プロローグ
BLです。
『僕たちはずっと一緒だよね』
小さい頃、まだ僕たちは何も知らなくて、だから何の気兼ねもなく、何のためらいもなく言えた事があった。
いまも時々、その頃のことを夢に見る。
夢の中の僕たちはただ、何度も、その言葉をささやきあうだけで笑いあっていて、本当に幸せそうだった。
可笑しいよね、『幸せそうだった』なんて…――。
笑っちゃうけれど、僕にはそれがもう懐かしいとしか、感じることが出来ない。
それほどに僕たちは互いに距離を置いて、歳を重ねるたびに遠く離れていく気がする。
唯一の救いといえば、あの頃の僕たちが無知だったということくらいかなぁ。
僕たちは幼馴染で、家族以外の人としては一番長く時間をともにしていた。
昔はそれでよかったんだけれども、今となってはそれも痛苦としか思うことが出来なくなった。
大人になれば、もう僕たちを繋ぐものはなくなってしまって、僕の心は痛みから解放されて楽になれるかもしれない。
だけど、その反面すごく寂しい穴が心に開くかもしれないね。
離れたいけれど、離れたくないんだ。
だけどね、近くに在りたいって思うのに、そう思えば思うほど距離が開いていく気がする。
僕がそれ以上はだめだって思っているからなんだろうなぁ。
それ以上になりたくて――でも、それ以上の関係になってしまうのが怖くて。
僕が一歩でも踏み出せたのなら、きっと――幼馴染の糸は切れてしまうだろう。
そんなのね、僕はいやなんだ。
ごめんね。僕は幼馴染をやめてあげられそうにないよ――。