桜が運ぶ出会い
……ねぇ、知ってる?風には恋の妖精が住んでいるんだって……
桜が満開になる季節。江ノ欄高校の前には真新しい服を着た沢山の新入生達が門の前で写真を撮っていた。その中に2人幼なじみがいた。
「慎司ー!同じクラスだって!!また今年も一緒だね!お母さんが、今度はこっちで写真撮るってー!!」
俺を呼んでいる女子は幼なじみの木下愛美莉。
「なんだよ…また一緒かよ愛美莉。ってまだ撮るのかよ!さっきから何枚撮るんだよ…」
「あら〜ごめんね〜慎司君。毎回毎回付き合わせちゃって〜。」
愛美莉のお母さんはカメラマンやってるから、いつも俺らはセットで写真のモデルをさせられる。でも、腕はすごく良く、いつも喜んで写真を受け取っている。おかげで俺のアルバムは1年に1冊はいっぱいになる。ありがたいんだけどほとんど全部愛美莉とツーショットだからもう飽きたというか…
「はい!もういいわよ〜いつもありがとうね〜!また、明日にでも写真渡すわね〜」
「は、はい!アルバム買って待ってます!」
「まぁー昔から変わらないわねぇ!素直でいい子!うちの娘にもその素直さ譲って欲しいわぁ!」
「お母さん!辞めてよ!新しい高校でそんなこと大声で言うの!それに!私は素直だよ!!」
「素直な子はそんなこといいません!」
「えー!そんなぁ…」
こんなに仲のいい家族なのに、いつも言い合いしてる。仲がいい事はいいけど、止める役がいつも俺になるんだよな…
「まぁまぁ!今日はこの辺で帰りましょう!俺の母が家でお腹空かせて待ってますよ!」
「そうだった!これ以上待たせたら悪いよね!今日はパーティーだー!食べるぞー!」
「……太るぞ…」
「なっ…!!ちょっと!慎司ーーーー!!!」
「うわー!豚が追っかけてくるー!」
「誰が豚よ!全世界の女子に謝れ!」
「俺は女子にそんなこと言わねーよ!ブーブー!」
「私は女子じゃないって言うの!?おばさんに言うわよ!」
「うわっ!それはやめろ!!」
満開の桜が風に乗って舞う季節。念願の江ノ欄高校に合格した私は中学校からの親友と共に入学式を終えた。
「ののちゃん何組ー?私2組!」
「私は3組だよ~今年は離れちゃうね…」
「えー!そっかぁ…ショック…毎時間休み時間遊びに行くからねー!」
とはなちゃんは泣くフリをしながら言う。
「あはは!楽しみに待ってるね!」
そんな話をしている時遠くの方から
「なっ…!!ちょっと!慎司ーーーー!!!」
「うわー!」
と楽しそうな声がした。
男の子を追いかけている女の子は元気がよくてツインテールがとても良く似合う。しんじと呼ばれている方の男の子は顔もそれなりに整っていて、すごく
「かっこいい…」
「……ん?なに?…あ、あの男子に惚れちゃった感じ?」
「え!?いやいやいや!そんなことはないよ〜」
「えー!いや!今かっこいいって言ってたし、顔が赤いもん!」
顔が熱い。そして、あの子から目が離せない。でも、恋とかよくわかんないし。きっとそんなのじゃないのと思う…
「あの子多分3組だよ。しんじって名前の男子は桑野慎司一人しかいないみたいだし…よかったね!」
「も〜はなちゃん〜やめてよ~…桑野くんかぁ…」
少し心のどこか安心した気持ちと自然と笑顔になった。もう一度振り返ったが桑野くんの姿はもうなかった。
「あー…疲れたー…」
俺と愛美莉は学校から3キロと少しの道を脱出で帰ってきた。
「あんた馬鹿ねぇ。3キロの距離を入学式から走る人なんていないわよ。しかも、同じ道を走ってきたえみりちゃんは汗一つかいてないじゃない。」
小さい頃から何かと俺は愛美莉と比べられる。愛美莉は中学の頃陸上部で、沢山賞状を貰ったりしていた。俺は一緒に陸上部に入部したが、1年ぐらいでやめて、文化部に入部した。だから、愛美莉に勝てるはずないのに…
「…当たり前だろ……俺は…運動苦手…なんだから…」
「なんでかしらね?私もお父さんもお姉ちゃんも運動出来るのに慎司だけ出来ないなんて…」
「慎司の努力不足じゃない?」
「あー…それはあるかもね…」
俺が喋れないからってすき放題いってやがる。でも、これもいつものこと。まだ、愛美莉と姉ちゃんの2人じゃないだけましだ。
「まぁまぁ!喧嘩はあとあと!ほら、お肉焦げますよ!このとうもろこしも食べれますよ!」
今日のパーティは俺の家の庭で焼肉パーティだ。愛美莉のお母さんと俺の母さんは中学、高校で同じらしい。でも、俺の母さんが高校卒業の時に引っ越して、大人になって俺の姉ちゃんが生まれてすぐ、ここ引っ越してきたらしい。そこのお隣さんが偶然愛美莉のお母さんの夫婦だったんだって。
「じゃあ、2人の高校入学を祝して!」
「「「かんぱーい!!」」」
もう1人の主役を置き去りにして、盛り上がってるし…
この高校生活で、楽しいことがある事を願いながら、俺は肉をほおばった。