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勇者宿舎


騎士にステータス・プレートを提出した後、真たちを含めた勇者一行は、二列になってぞろぞろと王宮内を案内されて回った。


特に何も言われていないのに二列縦隊がいつの間にか形成されるあたり、日本人の国民性と県立高校のお行儀の良さが出てしまっている。


案内されたのは、規模の異なる三箇所の謁見の間などの宮殿内部や、宮殿から見て左手にある騎士宿舎や訓練所、そして騎士宿舎に隣接している三階建て石造りの真新しい建物である。


宮殿内の案内がそこまで詳しくなかったのは、そもそも真たちが宮殿内に立ち入るような事が多くないからだろう。これから生活していく環境を知ってもらう、という配慮もあるのだろうか。



この真新しい建物は、真たちを受け入れるにあたって新設されたものであるらしく、確かに高校の一学年の人数くらいなら寝泊まりする事が出来そうだ。勇者宿舎とでも呼ばれるのだろうか。


勇者宿舎の構造はほとんど騎士宿舎と変わらず、俯瞰すると「コ」の字を門から王宮へ向かう道を軸に、反転させた形をしている。


「コ」の底辺側には出入り口や会議室、一斉に食事がとれそうな食堂、救護室といった設備が整っている。


そして向かい合う辺には、それぞれ六畳一間くらいの広さの個人部屋が連なっている。恐らく男女で棟を分けるのだろう。


日本人にとってはかなり有難い事に、居住棟の一階にお風呂が男女棟それぞれに設置されていた。風呂に入る事が出来るのは、貴族やそれに準ずるような裕福な者のみだそうだから、破格の待遇と言っていい。


部屋割りが決まった後は、環境の変化に戸惑う者も多いだろう、というアレク王の配慮によって宿舎内で自由に過ごして良い事になった。快適過ぎる環境であったため、真たちが軟禁状態であった事に気が付いたのはしばらく後の事である。



召喚された翌日、真たち勇者一行の姿は一番大きな謁見の間にあった。昨日過ごしてみて気が付いたのは、体感的なものではあるが、時間の感覚は地球のものとさほど変わらないという事だ。

現在は地球で言うところの午前10時頃だろうか。あ、花見川だ…


「本日から、それぞれの適性に合った訓練をしてもらう。最初こそこちらの騎士が連携などの指導をするが、そもそも我が騎士たちとの間に能力の大きな開きがあるだろう。その後は自分たちで訓練法を立ててくれ。」


ステータス・プレートの確認が全員分済んでいるようだ。若干アレク王の顔がげんなりしている。そこまで異世界人である真たちとの違いはひどかったのだろうか。


「大まかにこちらで適性に応じて班分けは済ませてある。詳しくは追って騎士団長から聞かせる。

香取、花見川、若葉、成田、白井の五名はここに残れ。他の者は宿舎で騎士団長から説明を受けろ」


退出を促され、真たちは謁見の間を後にする。香取たちが残されたのは、勇者的な適性があったからだろうか。香取が勇者だというのは、納得出来てしまう。だって彼、輝いてるもの。


昨日も召喚された地下空間で、目醒めた者たちがパニックを起こさないようにカリスマ性を以ってまとめていたようだし。


香取の事を一言で言うならば、爽やかイケメンである。

甘いマスクを持ち、身嗜みにも気を使い、周囲への気配りも忘れない上に、生まれ持った爽やかさ。その上にカリスマ性を持ち合わせるなど、どんなチートよりもチートな存在である。



真としては今のところ勇者と敵対するつもりはないが、どこか憤懣やる方ない心持ちで宿舎に戻るのであった。


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