1話 俺の現実を返してください。
2040年3月9日、東京は大規模なテロ「バーストエクリプス」により壊滅状態に追い込まれた。
人々はみな混乱に陥り、すべてを失った。
各国がこの事件について調べているが、未だにテロリストグループ、グループの主犯格など多くの事はまだ謎に包まれたままだった。
それから5年という年月が経ち、他国からの援助のおかげでようやく東京は復活し人々が暮らせる場所に戻った。
でもそれこそが「バーストエクリプス」の本当の始まりだった。
「――やっと終わったぁ~~、今日は確かメガポの発売日だ!」
俺の名前は神山流穂、16歳、東京青南高校に通う平凡な高校生だ。もちろん部活なんかに入らず、放課後は毎日本屋にいる。
東京にはつい最近、父親の都合で引っ越してきた。
「バーストエクリプス」の事についてはニュースや新聞などで知ってはいたが、その頃からアニメや漫画、小説などにハマっていた俺にとってあまり知る必要のない事だった、正直どうでもよかった。それがどれだけ愚かな事か――俺はまだ気づいていなかった。
運動や勉強は中の下と言ってもおかしくないし、人付き合いも苦手な方で、彼女なんて言うまでもなくいない。……ほしいけど
でも趣味ならある! 今ハマってるラノベ「メガポ」を読むことだ。この本だけは俺にとって今のところ一番ヤバくおもしろいし、最高の趣味だと思う。
今日は「メガポ」の発売日、俺は本屋へと急いだ。
いつも通りカバーをレジで付けてもらい、店を出た瞬間から読み始める。いつもやる事だ。
歩きながら読んでいるうちに交差点で立ち止まった。
誰かの声がした――
俺は自然と耳を傾けた。
あれヤバいんじゃないの、多分死ぬよあの子……
俺は横断歩道の方を見た。
5歳くらいの男の子がまだ信号が赤なのに飛び出してしまった、向こうからトラックが来ているのに気づいていない。何かを落としたのか、それを拾おうと必死だった。
……なんでだよ
俺は思わずつぶやいた、この状況じゃあの子は間違いなく轢かれるのにみんな見てるだけで助けようともしない。 中には携帯をだして轢かれる瞬間を取ろうとしている連中もいる。
それにトラックの運転手もなんでブレーキをかけないで走り続けているんだ!
……我慢できなかった こんなの間違っている!!
俺は思わずその子を助けようと横断歩道へ突っ走った、後先考えずただその子だけを見て走った。
でもその時、何か黒いものが俺の目の前を走り抜け、その子を抱えて空へと飛んだ。
人間とは思えないほどの速さで走って、跳力もあり得ないほど高い。
けど今のは確かに人だ。高すぎてよく見えないが男だった。長い黒髪に細い手足、背中に何か棒のようなものを背負っている。
今のって――
何が起こったかも分からずトラックが通り過ぎるのをただボォ~とみていた。
信号は青になりただ歩いていた、どこの方向に行ってるかもわからず。
「……お前みたいな人間がまだ存在していたとはな」
どこからか声が聞こえた。
ふと前を見るとさっきあの男の子を助けた男が立っていた。
長く綺麗な黒髪に細い手足、顔はとても男とは思えないほど美しかった。背中には1本の刀を背負っていた。
俺は思わず見とれてしまった。
「なにをジロジロ見てるんだ、何かついてるのか??」
ヤバい、きずかれた!
「あ……い、いえ別に何もついてませんよ、本当です。」
「そ、そうか。だったら人の顔をジロジロ見るな!」
「す、すいません!」
見た目によらず、いがいと恐いな~
そう思いながら俺は少し後ろに下がった。恐い人とはあまり話したくない……
「俺が恐いのか?? まぁお前にどう思われようが関係ないが、今から俺の命令には従ってもらう。さっきの横断歩道でのお前の行動を見た限り放っておくことは出来ないからな。」
「め、命令?? え、いや何いってるんですか? さっきのはたまたま助けようとしただけですけど……」
「そうだな、助けようとしただけだったな。でもお前のその気持ちがそれだけ貴重か分かるか?」
こ、この人は何を言ってるんだ? 俺はこの場を逃げ出したい気持ちになった。
「す、すみません 俺そろそろ帰らないといけないんで、メガポも読みたいし――」
俺は思い切って振り返り歩き出した。
「今の東京でお前の帰る場所はもうないぞ、神山流穂!」
「な、なぜ俺の名前を……」
「お前がどうしても俺に従わないのなら、仕方がない。しばらく眠っていろ」
そう言うと男は刀を抜いた、先端からは紫っぽい色の忌々しいオーラが出始めた。
……あ、あれ
きずいたら男の刀は俺の胸をもう貫いていた、痛みも何も感じないまま俺は意識を失った。
「――お前にはこれから、腐りきった人間が住むこの東京を変えてもらう。悪く思うな。」
どれぐらいの時間が経過しただろうか
――――あ、あれ俺生きてるのか
俺は目を覚まし、ゆっくりと体を起こした。
気づけば見知らぬ場所、見知らぬベットの上で寝ていた
「気づいたか、さっきは少し手荒な真似をして悪かった。」
俺の方に少しずつ歩いてきたのは、さっきの男だった。
「あ、あの! 俺の事さしてましたよね、その背中の刀で確かに。ど、どうして俺生きてるんですか… あ、あとここは一体どこなんですか??」
「あれは単に眠らせただけだ、お前に直接ダメージを加えてなどいない。聞きたいことは他にも腐るほどあるだろうな、まあ仕方ない、一つずつ説明するか。」
男は俺の横に座り刀を下へ置いた。あくまで自分は味方だと言いたいのだろう。
「バーストエクリプス、5年前に東京で起きたあの大規模なテロは知ってるか?」
「あ、えっと…はい、いちお。東京で大爆発が起きて建物などは崩壊して、でも奇跡的に多くの死者は出ずに済んだとかって話ですよね??」
「そうだな、間違ってはいない。一般的にはほとんどの連中がそう思っている、もちろんニュースや新聞でもそれぐらいしか書いていない。」
「どういう意味ですか?? まだ何かあるんですか?」
「政治家の中でもごくわずかの人間しか知らない… あのテロ事件の真相を」
男は拳を強く握りしめた。
「東京で起きたあの大爆発、あれは真相を隠すためのゴマカシにすぎない。2040年3月9日、あの日から人々の感情に異変が起きている……」
「でもそんな変わった感じの人、少なくとも俺の周りにはいないと思いますよ。」
「あの日、爆発と同時にある一つの笛の音が鳴り響いた、もちろん爆発から逃げる人々にとってそんな音など聞こえなのと同じぐらい気にもされていなかったが。でもその音は確かに鳴り響いた。多分その音を覚えてる人は何人かはいるはずだ、でも誰も思わない、そんな音がテロの真相だなんて――――」
「それで、その音でなにか起こったんですか?」
俺はまだ分からなかった、何が言いたいのかも、その音が人間にどう影響するかなんて事も予想できなかった。
「その笛の音は聞い者にもう1人の自分を作り出すための、いわゆる人間の脳を刺激する一種のマインドコントロールみたいなやり方だ、しかも最悪なことにその音はウイルスのように感染もする。聞いた者は、3~5年かけて自分自身の感情がわからなくなっていき狂い始める。しばらくすれば今までとは違う獣のような感情を持つもう1人の自分「エクリプス」へと変化していく。もしその音を聞いていない者がいたとしても聞いた人間と一言でも話したりすれば確実に感染する。聞いた人間の声から感染するということだ――――」
この人なんでこんな事知ってるんだろぅ
ていうか俺、ヤバいこと聞いちゃったなぁ……
「――――つ、つまり爆発と同時に鳴り響いた笛の音は人間の感情を支配して、もう一人の自分「エクリプス」へと変化させる。聞いたいなかった人がいたとしても聞いた人から感染するってことですか?」
「あ~そうだ、感染すれば同じように恐ろしい感情もつ「エクリプス」へと変わっていく。――――それが5年前に起きたテロの真相だ、東京にいた者はもうすでに感情に異変が起きてるかもしれない。」
「ってことは俺もすでに感染してるってことですよね!!!」
「いや不思議なことに俺やお前はどうやら感染はしていない、俺も理由はよく分からないが感染しない少し特別な力を持つ人間が数人存在するらしい、俺たちはその中の二人だ。」
「――――そ、そうなんだ~ でもなんか不公平な気がする、こんな事ってありなのかな?!」
安心した、これでまたラノベをいつも通り読めると思った
「だがこのまま黙って見ていても事態は悪くなるばかりだ、俺たちはあの忌々しいテロで変わり果てた人間を助け、この現象を止めないといけない。お前もそう思うだろ神山流穂」
「あ、あの~さっきから気になってたんですけど俺の名前どうして知ってるんですか??」
「さぁな、ただの感だ」
「はぁ、か、感ですか」
俺は少しショックだった、この人は超能力者じゃないかと少しでも思った俺がいたからだ。
「そういえば俺の名前を言ってなかったな、俺はシュウだ、黒金シュウ。去年東京に来た。ナイトの力を受け継ぐ剣士でもある」
「黒金シュウ――――シュウさんって呼びますね。 あと、どうして背中に刀とか背負ってるんですか? あとナイトって」
シュウは苦笑いをした。
「質問攻めか、まあ仕方ないな。俺たちがこの世の中を救うには「バーストエクリプス」を起こしたテロリストグループ「シーカーズ」の主犯格コードネーム「レオ」とゲームをしなければいけない、チェスという名の殺人ゲームを、俺たちはそのための駒に過ぎない。俺たちのほかにもう4人仲間がいる、つまりキング、クイーン、ビショップ、ルークだ。流穂、お前にはポーンとして務めを果たしてもらう」
あまりにもリアリティーがなくて理解できない
そもそもなんで、チェス?
シュウは俺の様子に気づきある1通のメールを見せてくれた。
それはシュたちの様子に気づきシーカーズが送ってきた、いわば脅迫状のようなものだ。
「我らシーカーズとチェスゲームをしろ。ルールは簡単、今から送る駒の画像を直接体にダウンロードする、それで力を得られる。基本的に6vs6の殺し合いゲームを行い、さきに相手のキングをチェックメイトしたら勝利、ゲーム終了となる。負けた方は勝った方のやり方に従うこと。ゲームを放棄した場合、日本全体にバーストエクリプスを起こす。 ――――検討を祈る」
どうやら脅しではなく本当にこのゲームをやるらしい、というよりもう始まっている。
シュウの話ではキング、クイーン、ビショップ、ルークの力を持つ他の4人はすでに今まさにゲームの最中らしい。
俺もこんな殺人ゲームをやらなくてはいけないのか……
最悪だった
「流穂、お前はこのポーンの力を今からインストールしろ。次からはお前も参戦だからな」
シュウはそういうと俺の胸にコードを入れた、コードの先端はおれの体に浸透する感じで入っていった、痛みは感じなかった。
俺はそのまま静かに目を閉じた。
10、16、20、25、30、38、40、50、52、58、60,70……
体に何かが入ってくる感じがした。
……100
とうとうインストールが終わった、起き上がってみたが変わったところは特になかった。
「見た目には何も変化は起きない、だが確実に何か凄まじい力が体内に入ったはずだ。」
シュウは少し不気味な目でそう言った。
「そんなこと言われても自信ないですよ俺、殺し合いなんてリアルティーなさすぎること出来ません!!」
「もう遅いぞ流穂、やるしかないんだ。お前一人がこのゲームを放棄してもバーストエクリプスは起こることを忘れるな!」
……そうだった、俺はもう戦う以外なにも道は残っていない。戦うしかない、もう俺は平凡な高校生じゃなくなってしまった。
俺はそう自分に言い聞かせながら、こんなアンリアルな殺人ゲームに巻き込まれていくのだった。
でも1つだけ言いたいことがる
――――俺の現実を返してください。