プロローグ2
「リリィや、子供達が呼んでるよ」
何時もの様に商品棚に焼き上がったばかりのパンを並べていると、この店の主であるルエリおばさんに話しかけられた。おばさんが皺のある、だけどどこか気品を感じさせる指で外を示した。
そちらを見ると、確かに二人の子供達がガラス越しにこちらに手を降っていた。
(そういえば、もうこんな時間か)
約束の時間を失念していた事に少し罪悪感を覚えつつ、盆に残っているパンを手早く棚に並べ、着ていたエプロンを脱いだ。そして、用意してあったお弁当の包みを持ち、玄関に向かう。
「それじゃルエリおばさん、行って来ますね」
「いくら近いと言っても、町の外には変わりないんだし、最近危ない事も多いみたいだからね、気を付けるんだよ」
「分かりました、有難うございます。一時間程で戻って来ますね」
「あぁ、行ってらっしゃい」
おばさんの少しやる気の無さそうな声に見送られて外に出ると、子供達がすぐに駆け寄って来た。
「遅ぇぞリリ姉!リリ姉が外に連れてってくれるって言ったんだろ!」
「まぁリリ姉の事だし、忘れてたんでしょ?全く、ひどいよね」
駆け寄って来てすぐに男の子二人に非難の嵐を食らった。まぁ確かにその通りだったので何も言えない訳なのだが。
「 ふ、ふたりとも、リリィおねぇちゃんは忙しいんだからそんな事言っちゃだめだよぅ」
唯一、女の子だけは私の味方だ。流石、私の可愛い妹である。
「はいはい、悪かったから早く行くわよ。そこまで時間あるわけじゃないし」
そう言って妹の手を右手で取り西門に向かって歩き始める。顔を合わせると、手を繋いでいるのが嬉しいのか笑顔で返してくれた。
「だったら早く来てくれれば良かったのに」
「本当だよ…あ、リリ姉左手は僕と繋ごうよ」
「あ!ずりぃぞ!俺が繋ぐんだ!」
文句を言いつつもこうやって甘えて来てくれる生意気なこいつらも、流石、私の可愛い弟達だ。
そして、結局二人に左腕にくっ付かれ、ゆっくりと歩く羽目になったのだった。