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それはある日突然に決まった

 君が僕を見る。


 どんな眼で?


 軽蔑?


 怖いよ。


 君の眼差しが。


 何を考えてるの?


 知りたいけど、知りたくない。


 怖いから。


 じっとみる、その視線が僕に注がれるその視線が何を思ってのものなのか…それを知るのが、知らされるのが怖い。


 僕が君に求めているものだというのに…それが怖いだなんて。


 自嘲が零れでるな。













 秀治はじっと明良を見たままで。明良も視線を真っ向から受け止めて返す。じっと見つめあう二人。明良の中に不安がもやもやと広がりつつある中、秀治がやっと口を開いた。


 「――ぉ…俺は別にお前のこと気持ち悪いとは思わない。お前に好きと言ってもらえてむしろ嬉しいと思う。…それってさ、恋愛的な意味合いでの好きってことなんだろ?俺はその気持ちをありがたく受け取る」


 そう言いながら秀治は明良の頭へ腕を伸ばし、優しく撫でる。


 「え…それって…どういう、」


 意味――?


 明良は目を驚きに瞠る。鼓動が逸る。ドクドクドク…と心音が速度を徐々に上げていくにつれ、淡い期待が膨らむ。これって本当どういう意味で…――。


 「けど、一つ言っておきたいことがある。俺はお前を振る。答えはNOだ、明良」


 けれど、きっぱりと、明良の胸の高鳴りは破られた。何か言わなければ、唇から嗚咽が漏れていきそうだった。だから、強がって、初めから解ってたよと自分を慰めて、無理に笑って見せた。


 「――………えっと、ごめんね?急に…こんなことになって」


 今すぐ逃げ去ってしまいたかった。


 けれど、それは叶わずに、身を翻しかけた明良の肩を秀治はつかんで引き止めた。


 「まぁ、待て明良。話はまだ終わってない。むしろここからが重要だ。よく聞けよ?」


 「…なに……?」


 見るからに肩を落としてショックを隠せない明良に苦笑を零して秀治は笑い混じりに言った。


 「俺は明良が好きだ」


 「……は?」


 思わずそんな声が出た。信じられないの域を超えて、なにを言ってるんだ、こいつ?の域に達してしまっていた。


 飲み込みたい言葉が今発せられた――?誰から?秀治から。


 飲み込んで理解してしまいたい言葉が眼前の想い人の唇から放たれたのは現実…なのだろうか。頭が混乱して、目がぐるぐる回ってくる。視界が揺らぐ。体が熱い。湯気が出ていないだろうか…なぞと、でるはずもないのに、それを心配してしまうくらいに明良の頭は今、パンク寸前の状態にある。


 「……」


 それを見ていた秀治がふむ…と何か含みありげに両目を眇めさせると、次の瞬間、体を曲げて明良を覗き込むようにしながら、明良の唇と自分のそれとを重ね合わせてみた。


 ふに…。


 (あ…)


 「…ッ!?」


 (すげーやわらかい)


  声も出ないほど余程驚いたのか、明良は絶句して唖然呆然とした表情でわなわなと唇に右手を持ってゆく。そして、その数秒後、ハッと我にかえったのか、先ほどのことを思い返したのか明良の顔は見事な茹蛸状態になった。


 それとほぼ時を同じくして、明良を覗き込むように腰を曲げていた秀治の顔も朱に染まった。


 その理由は…――。


 (うわ…)


 やばい…――。


 (すげーエロい…この明良) 

 

 思わぬところでの拾い物に度肝を抜かれていた――。













 姿勢を元に戻して赤くなった顔を掌でおおい隠すようにしながら、秀治は照れくさそうに視線を泳がせて言った。


 「俺の告白をお前に受け入れてもらいたかったんだ。断って悪かった。…すげー悩んだんだろ。お前のことだから。…それで、答えは?」


 その瞬間、明良の眦から大粒の涙が零れ落ちた。


 「もちろん…『はい』に決まってるよ…」


 もはや明良の顔はその時点で涙でぐちゃぐちゃだったけれど、嬉し涙を流したのは多分初めてで。


 その上を更に極上の笑みが縁取っていた。















 幼馴染の境界線突破?

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