鳥おじさん(千)
「君は鳥の鳴き声を聞いて、それがどんな種類かわかるかい?」
鳥おじさんは口笛で鳥の鳴き声を出してから、そんなことを言った。
町から少し外れた小高い丘、南のほうには広い広い緑の森が広がっている。鳥おじさんは一人でその丘に住んでいる。
わたしはそこへ毎日遊びに行く。同じ年の友達もいないし、それにわたしは町の人たちより鳥おじさんのほうが好きだった。皆は、鳥おじさんは変なやつだって言うけど、わたしはそうは思わない。面白いし、やさしい人だって思う。
今は丘に座って、二人で森のほうを見ている。この丘からしか見れないこの風景は、毎日見てもぜんぜん飽きない。
森は毎日変わっていく。鳥おじさんがよくそう言っているけど、本当にその通りだと思う。
「君は何の鳥が鳴いているかわかるかい?」
同じことをもう一度、透き通ったきれいな声で歌った。おじさん、なんて呼んでいるけど、鳥おじさんはまだ二十七歳らしい。前にお母さんがそう言っていた。
わたしとは十五歳違いのおじさん。わたしは、あなたはおじさんじゃなくてお兄さんじゃないの? って聞いたけど、鳥おじさんがおじさんだって言うから、わたしもそう呼んでいる。
「わかんないよ。鳥おじさんはわかるの?」
わたしにはぜんぜんわからない。鳥の鳴き声どころか、それが深い森のどこから聞こえてきているのかもわからない。ただ、ピロピロと幾重もの美しい響きを聞いているだけで、オーケストラの細かいパートまでは聞き取れない。
「わかるよ。僕は鳥おじさんだからね」
西の空に浮かぶ太陽が背の高い鳥おじさんを照らしていてよく見えない。鳥おじさんはヒョウヒョウとまるで鳥と話しているように口笛を吹く。
「本当にぃ?」
いくらなんでもそれは信じられない。鳥おじさんはわたしをからかっているのだと思った。
「本当だよ。ボクは鳥おじさんだからね」
「そんなの理由になんないよ」
「うーん。それじゃあ証明してあげよう。あの一番高い音がね……」
「わたしがわかんないんだから、そんなのデマカセかもしれないよ」
鳥おじさんは困ったように笑う。鳥の声は相変わらず何重にもなってわたしの耳に届く。もう一回、鳴き声のハーモニーを聞き分けようとしてみたけど、一分もしないうちにあきらめてしまった。
「やっぱり無理だよ。鳥おじさんも本当は無理なんでしょ?」
「無理じゃないんだけどねぇ。どうやって信じてもらおうかな……」
鳥おじさんはあごに指を当てて考えている。わたしは鳥おじさんがどんなことを言うのか楽しみで、ワクワクしながら隣を見ていた。
太陽はそんなわたしに意地悪をしているのか、まぶしく光って鳥おじさんの顔を隠していた。
明日から、少しライトノベルを意識した書き方にしてみます。
あくまでも予定ですが^^




