭へと出て……今まさに城門を破り、侵入してきた獣頭の化け物や得体の知れない魔獣の大軍と遭遇した。


 オレたちの勇者としての第一歩が始まる――なんてことはなかった。


 そりゃそうだ。レベル1の勇者がいきなり最終ダンジョンに徘徊するような化け物と戦って勝てるわけがない。

 よくある異世界転移ものにあるような、ゲーム的なスキルなんてものはなかった。オレたちは、ただの高校生――現代の、何の能力もない、ただの子供なのだから。


 結果的に、オレたちは覚悟する間もなく、無慈悲に蹂躙じゅうりんされた。

 魔獣に噛み殺される者、爪や斧で身体を裂かれる者……男も女も関係なかった。顔見知りだったクラスメイトたちは、オレの目の前で血だまりに沈み、肉片となった。


 異世界に召喚された三十人の高校生は、ただの一人も残ることなく全滅した。……オレも含めて。


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