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第二話 重い心と軽い物

「よーーし揃ったなじゃあ始めるぞ」と先生が言うと

「先生、チーム決めてません」とクラスの女子の学級委員である平川が言った。


「何をしてんの?」と先生はふざけながら言った。


「まあしゃーーない今とっとと決めろ。早く試合やるぞ」と言い残し先生は試合の準備をしに行った。


「おいおい、ここ四人で組もうぜ」


「平川さん強いからよかったら私たちのチームに……」とみんな各々チームを決め出したようだ。


だが僕は気づいていた。


海里と二人で組むなら、あと二人必要だ。

余りもの同士で組めばいいと。

僕は海里のとなりでガッツポーズした。


するとクラスの女子が「今日二人だから二人余るね」と僕たちの希望を壊すのと同時に僕の計算さえも壊してきた。



 その後、僕と海里は別々のチームになった。


運良く、僕のチームの男子は陽キャだけど、僕たちみたいなのにも優しい人たちだった。


一人のチームの子が近づいてきて


「マジ疲れた、次の試合秋がでてくれない?」と僕に問いかけた。

僕は「うん分かった」と答えコートに行った。



「秋!」と立川が僕に相手陣地でボールをパスしてきた。


僕は誰にもマークされておらず、敵は僕以外の味方を警戒しているように見えた。


それはそれで悲しい。

だったらやってやるよと思い勢いづいた。


僕はスリーポイントラインの外に立ち、呼吸を整えた後にシュートを放った。


僕がスリーポイントを決めようとしたのが意外だったのかはたまた僕のシュートが決まるわけないと思ったのか敵は動かなかった。ひたすら味方をマークし続けた。


だが立川だけがゴール下に向かって走った。この試合でパスをくれたのは立川だけだった。


多分、あれは決まらないから動いたとかそういうのではない気がした。でもそれは気がしただけだと自分に言い聞かせた。


ボールはきれいな弧を描いてゴールに入った。


もしかしたら思い違いではないのかもしれない。


このシュートが入らなかったら、


僕の考え方は違ったのかもしれない。


試合が終わったあと、体育館の隅で休んでいると、


平川が真っ直ぐこちらに歩いてきた。


「さっきのシュート」


はっきりした声だった。


「正直、驚いた。ああいうの、できない人だと思ってたから」

……それ、褒めてるのか?


「でもさ」


一瞬だけ視線を逸らしてから、またこっちを見る。


「かっこよかったよ」


それだけ言って、彼女はさっさとその場を離れた。


今まで彼女を学級委員としてしか見てこなかったせいか、

正面にいる彼女を見るとどこか魅力的に見えた。



その後、僕が放ったシュートは一本も決まらなかった。


一瞬でも期待した僕は、バカだったのかもしれない。



「あーー疲れた」僕は机に体を寝そべらせた。

すると海里が「それな」と僕の身体をベッド代わりにして上半身をのせてきた。


「でも明日、修了式だからもう帰宅だよね、さっき隣の席の子が言ってた」と僕が問いかけると


「そうだよ、今日ホームルームもないからもう帰宅してる人もいるよ」と答えた。


帰宅しようとしている生徒もいればこのあとどこに遊びに行くか話し合っている生徒もいた。


「てか僕、ホームルームなかったこと知らないんだけど先生言ってたっけ」と海里をどけて姿勢を戻し帰る用意をしながら言った。


「今日の朝言ってたよ、秋が遅刻してきたからね」と少しいじりながら言った。

「もういいよ」とふてくされた感じで答えた。


すると廊下から「おーい秋、海里、早く!」と大きな声で智也が手を振っていた。

蒼真もいるようだ。


「何で毎回あんなやつが智也や蒼真と一緒に帰ってるんだろう、まじでキモイ」と残っているクラスの葉山が呟いた。


その周りの女子達のリーダーっぽい佐山という人が智也と蒼真に「ねえ、今日遊ぼうよ」と笑顔で楽しそうに言った。


はあ、毎日の悪口には流石に疲れるな。

大抵の男子ならば快くその誘いを受けるだろう。


しかし智也は「わりいこのあと予定あんだわ」と両手を合わせて軽い感じで言った。

蒼真は「僕もいけないんだ」と優しく笑顔で言った。その後


「本人の前で悪口言う勇気はあるのに節度という教育は身に付いていない人と行くのはちょっとね」と笑いながら女子に氷の槍を放った。


少し足が軽くなったような感じがした。


「だる、もういいやみんな行こ」と佐山は不満そうに女子を引き連れて教室を後にした。


それもそのはず、この学校では智也や蒼真は陽キャの中心人物だからだ。


「いいのか、二人とも女子の誘いを断って」と僕が小さな声で聞くと

「俺ら、友達だろ」智也の声は力強かった。


蒼真は「友達の事を悪く言うようなやつは許せないしな。それが本当の友情ってやつじゃないのかよ」と腰に手を当てた。


最高の友情だなと僕は心の中で声をあげた。


僕たちのクラスの教室に残っている生徒は僕たちだけだった。


「いいよな、お前らは何せそんなこと言っても評価下がらないんだから、俺も恋をしてみたーーい」と海里は久々に理性を失っているようだった。


「はっはっはあ、羨ましいだろう」智也は教室に入って海里と無理矢理、肩を組んだ。


「もう行くよところでこのあとカラオケ行こうよ」と蒼真が先ほどの会話を流すように提案してきた。


「いいね、行くか」と智也は言い、腕を海里の肩から離した。

「オッケーじゃあ行こ」僕はリュックを背負い始めた。


春は訪れたばかりだと感じる。



その後のカラオケで僕は「蜜柑」のアニメの主題歌を歌い智也に邪魔をされたせいで五十一点という、どうやったらそんな点数出せるんだという点数を樹立した。


途中で朝、ぶつかった女の子が間違えて僕たちの部屋に入ってきた。


胸元にははずし忘れた名札があり『神埼』とだけ書かれている。


会話にはならず目線は一度だけあったが相手がそらしてきた。


そのあと少し嬉しく思っていた自分がキモい。



消費したお金は三千円、残金二十四円



帰り道、足取りは軽く、点数も軽く、財布も軽く感じた一日だったと僕は思った。



でも心だけは溢れ出しそうなくらい重かった。



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