二話
門を通り抜けた俺とリリィはそのまま大通りをまっすぐ歩いているギルドは中央にあるそうだ
町並みを観察してみると中世というかヨーロッパっぽい建物が並んでいる
「中規模ってところかな、だいたいの町がこのぐらいの大きさなんだろうか?」
「そうですね王都と聖都、魔法都市以外は多少の差はありますが誤差の範囲です」
などと他愛もない話をしているとリリィが足を止めた
「ここが冒険者ギルドですね」
「ギルドって儲かってるんだなぁ大きいわ」
木造三階建てで周囲の建物と比べてみると一回りほど大きい
中に入ってみると受付カウンターが五個、クエストボードが三枚でバー兼軽食店が併設されていた
「本日は何用でしょうか?」
リリィについて受付へ向かうと受付嬢さんが笑顔でそう言った
「森の調査報告とこの子の冒険者登録に来ましたまだ13歳なので私が保護者で話を進めてください」
「わかりました、では調査報告は奥の部屋に担当者が居るのでそちらへ登録は私が受け持ちます」
「ということなので別行動でちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
リリィは奥の部屋へ歩いていった
受付嬢に目を向ける―――茶髪に茶色の瞳、最大の特徴はやはりネコミミであろう特に違和感もなく時折ピクピク動くさまが可愛い
「どうもはじめまして受付嬢のエリスといいますこちらの用紙に必要事項をお書きください」
「こちらこそよろしくタクトといいます」
用紙には名前、性別、種族、主用武器の欄があったのでタクト、男、ヒューマン、最後は空欄にしておいた
「あら男の方だったんですねてっきり女の子だと……」
「女顔なんですよ割とよく言われます」
「主用武器が空欄ですがこれは少なくともランクアップ前に申告してもらえば問題ありません」
この後ギルドの説明をしてもらったランクはFから順にAその上がSさらに上にSSがあるがSSには誰もなれて居ないらしい
依頼の受注は一つ上のランクまで出来て一つ上で五回同ランクで十回連続で成功するとランクアップ出来Cランクから昇格試験があるそうだ
ギルドルールは普通にしてれば破ることはないので省略された長々説明されるのも面倒なのは確かか
「それではこのカードに血を垂らしてください」
針とカードを渡されたので人差し指を突いて血を垂らした
「以上で登録は終了となりますそれでは改めて冒険者ギルドへようこそ―――あ、そうそう登録料は銀貨一枚になります」
「金貨でいいですかね」
しまりがないなと思いつつ金貨をポケットから取り出すフリをする無論【アイテムBOX】から出している
「はい大丈夫です。おや?珍しい旧帝国金貨ですね今はもう殆ど出回らないのでコレクター価格で金貨三枚になりますよ」
「金貨としては使えないんですか?」
「いえお金として使うなら金貨一枚分にしかならないので先に売る事をオススメしますここでも買い取っているので合わせて処理しますね」
「ではその一枚に追加四枚合わせて五枚お願いします」
「登録料を差し引いて精算しますね金貨十四枚と銀貨九十九枚になりますお確かめください」
ざっと数えて【アイテムBOX】にいれた
奥の部屋からリリィが出てくるのが見える同じぐらいの時間だったようだ
「お待たせ」
「こっちも今終わったところだよ」
「時間も時間なのでまずは宿取りましょうか」
※※※
リリィは状況がわからないと思考停止していたが理解し始めたのか顔が赤くなっていくのがわかる
「キャアアアアアァァァァァお、お、お、男!?」
宿に着くとお金の節約にシングルで取ろうと押し切られ何時フラグが立ったんだと首を傾げていたんだが
起きたら手が生理現象に触れて気付いたそうで―――俺が男だと気付いてなかったのか頭が痛い
余談ではあるが息苦しいなと彼女より先に目覚めると抱き癖があるらしく凶器二つを押し付けられ昇天しかけた事を追記する
「ぼく汚されちゃった……お婿にいけない責任とって?」
「え、ええせ責任ですね取ります取りますとも」
ノリで言ってみたけどボケにボケで返されるとは頭痛が痛い
「ところでコウノトリさんは赤ちゃんを何時運んでくるんでしょう?」
「え?」
「え?」
再度言おう頭が頭痛で痛い―――子作りに関しては宿のおかみさんに教えるよう頼みに行くかと部屋を出た
受付に行くとなにやら騎士っぽい団体さんが来ていた
「ここに第三皇女リリエール・ゼクシオン様が泊まっている事はわかっているお連れしてもらえないだろうか?無論これは国の命令である」
へぇここにそんなお偉いさんが泊まってる……というか家出だろうか?連れ戻しに来てるしそうだろう
話に割り込んでいくわけにもいかないので事の顛末を見ていると連れられてきたのはリリィであった
抵抗するでもなくトントン拍子に事は進み宿には俺がそのまま残されていた
まぁ国からの連れ戻しならしょうがない……関わっても碌な事にならない気もするしな
※※※
「エリスさ~ん聞いてくださいよ保護者のリリィが諸事情で居なくなっちゃったんですけどどうしたらいいんですかね」
俺はギルドへ来ていた愚痴兼相談である
「保護者が居ないとなると冒険者の活動は凍結ですねカード自体は身分証明には使えます」
「なるほど身分証明が出来るって事は店の下働きなんかでその日暮しで稼ぐしかないですかね」
「いえその手の募集も冒険者ギルドが担っていましてその……リリィさんが戻るまでか15歳になるまで受けれませんね」
「他に解決策ってないんですか?」
「保護者を頼める人に頼んでみるとか」
「そんな人居たらリリィに頼まないよ……」
「ですよねぇでは昨日のお金ってまだ残ってますか?残ってるなら魔法学校に入学しちゃうのも手かもしれません寮に入ってしまえば卒業までは食事もなんとかなりますし卒業したら16歳ですよ」
「いい手かもしれないな魔法も使えるみたいだけどまだ良くわかってないし」
魔法は覚える必要がある―――どのようなモノがあるかはわからないが転移魔法があれば元の世界へ帰れる可能性もあるからだ
「入学には魔法の素養、身分証明、金貨十枚が必要でここから魔法都市アルカンテまで馬車に乗ると金貨一枚ぐらいですね」
こうして俺は魔法都市アルカンテへ向かうことを決めた
※※※
馬車に乗って一週間、途中ゴブリン、オーク、コボルトなんかと遭遇したが俺はお客様なので護衛が戦ってるのを遠めに見た程度でこれといって何もない道のりを終えて目的地に到着した
余談ではあるが服が汚れないなと【解析】してみるとサバイバル中に濃い魔力を当て続けた事により変質を起こし自動修復と自動浄化機能が追加されていたので着替えに関しては問題ない
「ここがアルカンテかぁ」
門番にカードを提示し門を抜けて大きな建物へ向かう十中八九学校だろうという考えだ
町並みはタタンと比べてファンタジーを実感出来るとでも言おうか不思議な商品が並んでる店が多い
「ここが魔法学校でいいのかい?」
「そうだ何の用だ?」
門番に話しかけてみて合っていたようだ勘が冴えている
「入学したいんだが決まった入学時期とかあるのか?」
「入学時期は一週間前だ、まぁ途中からでも入れる」
「じゃお願い出来るかなまずは書類か何か書けば良いのか?」
「いや担当のものに会わせるついて来い」
そう言うと門番はいそいそと構内に入って行ったのでついて行った
「ここで待ってろ」
通された場所はそこそこ広く修練所と呼べるような部屋だった
やや待っていると眼鏡をかけた優男っぽい人がやってきた恐らく試験官だろう
「君が入学したいと言ってた子だね?まずは身分証明の出来るものを見せてもらえるかね」
「はいこれです冒険者としては凍結されてますけどね」
「凍結?あー15歳以下で保護者不在なのね確認しました問題ありません、では次に魔法の素質を見ましょう」
試験官はポケットから手のひらサイズの水晶玉を取り出した
「これに魔力を流すとこのように色で属性を光の強さで魔力量がわかります」
水晶玉は赤と青が交じり合うように光っている
「私の場合火と水の素質とそこそこの魔力量ですね、はいどうぞやってみてください」
渡されたものの魔力の流し方がわからないのでテキトーにイメージして流してみる
「あの……これって弁償ですかね?」
水晶玉は白く光り始めると天辺から風に吹かれる砂のようになり消えてなくなってしまった
「い、いえ安物なので気にしなくて大丈夫です恐らく劣化が進んでいたのでしょう、白かったので属性は光ですが白は他の色を打ち消してしまうので他の属性にも素質があるかもしれません魔法量は普通ぐらいでしょうか水晶玉が壊れたので詳しくはわかりませんが問題なく使える範囲でしょう」
やや固まっていたが慌てて喋りだした感じがしたけど気のせいかな?
そういえば種族で得意属性の補正とか見れないのかな?再度【解析】してみよう
種族:ハイウィザード(第四世代)
前世代であるウィザードの肉体が弱いという弱点を半魔力構造の肉体を得て克服した種族
特性(第四世代)
魔力で肉体を増強出来る
火水風土光闇属性補正(第三世代から引継ぎ)
項目が増えた―――どうやら完全に出来るわけではなく探る方向性を考えないと【解析】対象外のようだ
流石に魔法使いの名を冠するだけはあった六属性か
「それでは金貨十枚をお支払いいただけますか?以上で入学手続きは終わりです」
金貨十枚を支払う
「入寮ですが手続きに時間がかかるので数日は来賓の方の部屋を使うことになります」
「ありがとうございます宿を取るとなるとお金が厳しくて……」
思わず苦笑する
その後構内を案内してもらった
「ではこちらが数日ですがタクトさんの部屋になります明日の朝はクラスへの編入―――まぁいわゆる転校生なので一旦職員室に来てください備品と制服は部屋に用意してあります」
案内を終えると最後に数日ではあるが自分の部屋へと送ってもらった
今日することはこれで終わりらしい備品を【アイテムBOX】に仕舞い食堂で夕飯を食べて寝よう
※※※
「タクト13歳だ、呼び方は呼び捨てでかまわない三年間よろしく頼む」
当たり障りがない自己紹介をこなす
「皆仲良くしろよー」
担任の先生が気のない言葉で続く
彼女の名前はシンシアというそうだ容姿は紫髪で紺色の瞳、雑な割りに生徒から信頼されるような空気を醸し出している美人といえば美人であろう
「さてお前ら走るぞー」
俺への質問攻めが大方終わるとその一言とともに校庭へ向かう
なお質問攻めされた時に女と勘違いされないよう誤解をといたのは言うまでもない
グラウンドでクラスメイトはひたすら全力疾走している倒れれば魔法で回復されて続行というスパルタである―――これが三週間続くらしい
魔法が上手くても近付かれれば御仕舞いでは洒落にならないから基本的な体力がつくようにこういうカリキュラムになっているのであろう
まぁ俺はステータスが高かったお陰で一日目回復無しで完走したため免除となりこの時間は自習になっている
そんなわけで図書室で歴史書などこの世界の一般常識の収集に充てた
あぁ魔法の授業が待ち遠しい
お読みいただきありがとうございます
設定が少なければ何週間もかからないとわかったものの難産は変わらず……