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未定  作者: あなぐま
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プロローグ1


ーーーーー気付けば、俺は雲の上にいた。


自身の遥か下には草木に覆われた鮮やかな緑色の大地が広がっており、それはこの高さからでも端が見えない程だった。

しかし、残念ながら今の俺にはその光景を眺めている余裕は無い。なぜなら、俺は今雲の上からそこに向かって落ちているからだ。このままでは後少ししたら地面にこんにちはしてしまうだろう。何かしなければいけないのだろうが、ただ落下しているだけで何かが出来る筈も無く、正直今の俺には下の大地が獲物を待ち受けている死神にしか見えなかった。

更に言うと、余裕が無いのにはもう1つ理由があった。空からダイビングする前に左腕が一度もがれていて、痛みで景色を見ている暇など無いのだ。

一度、というのは、今は左腕はしっかりと自分の胴体に繋がっているからだ。だがもがれたのが気のせいという訳ではない。確かに自分の左腕が何者かに千切られるのを見たし、今もその時の痛みが残っている。だが、空に落ちる直前、いつの間にか左腕は元に戻っていた。

俺は何故こんな目に遭っているのか。あの時、俺はただのほほんと家に帰ろうとしていただけなのだ。それなのに、気付いたら暗闇に落とされ、左腕をもがれ、今度は空に落とされ、今は命の危機にある。全くもって意味が分からない。

今までの自分を振り返っていると、大分地面が近付いて来ていた。このまま順調に落ちれば、後数十秒で俺は哀れな肉塊になるだろう。

「そうだ、どうせなら死ぬ前にかっこいい言葉で人生を締めくくってみよう」

そんなどうでもいいことを思えてしまうのも、左腕の痛みと突然過ぎる現実から目を背けているだけだが、最早それすら分からなくなっていた。

「ーーまったく良い人生だった!…普通だな…ーー我が人生に一遍の悔いなし!…いや、突然過ぎるから悔いありまくるし…ーー地球か、何もかもみななつかしい…さっきまでいましたし…ーードイツの科学力は世界一ィイイイ!…最早意味が分からない…」

頭が良い具合におかしくなって来て、台詞を考えていると、突如脳内に電撃が走った。おもむろに右手を顔の前に持っていき、浮かんで来たその台詞を言い放つ!


「ーー混沌より生まれ出づる檻に閉じ込められし我が魂よ!今こそ悠久なる時を経て解放せん!」(訳:死にます)


(………いや、これはねぇわ)

もう後数秒で地面に激突する時、ふと正気に戻り、

「…こんなんで、こんなんで!死にたく、ねぇええええ!!!」

その叫びは虚しく尾を引いていき、今や地面に激突するーーーそう思われたその時、体が何かに引っ張られる感覚に襲われーーー






ーーーーー気付けば、俺は水の中にいた。


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