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8話:合格通知

入学試験から一月ほどが経った。


フィルクス男爵邸のバルコニーで、俺は王都の方角に向かって立っていた。緊張で手が震え、持っていた封筒を強く握りしめる。


ポケットから取り出した煤けたコンパスを強く握りしめる。父から誕生日に贈られた、「己が信じる正しき道を示せ」という文字が刻まれたものだ。

羅針盤の針は、いつもと変わらず北を指している。

北、すなわち王都――ロゼッタがいる場所だ。


もし自分が落ちれば、ロゼッタの隣で騎士として仕える道は絶たれる。この重圧が、胸を締め付けてやまなかった。



勢いよく封印を剥がした瞬間、視界に「合格」の文字が飛び込んできた。


「やった……!」


思わず声が漏れる。安堵と歓喜が押し寄せ、全身の力が一度に抜けた。長かった重圧が解けた心地良さに、涙が出そうになる。


これで、俺はロゼッタのそばにいられる。


証書を改めて確認する。書面の最上段には、紛れもなく自分の名が書かれている。


【アルカディア学園 騎士クラス 合格 ライオネル殿】


俺は、ロゼッタがいる方角に向かって、力の限り叫んだ。


「ロゼッタ!俺も合格したよ!」


聞こえるはずもない。だが、「己が信じる正しき道」が拓けたこの喜びを、今、ロゼッタに伝えずにいられなかった。



男爵邸へ向かう足取りは軽やかだった。長い間会っていなかったロゼッタ。しばらくフィルクス領に戻ってきているとの報せを聞き、俺は男爵邸へと向かった。


貴族としての教育を受けている彼女。どんな姿になっているだろうか。想像するだけで胸が弾んだ。


彼女に一番に報告したい。この喜びを共有したい。


フィルクス男爵邸はいつもより豪華に見えた。正面玄関は美しく飾られ、中庭には花が咲き乱れている。かつて遊び場だった庭は今や格式高い貴族の邸宅そのものとなっていた。


使用人に案内され、広い客間へ通された。そこには美しい銀髪の少女がいた。細い指先でカップを持ち、優雅に紅茶を飲んでいる。その姿はまるで別人のように洗練されていた。


「アベル?」


彼女が顔を上げた瞬間、時間が止まった。水色の瞳。滑らかな肌。繊細な仕草。かつての少女の面影はあるものの、完全に違う存在になっていた。

貴族の気品を纏った聖女。その美しさは圧倒的だった。


「ロゼッタ……!」


思わず立ち止まる。彼女の前に跪きたい衝動さえ覚えた。


「どうしたの?そんなところで固まって」


微笑むその顔は確かにロゼッタだ。だがその声にも艶やかな響きがあった。


「いや……あまりにも綺麗になっていて……」


正直に答えると彼女は優雅に笑った。


「ありがとう。そんなことより大事な話があるんじゃない?」


その一言で我に返る。そうだ。報告することがあるんだ。封筒を取り出して掲げる。


「ロゼッタ!俺も合格した!」


喜びに満ちた声で言うと、彼女は微かに目を見開いた。だが次の瞬間には落ち着いた表情に戻っている。


「おめでとう。アベルならきっと合格すると思ってたわ」


そう言いながら彼女は立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってくる。香水の香りがふわりと漂った。


「これで約束通り一緒の学園に通えるわね」


彼女の手が俺の頬に触れる。温かい指先。その感触にドキリとする。

彼女は俺の反応を楽しむように微笑んだ。


「頑張ったんだね。ずっと応援していたよ」


その言葉に胸が熱くなる。この2年間。母を失い、孤独に耐え、ひたすら訓練に明け暮れた日々。全てはこの瞬間のためだったのだ。


「ありがとう……ロゼッタのおかげだ」

悲しくて泣ける


このくらいの難易度で伝わったでしょうか?

私のこの文章力で読者の鳥肌を奪えるのか心配です。


この辺から話が変わってきますね。

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