第2話 賭けの内容と賭けるものが決まりました
亀更新ですいません。本文の内容も短いですが、完結できるようにします。
結論から言うと、それは賭け事というにはあまりにも私に有利すぎた。
彼が出した賭け事、それは『一週間、共にこの国を回って私が神の存在を疑えば私の負け。納得しなければ私の勝ち。』なんていう、いわば私が負けさえ認めなければ勝ってしまう、そんな勝負だった。
彼にホントに勝つ気があると聞くと、
「ありません。私が楽しめればいいのです。」
このなめ腐った発言に流石に手が出そうになったが何とか堪えた。
まあ、しかし、私はこの勝負に必ず勝たなければならない。それは、あの人が最後に言った言葉が原因だ。
この人は本当に楽しむ事だけを考えているのだろう。そうでなくては、この余裕綽綽の笑顔で勝負を挑もうとはするまい。おそらく、絶対に勝てる確証があるか、それとも本当は勝負する事自体が目的か。
だが、そんな事を私に吹っかけても意味はあるまい。もし、私の体目的なら、こんな回りくどいこともしないし、何よりそれが目的なら、最初に会ったとき、私に向かってのロリコン云々は言わない筈。印象が悪くなるから。
と言う事は、本当に楽しむ事前提で言っているのだろうが、何故かこの人は信用ならない。私の感がそう言っている。
そんな事を考える私に、アスターさんはこう言った。
「賭け事というのですから、何か賭けましょう。そうですね・・・。」
この事には思わず考えるよりも先に口から出た。
「いりません。仮にも神に仕える身。そんな事でなにかを手に入れても嬉しくありませんし、胸を張って私のものだ、とはとても言えないでしょうから。それに、私はその勝負を受けるなど一言もいっていませんよ?」
だが、この私の答えにアスターさんは私にとって信じられない事を言ったのだ。
「真面目ですね。以前ここにあなたと同じようにしに来たシスター様はもう少し融通がききましたよ?」
・・・いま、何と言った?
いま、『以前ここにあなたと同じようにしに来たシスター様』と言わなかったか?
その疑問が伝わったのか、その動揺が伝わったのか、今となっては分からないしどうでもいいが、問題はそこではない。彼は面白そうにこう言った。
「ならばこうしましょう。私が負けたならあなたが気にしたシスター様の行方、それをあなたに教えましょう。」
この人は知っているのか。2週間前に行方不明になった私の妹、以前ここに立ち寄りその後教会の寮に帰ってこず、未だに行方のわからない妹。この人はその行方を知っているのだろうか。
多分知っているのだろう。今、この人は『以前ここにあなたと同じようにしに来たシスター様はもう少し融通がききました』と言った。
つまりおそらく、この人は妹に同じように勝負を仕掛けたのではないだろうか。妹が消息途絶えるその時まで、一緒にいたのではないだろうか。そうでなければ、この人が今、どこで妹がどうしているのか知っているはずがない。
ならば姉として、妹の雪辱戦、そして今、妹がどこにいるのかを知るために、この勝負、受けようではないか。
「では、シスター様、ルール確認と行きましょう。
明日から一週間、どちらの言い分が正しいか、この国を回ってみて、あなたが私の言い分を信じなければ私の負け。それから追加ルールとして、あなたが私を説得し、成功すればあなたの勝ちでもある。
私が負ければ、あなたが知りたそうにしていたシスター様の現在地を教えましょう。」
確定、この人は妹の居場所を知っている。そうでなければ『教える』ではなく、『今どうしてる』若しくは『調べる』などの表現を使ったはず。
疑問が核心に変わった私に、しかしもう一つ、最悪の自体が浮かんだ。
「アスターさん」
いつの間にか変化していた呼称。それは動揺していたからなのか。アスターさんは「はいなんでしょう」と、おそらく年下であろう私に何故か敬語で話しかける。
「そのシスターは、生きていますか?」
これは最悪の想像。以前から考えていた予想。だが、アスターさんの『現在地を教えましょう』と言う口ぶりに矛盾せず、2週間も音信不通の相手の居場所が実は墓でもおかしくはない。まあ、更に最悪なのは、もしかしたら、この人が殺したかもしれないと言う結果で、その人と一週間も一緒に行動することになっている現状かもしれないが。
それでも私は危険な橋を渡ってでも、知りたいのだ、妹の居場所を。
これが、私が負けられない理由である。