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一定周期(2・1)

 蒸される気分とは、こういうものなのだろうか。


 ウッドチックな室内、体に巻いているタオルに汗が滴り落ちる。すぐさまにでもこのタオルをはがして、体中をふいてしまいたい。いや、これも既に汗を十分すっているから、そんなことをしても効果は薄いのかもしれない。


 鼻で息をしたくない。そうすると、私はその実物を目で認識したことは無いが、なんとなく存在を感じる粘膜が、一気に水分を取られて鼻血が出そうになる。かといって、口で息を続けても、のどが渇く。

 いったい皆はどうやって呼吸をしているのだろう。隣のお姉さんに質問してみようか。それがキッカケで仲良くなるかもしれない…… なんちゃって。



 蒸し暑いサウナ。文字にすればわずか七文字で表せるのが、現在私のいる場所。蒸し暑いサウナに一人で入っている。

 友達と、とか…… 家族で、とか…… ではない。

 一人ぼっちだ。

 ぼっちは外して、一人だ、と言おう。

 ……こほん。


 どうしてか、明確な理由を述べることが出来ないのが非常に残念だけれど、私は月に一回くらい、サウナに入りたいという衝動に駆られる。数少ない友人にはまったく同意してもらえないが、私にはほぼ定周期でそんな刺激が起こる。

 特にマゾな体質ではない私は、素直にその欲求にしたがって汗をかきにくるのだが、とここまで自分で言って気がついたけれど、サウナに入りたい欲求が発生するって、もしかしてマゾかしら?

 いじめられるのが好きとか、そんなことはこれっぽっちも無いのだけれど、もしかしたら隠れマゾなのかしら。


 ……。


 違う、と断言したい。

 いいえ、断言してほしい! あなたはマゾではないのよ、と。


 閑話休題。


 サウナというのは、なかなか日常の中には代用できるものがない。一番近いものといえば、三時間ほど熱唱したカラオケの個室か。もちろんクーラー無しの。

 とにかく、サウナというのは、サウナに来ない限り体験できない。少なくとも私にとっては。

 今、ほかにもサウナと似た効果を発揮できる場所がほかに無いか考えてみたけれど、やはり私の頭の中には候補は無い。こんなところにも、自分の限界を感じるところはある。


 限界なんて、そこらじゅうにある。例えば私は、あと五秒で始まるドラマの再放送を見ることは出来ない。押し忘れた録画ボタンを押すことも出来ない。

 壁はそこら中にある。ただ気づかないふりをするかしないかの問題。

 もしくは感じたものを考える力があるか無いか。


 あぁ、汗がたれる。

 私はどうしてサウナまで来て、欲求にしたがって金を払って苦しい思いをして、こんなことを考えているのだろう。もっとサウナのことを考えようよ、私。


 とりあえず、周りを観察。人間観察は、大学入学二日前に気がついた新しい趣味だ。

 あまり人を見なかった高校時代を経て、果たしてこの春休みに何があったのかは自分でもわからないが、今はたまに人間の仕草を観察したりする。


 まずは部屋全体を大まかに確認。頭の中にこの空間を作り出すところからスタート。

 人間を観察する前に、その場をインプットする。いままでそれすらも怠ってきた私には、間取りを考えるだけでも時間が掛かってしまうのだが、この作業はどうしても外せない。


 細事に走る前に大事をワンルック、それが大事。……本日二回目のなんちゃって。


 面積は十五畳くらいだろか。私の部屋が七畳半だから、たぶんここはその二倍くらいだと思う、というアバウトな寸法によれば。

 このサウナルームは、入り口のすぐ右が壁、時計や温度計、テレビが掛かっている。残念ながら、この私の見たかったドラマの再放送は流れない。左手には網のかけられた大きな物体。私たちを蒸し焼きにしようとしている装置だ。

 人が座れる場所はL字の形をしている。二つの線、というには不適切課も知れないが、それらの線による角の二等分線が、時々プシューと音を立てている装置に向いている配置。

 L字は三段になっていて、等間隔を少し崩した調子でタオルがしかれている。良識に基づいて数えれば、この部屋は定員十五人らしい。


 ふぅ、とここで小タオルで顔を一度拭く。体に巻いたタオルをはがさずとも、きちんと別の布を用意してきた。

 この装備で初心者か熟練者かの区別が出来る。今日はビギナー三人、プロフェッショナル四人という模様だ。


 くらり。


 おっと。肝心のメンバー紹介の前に私の体が限界に来てしまった。まだ一番楽しい人間観察が始まってもいないのに。

 体はそろそろ限界だと告げている。とはいっても、あと少しでミッションもコンプリートされるのだけれど……


 うーんと……。


 なんて、考えるふりをしているのは実は嘘っぱちで、私はもうドアに手をかけている。選択肢が浮かぶ前に、逃げを選択、と言っている間に涼しい屋内へ。

 風呂場が涼しいなんて、なかなかシュールな現象だと、いつも思う。それは私が主観的に生きているからかもしれないが。


 と、これじゃあまるで、私が自分を苦しめにきたことを報告しただけの日記ではないか。

 むぅ、何か考えねば…… くすっ。


 あれこれそれどれよりも、自分の体が一番大事だよ。ここまでいるいろほざいて、結局私が言いたかったことは、この真理なのだ!


 なんちゃって。本日三回目。

 ふふふっ。

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