無能追放の錬金術師、街で大暴れ
街を揺らす科学の実験、元仲間の視線――
朝の街は活気に満ちていた。
商人の声、子どもたちの笑い声、冒険者の鎧の金属音。
木箱に積まれた果物の香り、石畳を踏む靴音……すべてが日常だった。
――だが、その平穏はすぐに崩れ去る。
「魔物だ！ オーガが市街に入ったぞ！」
遠くの門から二体のオーガが現れ、石畳を粉砕しながら進む。
屋台が吹き飛び、民衆は悲鳴をあげながら逃げ惑う。
兵士たちも必死に槍を構えるが、恐怖で手が震え、まともに攻撃できない。
俺――レオンは、人々の騒ぎを冷静に眺めていた。
「さて、街でも実験してみるか……」
腰の袋を開ける。小瓶に詰めた火薬、粉末、木の枝で仕込んだ即席爆弾。
前日の森での実験をさらに改良したものだ。
「まずは小さな刺激から」
導火線に火をつけ、オーガの進路に設置した瞬間――
――ドオォォンッ！！
轟音と閃光が広場を覆う。
オーガの巨体が宙を舞い、石畳に叩きつけられる。
兵士たちは目を見開き、民衆は歓声と悲鳴を上げる。
俺は次の段階を冷静に計算する。
「次は……水蒸気反応だ」
水の入った瓶に粉末を仕込み、火をつけて投げ込む。
爆発とともに水蒸気が吹き出し、オーガを弾き飛ばす。
瓦屋根が崩れ、木箱が散乱する。
民衆の目が、まるで魔法を見たかのように輝いた。
「すごい……あのお兄ちゃん、街を守った！」
「錬金術師が英雄になるなんて……！」
俺は煙の中から歩き出す。
胸の奥が熱くなる。
追放された無能――そう言われた俺が、世界を動かす力を持ったのだ。
だが、歓声の裏で冷たい視線があった。
屋根の上に立つ影――元仲間の剣士。
彼は剣を握りしめ、険しい顔で俺を見つめる。
「……レオンが、こんな力を……」
その目には、驚きと疑念、そしてわずかな恐怖が混ざっていた。
その視線は、やがて王都への報告につながるだろう。
無能と呼ばれた錬金術師の逆転劇は、もう誰にも止められない。
街の奥では、他の小型魔物も現れた。
俺は軽く笑いながら、次々と爆弾を仕掛ける。
閃光、爆風、衝撃波――街全体が俺の「実験場」と化す。
群衆の歓声はさらに大きくなり、子どもたちは手を叩き、兵士は目を見張る。
「科学の力……まさかこんなことが可能だとは……」
その時、俺の耳に微かな声が届いた。
「追放された無能……いや、もはや英雄か」
笑いを抑え、俺は次の計画を頭の中で組み立てる。
「街での評価は完璧。次は王都……いや、もっと大きな舞台で、科学を証明してやる」
胸の奥のワクワク感が、さらに膨らむ。
この逆転劇はまだ序章に過ぎない。
世界は、俺の“科学チート”で、これからどんどん変わっていくのだ――。
ここまで読んでくださってありがとうございます！
街での大暴れ、楽しんでもらえましたか？
オーガや小型魔物を吹き飛ばすレオンさんの科学チートは、まだまだ序の口です。
今回は群衆の熱狂や元仲間の視線を描きつつ、王都への伏線も少し置いてみました。
追放された「無能」から一転、街の人々に英雄として迎えられるレオン。
次回は、王都の陰謀や勇者パーティとの本格的な再会など、さらに大きな動きが始まります。
もし「続きが気になる！」と思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると、作者が飛び上がるほど喜びます
次回もぜひお楽しみに！
