⑨
「みなさま、ごきげんよう。“異世界の姫”チャンネルへようこそ。わたくし、今日はペットのリリアンちゃんとダンジョンに来ておりますの」
『1コメ』
『かわいいリリアンちゃん』
『リリアンちゃん推しがもういる』
『あの男許さない』
『まだ言ってる怖い』
「リリアンちゃんがいるから、百人力ですわ! では、五十階層を探索していきますわ!」
『まてまて、いつの間にそこまで進んだ!?』
『『姫様、メイドちゃん、説明!!』』
「まぁ、スパチャありがとう存じますわ」
「姫様はお時間がおありですので、たまに探索して撮り高のある階層まで進んでいらっしゃいました」
『撮り高』
『姫様が撮り高』
「ということで、今回はペットのドラゴンとダンジョンのドラゴン、どちらが強いか!? ですわ!」
『リリアンちゃんの寿命きた』
『天寿をまっとうさせてやってくれ』
『かわいそう、リリアンちゃん』
わたくしが手乗りサイズのリリアンちゃんを撫でると、コメントが荒れましたわ。リリアンちゃんは強いから問題ないのに、皆様……。
「では、早速ドラゴンを倒していきましょう」
「姫様、あちらの世界ではドラゴンと戦ったことがないはずですよね? なんでこんなに手慣れていらっしゃるのですか?」
「あ、」
『あ』
『姿の見えないメイドちゃんからの圧が怖い』
『メイドちゃんに隠れてダンジョンに乗り出す姫様の幻覚が見える』
『姫様が詰められてる』
『姫様命系のメイドなのに、怒るときは怒るよな』
「で、では、気を取り直しますわ! ドラゴン対決始まりますわ〜!」
「姫様!??? 逃しませんよ!」
『逃げた』
『姫様の逃げ足が早すぎる』
『メイドちゃんも早い』
『この揺れ酔いそう』
『ドローンこんな早く飛ばせるの?』
『近くでメイドちゃんの息が入ってるから、メイドちゃんが走ってるんじゃない?』
『世界新記録超えるぞこれ』
『SASUKE見てる気分』
『これは何度かドラゴン倒してる身体能力』
「では、ドラゴンと出会ったところで……いけ! リリアンちゃん!」
『ボールから出てきたらポケモン』
『リリアンちゃんみたいなのいそう』
『ちょっとリザードンっぽくない?』
『手乗りサイズだけどなw』
ぐおおおおおおお
『ドラゴンのブレス、こわ』
『アトラクションみたい』
『USJにあるよね』
『ハリポタじゃん』
「リリアンちゃん! 好きに倒していいですわよ!」
『飼い主の無茶振り』
『小刻みに震えてかわいそうリリアンちゃん』
『小刻みに震えて?』
『でかくなってね?』
本来の大きさを取り戻したリリアンちゃん。わたくしが王家の一員として授けられたドラゴンですもの。強いに決まっているでしょう? 聖なるドラゴンのリリアンちゃんは、大きささえも自由自在に変えられるのですわ!
『異世界からヤバいもん持ち込んでる』
『どうやって撮影してるんだろうな』
『メイドちゃんの加工スキルすごい』
「姫様! 規約に違反してしまいます!」
「そうでしたわ! リリアンちゃん! できる限りそのままの形が残るように倒してちょうだい!」
『無茶振りがひどいww』
『リリアンちゃんでも流石に無理だろ』
ぐおおおおお!
かわいいリリアンちゃんが、声を上げて予備動作に入ります。
「リリアンちゃんの聖なる息吹ですわ!」
わたくしがそう言うと、リリアンちゃんが輝く光を勢いよく吐きました。
『名前すごい』
『光量すごい』
『眩しすぎるから、姫様こういう時は注意書き必須!!』
リリアンちゃんの聖なる息吹がおさまると、あたり一面を照らしていた輝きは収まり、動かなくなったドラゴンがいました。
『おわった?』
『リリアンちゃん強すぎ』
『一撃必殺じゃん』
『命中率低そう』
「リリアンちゃんの聖なる息吹は、外れたことがありませんわ!」
『反則技』
『ポケモンなら大会出禁』
『強すぎてウケる』
「ということで、ペットのドラゴンとダンジョンのドラゴンでは、ペットのドラゴンが強かったですわ! では、皆様、チャンネル登録、グッドボタンどうぞお願いいたしますわ! ごきげんよう!」