Uターン異世界人、思い出せないけれど地に足をつけて座舞の道を歩んで生きていくことを誓う。
彼女は言葉を止めて、自身の白衣の左袖を、右手でぎゅっと握る。
「ごめんなさい、まだ、……まだ思い出せない……。でも、……俺は、前にいたこの世界で、あなたの彼氏だった。本当に、あなたの彼氏だった。そうですよね?」
返事はない。構わずタケルは言葉を繋ぐ。
「そうであったらいいのにって、さっきからずっと思ってました。先輩が俺が持ってるのと同じメダルを持ってたらって。思い出せなくっても、でも、先輩と一緒に山に行って、ケーブルカーに乗って、記念にってメダルを買って。たくさん、たくさん野草を見て、先輩が疲れたら、俺がおんぶをしてあげて……」
言葉にしてみると、もう、そうとしか思われないほど据わりがいい。しっくりと幸せが余白を埋めていくのを感じた。
この人のことを思い出すことが出来ない。きっとたくさん重ねたはずの素敵な思い出を、一欠片も思い出すことが出来ない。全て遠い遠い世界に置いて来てしまったのだ、この、座舞の街の物語を。
「……タケルくんは……、折原タケルくんは」
まだ少し涙に濡れた声で、凛音が語り始めた。
折原タケル、……折原タケル。
自分で自分のフルネームを二回口に乗せてみて、そういえば、向こうに着いてしばらくは、そう自己紹介していたな、と思い出す。ただ、あちらの人々がすぐに「タケル」と呼んでくれるようになったので、もうすっかり「タケル」であった。
「私が、座舞高校の二年に上がったとき、入ってきた一年生で……。ご両親を早くに亡くしていて、養育施設から通学していたわ。痩せていて、いつもお腹を空かせていた……」
「え……、もっとこう、いいエピソードから語ってくれるんじゃないんですか、なんですか『お腹空かせてた』って」
「だって事実なんだからしょうがないでしょ!」
当時、生物部の二年生であった大崎凛音、野草の研究に熱意あふれる女子生徒。四月となれば、座舞の道端や、切谷駅近くに見られたような畑の脇などに、食用できる野草が繁茂する。いまもそうであるが、当時はより情熱的に「あれも食べたい」「これも食べたい」と、道端バイキング(あるいはサラダバー)とも呼ぶべき光景に興奮を隠し切ることが出来なかった。
もちろん、春に道端に野草が多く繁るのは座舞に限ったことではなく日本中あちこちで見られる光景ではある。座舞に生まれ育った凛音は、谷戸山自然公園の存在もあって幼いころより自然に親しみ、また田舎に住む祖父母夫婦が山菜採りの名人であったことも手伝い、平均よりほんのちょっとだけ、食用できる野草への興味関心が高かったのである、平均よりちょびっとだけ。
だもので、下校の際にも道端に屈んでちょっとした野草を積んでいたのだそうである。
その様子が、当時の折原タケルの目には、ただごとではないように映ったのだった。おもむろに道端でしゃがみ込んで動かなくなった女子生徒、何が、とは言い難いが喫緊の健康上の課題に直面しているのではないかと思って、
「あの……、あの、大丈夫ですか、家まで我慢できないんですか」
と声を掛けたのが、二人の出会いだった。
「何ですかそれ、何ですかそれ、ろくでもなさすぎる。もうちょっといい話だと思ったのに」
「うるっさいわねぇ! 道端でそんなんするわけないじゃない!」
幸い、誤解はすぐ解けた。
凛音が語る、食用できる野草の数々、これもそう、あれもそう、そっちのももちろんそう、と言われて、……日々に空腹に悩んでいる高校一年生は、すぐに前のめりになった。
これぐらいの年代の男子は欲が先鋭化しがち、とりわけ食欲は、機会を与えられればとんでもない形で発揮されるものである。
「俺、知りたいです、野草のこと。たくさん食べたいです」
翌日、タケルは生物部に入部届を提出した。食欲を動機に生物学の道を志す者が、当時の座舞高校には二人もいてしまったのだ。
「そのうちに、タケルくんは野球部との兼部を始めたわ。まあ、うちの野球部そこそこ強いから、兼部でレギュラー獲るなんてのは無理だったでしょうし、球拾いやキャッチボールを楽しんでるぐらいだったみたいだけど」
ああ、だからか、タケルは合点が行った。「白虎飯店」のテレビでやっていたあのスポーツに、なぜだか妙に心惹かれてしまったのは、自分が多少はそれをやったことがあったからだ。
「『白虎飯店』は運動系の部活の男子たちがよく行ってたわね。みんな食べ盛りで大盛を注文する子ばっかりだそうよ。でもその中で、君は遠慮がちに半ラーメンとか半チャーハンとか」
「お金がなかったからですか……、可哀想な俺」
「ところがそうでもないのよ。お店のご主人夫婦が気を利かせて『間違ってチャーハン一人ぶん多く作っちゃったから』なんておっしゃって……」
店主夫婦はきっと、久しぶりに「あの子」が来たと思っただろう。
見違えるほど立派になって、自分のお金でちゃんとしたチャーハンを頼んだのを見て、懐かしさと嬉しさが込み上げて、つい半ラーメンをおまけに付けてあげたくなってしまったのではないか。
「いえ、そうではないと思う。別にタケルくん『見違えるほど立派に』なんてなってないから」
「あっ、反撃された」
タケルが大いに有り難がりながらチャーハン半ラーメンを食べている隣にて、「白虎飯店」名物の一つである炸醤麺を食べていたのが教師となった大崎凛音であった。彼女が女子学生だったころには、「興味はあったけど、やっぱりその、体重のこととか考えて……」部活終わりに外食や買い食いをすることは堪えていたのだそうだ。
「でも、今日は食べてましたし、アイスも食べてましたし、コーヒーと一緒にケーキも」
「人生経験積んで、『まあこれぐらいならいいか』みたいなのが掴めて来たのよ」
実際、さっきおんぶした限りでは神経を尖らせる必要は全くなさそうな凛音だった。
「びっくりしたわ。だって、死んだと思ってた人が、隣に座ってチャーハン食べてたなんて。しかも半ラーメンをサービスされてたなんて」
彼女がタケルに気付いたのは、帰り際、彼が店主夫婦にお礼の言葉を発する声を聴いたときだ。彼女の耳の中の余白に、ぴったりとフィットする声。いつも「よくないな」と思いながらもスープは全部飲む主義なのに、だいぶ残して出てきたのだから、アイスの一本ぐらいご馳走してもらわなければ割りに合わないと思った。
「半ラーメンめちゃめちゃこだわりますね」
「だって、あそこ麺もごはんものもどっちもおいしいんだもん。毎回どっちにしようか悩んで悩んで決めるの。さすがに麺に半チャーハンはよくないかなって思うし。でもサービスで付けてもらえるのなら頂くこともやぶさかではない」
「そんなこと考えてる人には半ラーメン付かないと思いますよ。あと、俺死んでないですよ失礼な」
「まあ、殺しても死にそうにない感じのところあるわね……」
「褒め言葉だと解釈しておきます」
「解釈は人の自由だものね」
生物部の先輩後輩として、二人は仲良く時間を重ねていった。
それを「デート」と呼ぶのかどうか、凛音はタケルが決めればいいと思っていたし、タケルも定義することは避けていたが、ともかく二人で休みのたびに座舞市の、そして段々と郊外へ足を伸ばして、野草観察ならびに採取に勤しんだ。
初めての遠出がその年の晩秋、中ノ山。
ケーブルカーに乗って、記念コインを買った。
「タケルくんは、鉄道が大好きだったから。登山道の植物の観察だって楽しいって言ったのに、ケーブルカーに乗るって聴かなかったのよ」
覚えていないので反論のしようがないのだが、タケル自身は何となく、違うんだろうなとかつての自分を弁護してあげたい気持ちになった。
今日、ちょっとしたアップダウンでもひーひー言っていた凛音が、山登りなんてできるはずがない。だからきっと、自分が気を遣ったんだ、なんて思うのだ。
反面、鉄道好きというのはおそらく本当だ。いまも、遠くから保田急線の走る音が聴こえて、無意識のうちにそちらへ顔を向けてしまった。
「『白虎飯店』で声聴いて、……でも、私って気付いてないみたいだったから。中ノ山のメダル、見たら思い出してくれるかなって思ったら、異世界に行ってたとか、記憶がないとか言われて」
「はあ、すいません。なんでこの人こんなに絡んでくるんだろって思ってました」
「言葉選びが雑なところもほんとに昔のままなんだよね。……言っとくけど、私じゃなかったら誰も信じないからね? 『異世界』とか言ったら、どうかしてるって思われるからね?」
それは素直に感謝したいところだ。というのも、タケルはあちらで自分が異世界からやってきた人間であることを理解してもらうためにずいぶんな苦労をしなければならなかったから。
「……話が逸れちゃったわね。そう、君の施設の人たち、警察も、みんな、君が行方不明になって、死んでしまったと思ったの」
そう思われたとして、どうして自分が「死んだ」ことになったのか。
大崎凛音から一年遅れて、折原タケルも大学生になった。二人は大学でも再び「先輩後輩」の関係になり、アルバイトをしつつ野草の研究に専心していた。
そのさなか……。
「さっき話したでしょ、アルバイト先に……」
「あー、なんか俺が喧嘩したっていう……」
一度はタケルに退けられたその人物は、恨みを募らせていたようなのだ。
後日、男に襲撃されたタケルは格闘の末に行方不明になった。
「喧嘩して行方不明ってどういうことですか」
「知らないわよ。でも、犯人はそう言ったの」
タケルを襲撃した男は、その場を去って間もなく、タケルが死んでしまったのではないかという懸念を胸中に膨らませ始めた。にわかに、自分がとんでもないことをしてしまったのではないかと恐ろしくなって現場に戻ったが、タケルは忽然と姿を消していた。
タケルが自身の足で歩いて、どこかへ助けを求めたのであれば、まず確実に足がつく。観念した男は警察に自首し、罪を認めた。
しかしながら、肝心の被害者・タケルの足跡は、その後の捜査でも明らかになることはなかった。
当のタケルは、異世界で、まあまあ健康に生きていたのであるが。
そして今日、うっかり仲間だと思っていた連中に裏切られ、あの世界から追放され、でも幸か不幸かこっちに戻ってきたのであるが。
「ぜんぶ、初めて聴く感じです。正直、凛音先輩の作り話だったとして、俺は一個もそれに気付けないですよね」
凛音は涙の乾いた顔で笑った。
「トカゲ苦手なのも変わってなくって、笑っちゃった」
「酷い人もいたもんですよね」
「そう言うけどね、こんな」と言って彼女は左右の手を並べて見せた。「でかいクモ、学校に持ってきて『うちのペットのアシナガさんです』とか言ってたんだよ?」
「それは全然悪くないです。アシナガグモはとても知的で崇高な生きものですから」
一個も覚えていない、欠片も思い出すことが出来ない。
けれども、それがさほど悲しいとも思わないし、凛音には申し訳ないけれど、あまり「申し訳ないなぁ」という気持ちにもならないのだ。
ただ一個、今日、気付いたことがあるので。
「俺は凛音先輩のことが好きなんでしょうね」
「はっ……?」
言ってみて、突拍子のなさに、タケル自身が笑ってしまった。凛音は凛音で、完全に虚を衝かれた顔で固まっている。
「だって、めちゃめちゃ楽しいんですもん今。凛音先輩と喋ってて、……まああんまり中身のない、くだらないことばっかりですけど、でも、すっごい楽しいし、永遠にこうやって、あなたと喋っていけたらいいのにって思うぐらい」
魅力的な踊り子のフィーナに思いを寄せられている自覚があっても、それに応じることは出来なかった。元いた世界にこれだけ魅力的な人を残していたなら、……仮令帰り道が判らなかったとしても、決して異世界に恋人なんて作るわけにはいかなかった。
そして、ルミィやセレーナの魅力を理解することは出来ていても、レオンとガレスに一欠片も嫉妬せず彼らを祝福できたのは、自分の愛する人こそが世界で、……どの世界でも一番にキュートだということを知っていたからだろう。
凛音はしばらく言葉からはぐれていた。この人の意識が異世界に飛んじゃったんじゃないか、なんて失礼な心配をすることにタケルが飽き始めたころ、
「はー……」
と彼女が溜め息を吐いて、東屋の外に立つ、アンズの木へと視線を向けた。
「梅雨のね、……君が一年のときの、六月の、朝からずーっと雨が降ってる日。二人でここに来たの」
「ものずきですね」
「君が来ようって言ったんだよ。……まあ、私も断らなかったんだけどさ」
タケルの靴、凛音の靴、今日は晴れていたけれど、それでも少し汚れている。雨天の日なんて、どんなにか大変だったろう。
しかし、きっと楽しかったのだ。凛音の表情を見れば、明らかだった。
「二人で、泥だらけになりながら歩き回って、……最後にここに来たの。雨宿りして、……止まないね、ずっと降ってるねって言って。でも、二人でいい匂いの雨だって言ってた」
「いいにおいの……?」
「そこの、アンズの木にね、実が生ってて。甘い香りが雨に混じって、この東屋の中にいっぱいに満ちてた。そのときに、……私が言ったのかな、タケルくんが言ったのかもしれない、同時だったのかもしれない……、覚えてないけど……」
正解は凛音しか知らない。その凛音が、「覚えてない」と言うのなら、タケルも知りようがない。
「こうやって過ごす時間が、ずっとずっと続いたらいいのに、って」
タケルが言ったのでもいい、凛音が言ったのだとしても。同じ気持ちになっているところへ、相応しい言葉がどちらの口から零れようと。
正解がわからなくても構わないことだ。二人が同じ願いを抱いたことを疑う理由もない。
だとすれば、記憶の有無なんて、さほど意味も持たない。
その場で交わした言葉、そのときに感じた胸の高鳴りや指の震え、肌のじんと熱くなる感じを思い出せなくとも、こんなにありありと想像出来てしまう、共有出来てしまう今が、雨の夕方に二人でアンズの実の香りを嗅いだ日と同じだけ幸せであることを、疑う理由もない。
「同じ気持ちですか、凛音先輩は。……そのときと、今と」
タケルの問いに、「んー」と、肯定しているのだか否定しているのだか判らない声で凛音は返す。
「俺は、先輩の知ってる俺じゃないかもしれないです。前回先輩と一緒にいたころのこと、結局何も覚えてないですし、あっちでいろんな経験をして、変わっちゃった部分も多いかもしれないですし」
「いーや、私の知ってる君だよ」
野草を見るときの、あの悪戯っぽい煌めきを宿した眼差し、凛音がまっすぐに向けていた。
「変わらな過ぎてびっくりするぐらい、君だよ。……ああ、だから、おかしくって。懐かしいって気持ちが全然湧いてこないの。ずっと、……ずっと君と一緒にいるのが当たり前みたいな気持ち。君がいなくなったあの日と今日がぴったり繋がって、……ずっと一緒にいたみたい」
タケルも、「懐かしい」とは思わない。記憶がないのだから、仕方のないことではある。
「思い出を取り戻すことは出来ないですけど、この街で、新しい思い出を作っていくことは出来ると思うんです。その……、どうやって生きていったらいいのか、まだ全然わかんないですけど、でも……」
「何なら、二人で異世界でも行こうか?」
「それでもいいですけど、でも、先輩はこの街が好きでしょ」
「うん、好き。ちょうど良くって好き」
だったら、もうどこかへ行く必要もない。
「俺も、この街で頑張って生きていくので、どうか、力を貸してください。でもって、先輩もよかったらずっと一緒にいてください」
「そんなついでみたいな言いかた」
「どこにも行かないで先輩の近くで生きて行きますっていう、決意表明です」
からりと晴れた凛音の笑みに、夕陽が当たった。
「一応、重たいものとして受け止めておこうか」
その美しさが胸に刺さって、苦しさを覚えた次には、雨の日の彼女を見てみたいという思いが湧いた。寒い日の彼女を、暑い日の彼女を。この街のあちこちで、同じ時間を過ごして、重ねて。
「じゃ、そろそろ帰るわよ」
立ち上がった凛音が、白衣の裾を颯爽と翻す。
「帰るって……」
どこへ?
「さっき言ったでしょ、私のアパートの隣の部屋。……まず掃除しなきゃいけないし、家具も何もないから……、手始めに、ホームセンター。座舞って、ホームセンターも結構多いのよ」
ほら、と凛音が白い指を伸ばす。ほんの微かな躊躇いもなく、彼女の指に指を絡めて歩き出したその瞬間、タケルは自分の生きる街を決めた。
自分が「ただいま」を言う場所が、「おかえり」と言ってくれる人のいる街である幸せを、素直に「嬉しい」と言うことは、このUターン異世界人にはなかなか難しいことではあるけれど。
長く伸びた影が二つ並んで、じゃれ合いながら下って行く。その様子はかつての「先輩と後輩」の二人と少しも変わらず、坂の多い街に似合いの景色なのだった。
○
それから少し経ったあとの、異世界……。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
勇者レオンは顔面蒼白、全身からは脂汗を垂らして、旅籠の便所の床に横臥していた。
ガレスとルミィは先ほど、医療所に搬送された。加護の法力を帯びているセレーネだけは軽傷で済んでいるものの、顔色はすぐれない。
「クソッ……、なんで、なんで俺たちがこんな目に遭わなきゃなんないんだ……」
怒りに震えるレオンであるが、激しい痛みを訴える腹に力を入れようものなら、たちまち大惨事を引き起こしかねない。ギュルルルゥ、とリザードの唸るような音が腹の奥でまた鳴った。慌ててパンツを下ろし、便座に腰掛ける。苦悶の表情を浮かべ、あらゆる神に祈りつつ、勇者と腹痛の戦いはまだ始まったばかりだ。
立ち寄った湖畔の村、のどかな野原に、タケルが採取して食べていた野草、……確かノビルとかいうのが群生していた。レオンも仲間たちも、他の野草はなんだか貧乏くさくて腹満たし以外の目的で食べる気はしなかったが、あれに限っては美味であった印象が強くて、四人、童心に返って採取し、タケルがしていたようにトマトと一緒にオリーブ油で和えて食した。
しかし、それから半刻も経たぬうちに、四人の身体に異変が起きた。激しい腹痛と吐き気、そして頭痛……。何が起きているのか全く判然としないながらも、状況から察するに先ほど食べたノビルが原因であることは疑いない。
忌々しいことであるが、パーティーにタケルがいれば避けられた悲劇だった。
タケルのことを軽んじていたレオンたちには知るよしもなかったことであるが、彼が異世界にて凛音と話していた通り、ノビルはスイセンとよく似ている。科学的に言えば、スイセンにはアルカロイド成分が含まれており、いままさにレオンたちが襲われているような症状を起こし、重篤な場合は死に至ることもある。
気軽に見える食用野草の採取も、生兵法は大怪我のもとならぬ中毒のもととなりうるのである。
「クソが、そもそもあんなやつ拾わなけりゃ、道端の草を食うなんて思い付くことだってなかったのに……、……あっ、いたたたた……、神よ、救いたまえ……!」
激しい腹痛の波に翻弄されつつ、呪詛を口にしたり神に救いを求めたり、忙しい勇者レオンであった。