魔獣使い(仮)
「…皆、ステータス・プレートを問題なく起動出来たようだな」
アレク王が空間を見渡し、そう仰った。
仰った訳だが…このステータス・プレート回収されたら詰む。間違いなく詰む。
魔王討伐最短記録打ち立てられちゃう。
というか、年齢が表示されないのは『不死の魔王』のせいなのだろうか…地味に嫌だ…
幻惑魔法とかでなんとかならないだろうか。
魔法の使い方がわからないが、ステータス・プレートは念じると使えた訳だし、念じれば何とかなって頂きたい。
(ステータス・プレート…頼む…!)
光った!ステータス・プレートが光った!
何だかステータス・プレートの感覚が理解出来るような…何だこれ…?
そうだ鑑定!鑑定も使ってみよう!
(鑑定!)
ステータス・プレートに向かって鑑定と念じてみる。
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ステータス・プレート (魔王の眷属)
ステータスと念じた者の能力を測定し、魔力によりその能力を文字として表示する。
魔力を通しやすい特殊な素材を用いて作られている。
眷属化により、魔王の能力を任意で一部共有させる事が出来る。
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…眷属が出来た。
初めての眷属が、まさかの無機物だった。
いや、しかしこれで何とかなるかもしれないな…
俺が一部の能力を共有させる事が出来る、ということは幻惑魔法を与えれば…誤魔化せるんじゃないか…?
「可能です」
疑問に答えるように、文字が板上に浮かんで来た。自然に思考読まれた上に、意思を持ってるかのような受け答えを…
「眷属化により魔王様の眷属となったため、
大幅に性能が向上したようです」
なるほど…じゃないよ!
眷属化って対象なんでもいいのかよ!
それよりも、誤魔化すの可能なのか…
じゃあ、誤魔化すためにはどうすればいい?
「幻惑魔法を与えて頂ければ、こちらでやっておきます」
何この子…出来る子だよ…
無機物とか言ってごめんな…
「完了しました。気にしていません。」
……気にしてるじゃん
「気にしていません。偽装後のステータスを確認して頂けますか?」
そうだった、後で謝るとして今はもう一度確認してみよう。
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氏名 : 匝瑳 真 ♂ (17)
種族 : 人族 Lv.2 職業 : 魔獣使い(仮) Lv.20
体力 : 236
筋力 : 165
知力 : 151
魔力 : 155
<適性>
<固有能力>
幻惑魔法、上級鑑定
<スキル>
結界、弓術、投擲術、短刀術
<称号>
異世界人、狙撃手
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大分スッキリしたな…
体力がまだ高い気もするが、そこまで突出している訳でもないだろう。
魔獣使い(仮)って何だよ、と思わなくもないが、ステータス的には問題がなくなった。
年齢も表示されてるし。
ありがとう、ステータス・プレート…
「お役に立てて嬉しいです」
ははは、愛い奴よ。
よし、これでこのプレートが回収されても問題なくなった訳だし、心置きなく野田たちと会話出来るな。
とりあえず野田からステータスについて聞いてみるか。話したそうだったし。
「野田は拳闘士だって言ってたか?」
「おう!見るか?」
「僕も見ていいかい?」
そこに市原も加わったので、俺からお互いのプレートを見せ合おうと提案する。
「いいのか?」
と市原が心配するが、偽装後だから何の問題も無い。あったとしても、(仮)くらいのものだ。
そうして、まずは市原のステータス・プレートが見せられる。
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氏名 : 市原 和希 ♂ (17)
種族 : 人族 Lv.4 職業 : 槍使い Lv.8
体力 : 163
筋力 : 201
知力 : 185
魔力 : 106
<適性>
風・水
<固有能力>
盾術、貫通
<スキル>
槍術、挑発
<称号>
異世界人、勇者、騎士
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騎士か、何となく似合う物になっている気がするな。能力的には、とりあえず盾役とかになるんだろうか。
野田のプレートも見てみよう。
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氏名 : 野田 健二 ♂ (17)
種族 : 人族 Lv.2 職業 : 拳闘士 Lv.7
体力 : 214
筋力 : 196
知力 : 86
魔力 : 113
<適性>
火・風
<固有能力>
筋力強化、回避強化
<スキル>
気配察知、気配遮断
<称号>
異世界人、勇者、拳術師
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拳闘士なのはわかったが、知力が…
野田…
「よし、それでは確認も終わっただろう。こちらにいる騎士にステータス・プレートを提出せよ。提出後、王宮を案内させる」
野田の脳筋っぽさを哀れんでいると、アレク王から声がかかる。
やはりここは王宮の地下だったのだろう。
そうでなければ、王である者がここにいる筈はない。
俺のプレートを見たあたりから、野田と市原が無言なのが少し不安だが、さっさと提出してこの空間から脱出したい。
…偽装、上手くいってるんだよね?
と思っていると、
「問題ありません。恐らく職業のレベルに驚いているのかと」
とプレートさんが仰ったので、気にしないことにした。
騎士の前まで行き、プレートさんを提出する。暫しの別れである。
プレートさん、貴方の事は忘れない…!
万感の思いが込み上げるが、涙をこらえ普通に提出する。
騎士の案内で、佐倉たちと共に演説台とは逆の端にあった階段を上り、王宮へと出て行くのだった。